ダンジョン攻略1
ドランさんの店から帰りリビングでくつろぐクリスを見つけた。
「はい! クリス質問」
俺は手を挙げる。
「はいどうぞ!」
「ダンジョン内部に照明とかある?」
「上層は知らないけど、下層に行くほど松明かライトの魔法が必要ね。でもライトは私が使えるし、どうせ、あなたが何とかするでしょ?」
「普通、ダンジョンに入ったら宿泊とかどうなる?」
「基本ダンジョンに入るとテントもあるけど大体野宿と相場は決まっているの。野宿のほうが視界が確保されるから」
「食べるものは?」
「食べるものは携帯食、現場で調理することもあるけどどうしても材料が重くなるでしょ? 現地調達って手もあるけど……」
「トイレは?」
「外ね」
俺にはそっちのストレスのほうが大きいよな。野グソなんて産まれてから何回したことがあるか……。冒険者はそれに慣れなければいけないようだ。まあ、ピクニックってわけにはいかないけどそれに近い状況にはしたい。
まず俺が考えたこと、それは「ダンジョンで俺の扉が使えるか?」ってこと。これができるのとできないのとでは大きな差がある。食事、睡眠に俺の家が使えるってことになるからだ。
「明日はまず俺の扉が使えるか確認しようか、ダンジョン攻略のやり方が決まると思う」
「ええそうね。まずは第一歩ダンジョンに入ってみましょう」
次の日の朝、全員フル装備でゼファードのダンジョン入り口に居た。
クリスは精霊装備。フィナはフェザードラゴンセットと血桜。アイナは聖女のローブ、法皇の杖、慈愛サークレット。マールはブレストアーマに黒のスカート、白の手袋にブーツ。リードラは……素?で。
美女と美少女が計五人と冴えないメタボ青年一人の六人パーティー。アンバランスな編成のパーティーが目立たないはずがない。
「あれ見ろよ、何であんなメンバーの中にデブが居るんだ?」
「知らないか? 炎の風を討伐したパーティー」
「ああ、でも人数増えてないか?」
「でも間違いない黒服を着たデブ。あれがあのパーティーのリーダーだ」
俺も結構有名になったもんだ。
「マサヨシのこと話してる」
アイナが突っついてくる。
「あれ以外何もしてないんだがね」
「それだけインパクトがあったんじゃない? 二百人以上をたった四人で討伐したんだから」
クリスが言う。
「私も正直勝てるとは思っていませんでした」
信用されてなかったらしい。
「前の世界の知識だよ」
「主は色々知っている」
「そうです、もっと教えてください」
残りのリードラやマールからも言われるが
「でもな、俺はダンジョン初心者だ、お前らから教わるほうが多いと思うぞ? さあ、中に入ろう! フォローよろしく」
そう言ってダンジョンの受付に向かい受付嬢に通行手形を係員に見せる。
「このダンジョンは初めてですか?」
「ああ、そうだ」
「それでは簡単に説明を。通行証をこの水晶にかざすと時間の計測が開始されます。二か月以内に戻って水晶を再度かざすと時間がゼロになる仕組みです」
「二か月を超えてしまうと?」
「死亡通知が出ます。ご了承ください」
「それだけ?」
「はいそれだけです。二か月に一度は戻ってくださいねって感じですね」
ニコッって感じで受付嬢は言った。
皆でダンジョンの中に入る。入ってすぐ多くのパーティーがおりごった返していた。やはり皆に視線が集まるので俺たちはさっさと離れる。
既に一階の精巧なマップが俺の視界にあり、モンスターの位置まで表示されていた。ここに罠の位置と宝箱の位置、階段を表示させてと……。こんなもんかな?ダンジョン攻略用のマップって。
雰囲気は3DダンジョンRPG、昔はフレームが動いていただけだが、壁はレンガ状の物で組まれており、天井は五メートル程度だろうか。
「ここは少し薄暗い程度で特に問題ないんですね」
「マール? ここはこんな感じで明るいけども、下層に行くほど暗くなる。前に行ったダンジョンでは二十階を過ぎれば手元も見えなくなるぐらいまで暗くなったわ」
「ジメジメ」
「カビ臭いです」
アイナとフィナが言うと、
「地下だからってことかしらね。ただ砂漠の乾燥した階層や森林地帯、氷結地帯のような特徴のある階層もあるらしいわよ?」
クリスが答えた。
「我は元に戻れないようじゃな」
「だなあ、天井につっかえそうだ。肉の壁みたいになってしまうからダメだな。さて、本来の目的をやってみるか」
近くにある扉を開け部屋に入ると例の扉を出した。リビングをイメージしてノブを捻る。すると見覚えのあるリビングが目の前に広がっていた。
「使えたわね」
「クリス、使えたよ。これで行き来ができるな」
「持ち物の量が減るのは助かります。それに常に魔物の恐怖におびえる必要もありません。睡眠と食事がしっかり取れるのも良いことだと思います」
マールが言った。
俺的にはトイレが使えるのが大きい。怯えながらトイレなんて嫌だ。
「テストは終わったけど魔物を狩る? 先に進む?」
「あなたはどうしたい?」
「そうだな、魔物の殲滅でいく?」
「じゃあそうしましょう」
俺たちはレーダーに表示された魔物へ向かった。
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