リードラ
夕食を取り、軽く飲んで風呂に入った。
最近は信号機たちも増えたので、成人奴隷たちは自重して俺と一緒に風呂に入ることはない。アイナもサラと入るようになっていた。
この家の風呂は広い。俺の体でも大の字になって十分の広さがあるので、よく風呂の縁に頭を置いて大の字になって湯船に浮く。
「ふう、気持ちいい」
「主よ、何をやっておるのじゃ?」
おっと、リードラ登場。一糸まとわぬ姿で俺の方へ近寄ってくる。
「浮いてるんだよ。結構これが気持ちいいんだ」
そしてリードラは俺の頭の方から近付いてきた。足元から胸を見るようになる。おっと、大きすぎて顔が見えない。
「我は綺麗か?」
リードラは風呂の縁に全てが見えるアングルでしゃがみ込み、潤んだ目で俺を見る。
「ああ、綺麗だ」
「我は主の子が欲しい」
リードラは風呂に飛び込み俺に抱き付く。
「んー今はダメ」
「なぜじゃ?」
「知ってるだろ? 俺がお前の母様を引き摺っているのを……」
「なぜ、母様を?」
「俺の妻だったからじゃないかな?」
「妻?」
「俺が別の世界から来たってのは、母様から聞いているだろ?」
コクリ
リードラが頷く。
「その世界で俺はお前の母様と夫婦……つまり番だったんだ。夫婦って一度なるとなかなか離れられなくてな。居たら居たでうるさい時もあるんだが、居なくなったら居なくなったで結構寂しいんだ。居ないのがわかってるのに引き摺ってるから皆に中途半端。リードラにもな……」
俺はリードラの頭を撫でた。
「くすぐったいのじゃ」
リードラが笑う。
「お前の母様の亡骸を見ることでもう居ないって再認識して、皆やリードラに向き合いたいって思うわけだ」
「ゼファードに行って?」
「ああ、ゼファードに行ってだな。だから、それまでは何もしないと思う。皆にもリードラにも……」
「残念じゃ、我より強い男に抱かれるのを楽しみにしておったのに」
「悪いな」
「だったら、甘えさせるのじゃ。我をきつく抱いてほしいのじゃ」
俺は、リードラを力強く抱く。
「んっ」
リードラの体に力が入る。俺の手が胸に当たり触るつもりのない所を触ってしまったようだ。
「人間の体は不便なのじゃ、敏感なところが多すぎるでの……。ドラゴンなら逆鱗と尻尾の先程度じゃのにな。まあ、主に触ってもらえるのじゃから気にはならんが……」
俺たちは体を洗い風呂を出た。
「あれ? リードラ、着替えは?」
「忘れた、どうせ主の部屋で寝るのじゃ、この格好でも良かろう?」
意地悪な笑いだ。
「いやいや下着ぐらいは着てくれよ、でないと……」
「でないと……何じゃ?」
「俺が皆に怒られる」
俺の答えにがっくりしたようだ。
「何じゃ、我慢できなくなるのかと思ったぞ? 皆には弱いのじゃな」
「ああ弱い。リードラにも弱いぞ? 代わりに髪を乾かしてやるからそれで我慢しろ」
「わかった、今日はそれで手を打とう」
そう言うと、リードラは脱いだ服の下から新しい下着を出し身に着けた。
「持ってたのね」
「いたずら心も必要じゃろ?」
リードラは笑っていた。
俺は温風を出しリードラの髪を梳く。俺の手が角に当たる度「んっ」とか「あっ」とか声が出る。
「お前、角って弱いの?」
コクリ
体を強張らせながら頷く。
「よし、もう髪が乾いたから終わりにしよう」
そう言ってリードラから離れようとしたが、リードラが手を離さない。
「もうちょっと……のう?」
俺を見上げながら潤んだ目で懇願してきたが、
「ダーメ!」
俺はニヤリと笑い、リードラを抱え上げて俺の部屋に連れていった。
ボフンって感じで俺のベッドの上にリードラを置き布団をかける。
「さて寝るぞ?」
そう言って俺はリードラの布団に入った。リードラの顔は目の前だ。
「もうちょっと……のう?」
リードラは俺にしがみ付いて言う。
「言っただろ? ダメだって」
俺はリードラの背中をトントンと軽く叩いた。心臓の鼓動くらいの速さ。するとリードラの瞼が重くなってきたようだ。
「父様が居るなら、主のような感じなのじゃろうか? 安心できる。今日は父様に抱かれて寝ると思うかのう」
リードラはそう言ってしばらくすると目を瞑り寝息を立て始める。
「おやすみ」
俺はリードラに布団をかけた。
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