ゼファードへ
翌日起きるとリードラが寝ていた。
んーデカいよね……新幹線だよね……ちょっと触ってみよっかな? でもなぁ……。
等と躊躇していると、
「主よ、触ってよいのだぞ?」
リードラは胸を強調してくるが気付かれると面白くない。
「今はいいや。早く服を着ろ。今日はゼファードに向かうぞ」
そう言ってベッドを出ようとすると、リードラに抱き付かれた。
「我は主と一緒で良いのだな?」
「不安か?」
「うむ」
リードラが頷く。
「俺の奴隷になった人に言ってるんだが……」
「何じゃそれは?」
「『俺の奴隷にならないでください』ってね」
「一緒に居てリードラらしくしていればいいよ」
「我儘言っても良いのか?」
「いいよ? 通るかどうかは知らないけどね」
「甘えても良いのか?」
「いいよ? でも皆に文句言われると思う。隠れて甘えるなら大丈夫かな?」
「意見しても良いのか?」
「そうだなぁ、俺は欠点だらけだから言われるほうが助かるぞ?」
俺はリードラの方を向くと
「要は、自由にしてればいいよ。一緒に笑ったり泣いたり怒ったり悲しんだりしていこう」
そう言って、頭を撫でる。
「さあ、朝飯を食べてゼファードへ行こう! リードラ頼むぞ」
「ああ、任せるのじゃ!」
リードラは笑顔で言った。
朝食が終わるとじゃんけんが始まる。結構な回数のじゃんけんの末、
「ん」
と言ってガッツポーズをするアイナ。
他の三人も行きたいのだろうが、勝負ということで……。
「じゃあ行ってくる」
俺がそう言うと、
「「「いってらっしゃい」」」
居残り組の声が聞こえる。
送り出されるっていいよね。
俺は例の扉を使いアイナとリードラと共にフォランカの街の外へ向かった。
フォランカの街から離れ人目に付かないところでリードラに人化を解いてもらう。
アイナも初めて見るリードラの姿に
「綺麗」
と一言。
リードラもまんざらではないのだろう少し口角が上がっていた。
「リードラ頼む」
俺がそう言うとリードラは伏せの体勢になる。俺はリードラの首をまたぐように座りアイナはそんな俺の前に座った。俺が後ろ抱きにする感じだな。
「さあ、行こうか」
その声を聞いたリードラは翼をはばたかせると空へ舞い上がった。
昨日に比べてトラブルもなく順調にゼファードへ飛行を続けていた。
「今日は何にもないな」
俺がそう言うと、
「何かあった?」
アイナが聞いてきた。
「ん?昨日は盗賊に襲われていたお偉いさんを助けた。後は帰って話した盗賊の討伐」
「今日は無い?」
「無いほうがいいだろ?」
コクリ
「主よ、そうは言ってもワイバーンが近づいてきたぞ?」
リードラに言われマップの表示を広くする。魔物を示す黄色い点が一つ近寄っていた。
「ワイバーン?」
「ドラゴンもどきじゃな。ただ今の状況じゃ戦うにはちと分が悪いがの」
「ああ、俺たちが乗っているから、無理な動きができないわけね……」
「そういうことじゃ」
「狙撃したら落ちると思う?」
「わからんが、ドラゴンもどきとは言えドラゴンの名を持っておるからの、それなりに強いぞ?」
俺はスコープをイメージ、十字がワイバーンの眉間になるようにライフルを構える格好をした。そして、いつもより魔力を込めてワイバーンを狙撃する。
ありゃ? ワイバーンの頭部上半分が消し飛んだぞ?
「主よ、やりすぎじゃ」
「いや、強いって言ったじゃん。強いなら強いなりの対応が必要だろ?」
「そういえば、主は規格外じゃったのう」
「?」
アイナは何が起こったのかわからないようだ。
「アイナ、さっきワイバーンを狙撃して狩ったんだ」
「マサヨシ、ドランがワイバーンの素材は高いと言っていた」
「アイナ、ナイスだ! リードラ、ワイバーンを回収するぞ」
俺の声を聞いたリードラは高度を下げ墜落したと思われる周辺を飛ぶ。
「墜落して分からなくなる?」
「大丈夫じゃ、ワイバーンは意外と軽いからの、木にでも引っかかっておるじゃろう」
しばらく飛んでいるとワイバーンが木に引っかかっていた。
「リードラ正解! そこで引っかかってる」
「じゃろう?」
リードラはワイバーンの傍でホバリングをする。その間に俺は収納カバンに五メートルは有ろうかというワイバーンを入れた。
「さて、寄り道は終わりだ。ゼファードへ行こう」
俺がそう言うとリードラは再び高度を上げる、そしてゼファードへ向かった。
ゼファードの近くで森の中に降り、リードラには人化してもらい歩いて門へ向かう。さすがダンジョンがある街、入街手続きの冒険者の列が長く続いている。そういう所に俺が並ぶと……ちらほらと「デブ」の声が聞こえる。俺の周りにアイナのような美少女やリードラのような美女が居るということは羨望に値するのかもしれない。デブをメタボだと訂正する気にもならない。
しばらく待っていると、冒険者風の男がリードラの胸にちょっかいをだした。即リードラから軽いボディーブローを貰い盛大に嘔吐する。鎧の上からでも関係ないようだ。まあ、自業自得だな。そんなリードラに周りの男たちは恐れをなしたのかと思いきや、ごっつい体の男がやってきてリードラにちょっかいを出してきた。リードラも手加減しなかったのか強めのボディーブローを当て、軽く浮き上がったごっつい体の男は泡を吹いて倒れた。すると、
「おうおう姉さん! うちの者に手を出しやがって! どうしてくれる?」
更にごっつい冒険者がやってきた。
「手を出してきたのはそっちだと思うのじゃか?」
「リードラの言うことはもっともだ」
「もっとも」
俺とアイナが頷いた。
しかし、因縁をつけてきた相手も引かない。まあ、あれだけの体があればなぁ、力で何とかなると思うか……前の世界の俺なら多分「ごめんなさい」って言ってる気がする。
「俺たちに逆らって、ただで済むと思うなよ?」
「で、どうなるのじゃ?」
リードラが煽ると俺たちの周りを十人の男が囲む。ごっつい冒険者はニヤリと笑った。
「俺を含めこいつらは全員C以上のクラスの冒険者だ、これだけの数を相手できるかな?」
舐められてイラっとしたのか
「どうにでもなる」
そう言うとアイナが威圧を発動する。
「ぐっ」
ごっつい冒険者とその取り巻きは動けないようだ。
俺も面倒なので、
「次は無いよ」
そう言って、ごっつい冒険者に俺の威圧をピンポイントで当てた。するとごっつい冒険者は足が震えて動けなくなる。俺たちは全員動けないってことで放って前に進んだ。なぜかアイナが前に進むと人が割れる。ああ、怒っていたせいで威圧を放ったままだったからか……。まあ、そのお陰で意外と早く入街手続きを終えゼファードの街に入ることができたのだった。
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