報告と準備
夕食が終わりリビングで皆に妻と会ったことを説明した。
「まあ、そういう事でダンジョンを攻略しなきゃいけなくなりました。ダンジョンに行きたい人!」
サッ
全員の手が挙がる。
「マサヨシ様、信号機たちもこの家のことは確実にこなすことができます。それにコカトリスたちも強くなり警備の面でも問題ありません。私はマサヨシ様の奥様に会ってみたい」
マールが言う。
「私も会いたいわね、どんな人なんだろう」
お前に似て適当だとは言えない。
「アイナ、どんな人だった?」
「リードラに似て綺麗な人。面白い人。でもマサヨシには見えない」
フィナは俺を見た。悲しい目をした。
「俺には霊を見る能力は無いみたいだな。でも、声が聞けただけマシだろう。あっ、俺は妻の呪いでこの体型から変わらないみたい。まあ、今更だがね」
「今更じゃな」
「そう、今更」
「お腹が気持ちいい」
「今更です」
「体形に惚れたのではありませんから」
マールが最後に締める。
「いいとこ持っていかれた」
クリスが言う。
コクリ×3
マールに視線が集まる。
「いいじゃないですか。本当のことなんですから」
そして堂々と返した。
俺に視線が集まる。
「照れてる」
アイナがニヤリと笑う。
「そんなこと言われたら俺の方が照れる。褒められるのは苦手だ」
周りに居た皆に笑われた。
「さて、マールとリードラの装備をどうするかだな」
「我はこのままでもいいぞ? 人化を解けばドラゴンに戻れるからのう。下手な鎧よりは強いとは思うが……」
「私は、マサヨシ様に頂いた短刀がありますが、防具はありませんね」
「マールはそのメイドの格好が似合うと思うんだが、さすがに服だけってのはなぁ……。メイド服風のドレスアーマーでもあればいいんだが」
「炎の風のお宝装備には無いのですか?」
「もう在庫切れ。纏うような服は無いんだ」
「そうなのですか」
残念そうなマール。
「ドランさんトコでも行ってみるかい?」
「はい!」
明日にはダンジョンに入りたいから早いほうがいい。
「ちょっと出かけてくる」
そう言うとマールと俺の扉を使いドランさんの店に向かった。
もう日が暮れる時間。
「ドランさん、まだ開いてる?」
俺はドランさんの店の中に入った。
「おう、どうした? 何かあったか?」
奥からドランさんが出てくる。
「ダンジョンを攻略するからこの子の防具が欲しいんだ。軽くて防御力がある鎧か服ってある?」
「古いが女性用のブレストアーマーがあったと思う。どこぞの貴族の娘用ってドレスアーマーを作らされたが、結局途中でキャンセルされてな。胸の部分しかできていないんだ。ただミスリルを使っているから軽くて防御力は高いぞ?」
「軽くて防御力が高いのなら助かる」
「あと、マジックワームまでは行かないがそれに近い防御力がある黒のスカートがあるから合わせてみればいい」
「わかった、それをマールに合わせてもらえないかな?」
「メル、ちょっとあのブレストアーマーとスカートの合わせをしてもらえないか? あと、手袋とブーツ」
「マールと言ったっけ? ちょっと私とおいで」
マールはメルさんと奥へと向かう。
「で、どこのダンジョンだ?」
ニヤニヤしながらドランさんが聞いてくる。
「え?」
「どこのダンジョンを攻めるんだって聞いてるんだ」
「ああ、ゼファードのダンジョン」
俺は答える。
「え? あれ誰も踏破してないだろう?」
「まあ、そうなんだけど、事情があってね」
「そうか、お前もいろいろと大変みたいだな」
「それなりに色々と面倒なことが多いんだ」
合わせを終えてマールが戻ってきた。
ブレストアーマーに黒のスカート、白の手袋に黒のブーツ。
「ブレストアーマーと戦闘用のスカートはピッタリでした」
「んー、でももう一声だな」
「そうですね、もう少しメイドらしさを」
まあ、戦闘にメイドらしさが必要なのかと言えば、要らないほうが正しい。でも、マールにはそれが必要な気がする。
「ドランさんこのドレスアーマーの設計はできてたの?」
「まあ、一応はな」
「ダンジョン絡みが終わったら、このドレスアーマー仕上げてもらえない?」
「えっいいのか?」
「ドランさんが仕上げるなら悪い物じゃないだろうし、いい装備は生還率を上げるでしょ? 俺よりこいつらに早く死なれるのは嫌なんでね」
「ああ、わかった。戻ってきたら仕上げてやる。俺も中途半端でやめるのは嫌なんでな」
「了解、終わったら持ってくるよ。で、これの代金は?」
「ブレストアーマが十二万リル、スカートが一万リル、手袋とブーツが各五千、占めて十四万リルだ」
俺は金貨十四枚をドランさんに渡す。
「じゃあ、ドランさんダンジョン行ってくる」
「マサヨシも嬢ちゃんも死ぬなよ! 終わったら仕事忘れるなよ」
「へいへい」
そう言って俺はドランさんの店を出た。
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