寄り道(盗賊狩り)
クリスが見つけた依頼を確認すると、これまた焦げ付きのようで紙も茶色く変色していた。
「お姉さん、コレどういう感じ?」
受付嬢に変色した依頼を見せると、
「この辺を根城にしている盗賊が居まして、数は五十人ぐらいでしょうか。その盗賊団の討伐です」
「結構焦げ付いているみたいだけど」
「この町はゼファードとの中継地点となって強い冒険者は素通りになります。『手柄はゼファードで』という人が多く、なかなかこの町で依頼を受けてくれる冒険者が居ないのです。居たとしてもあまりランクが高くありません」
「じゃあ、コレで……」
「えっ、受けていただけるので?」
「ああ、さっさと終わらせてくる」
俺は依頼証にサインをして、受付嬢に渡した。
「根城の位置はわかる?」
「あまり詳細な物ではありませんが……」
そう言って地図を渡してくる。俺が見ると、マップ上に根城が表示された。
「どうするの? ゼファードは?」
「『たまたま』だろ?」
「まあ、あなたらしいわね」
仕方ない……という顔をしてクリスが動き出した。
「さあ、盗賊退治じゃ」
その後にリードラも続く。
俺はリードラに続きギルドを出た。
森の中を俺、クリス、リードラで移動していた。
ふと思う。
意外と盗賊って儲けてるんだよなぁ。まあ宝物扱いにして使ってなかったりもするが、武器や防具も良い物持ってる。盗賊は楽して稼げる。堕落の第一歩。で、その盗賊を狩る俺も楽して稼いでる。んー弱肉強食かな。
くだらないことを考えていると、光点が集まる場所に着いた。15個ぐらい?
おっと、館? 結構大きいね。元貴族の別荘ってとこ? でも道なかったぞ?
俺たちは、木の陰に隠れる。
「主よ、なぜ隠れる?」
「ん? 別に見つかってもいいんだけど、それじゃ少数で襲撃する雰囲気が出ないだろ? あっ、でもお前らだったら、無双ができそうだな」
「雰囲気の問題なのね」
「そうだ、クリス、雰囲気だ。それじゃ、盗賊の殲滅を行います」
「「はい」」
「とりあえず生かしておくようにしましょう。間違っても殴ってお腹に穴をあけたり、頭が消し飛んだりすることのないように」
「クリスは、いつも通り、切りつけてくれ。魔法も許可する」
「前みたい『酸素』抜かないの?」
「クリス、家って意外と隙間あるから中の酸素抜いても死なない奴が出てきそうだ。クリスとリードラが居たら俺の出番ないだろうし。クリスとリードラの戦いを見てみたいってのもあるかな。あとは、まあ、気分だな」
「主が私の戦いを見たいと……これは頑張らねば」
「手は抜いてね」
「作戦は特に無し、ただ殺さないこと。家は壊さないでね、あとで漁るから」
「「はい」」
「じゃ、はじめよう」
俺らは、堂々と盗賊のアジトへ向かう。
「おい、お前らここに何しに来た!」
門の上から、弓を持った男が声をかけてきた。
「あんたらを討伐に来たんだ」
ニヤリ
おっと笑ったね。
「ひゅっ」っという風切り音がすると、弓矢が飛んでくる。
俺は飛んできた弓矢を掴んで投げ返した。
本当は二指〇空把ってやれたらカッコいいんだけど、北〇神拳を知らないんだよね。
「ゴッ」という音とともに弓が肩を貫通した。
「野郎、攻撃してきやがった」
焦った?
「門が開かないわよ?」
クリスは両開きの鉄でできた門を指さす。
「そりゃクリス、俺たちを入れたくないからだろ? 開くと思ってたのか?」
「開かないとは思ってたけど」
「主よ、我が門を破ってもいいか?」
「上手く閂を折る感じでお願いします。真ん中あたりを殴ったらいけるんじゃない? バンって開くかも」
「わかった」
ノーモーションで、リードラが門を殴る。
どっかーん!
土煙が上がる。
「リードラ、門が無いぞ?」
「主よ、あそこにある」
おっと、入口の扉の上に鉄の門があった。飛んでいって重なっちゃったのね。
門があったところを通り結構広い庭の中に入る。
「もういいや。やっちゃって」
俺はライフルをイメージして、遠距離から敵を狙撃する。クリスは舞うように攻撃する〇ルログみたい。それでいて足の腱を切って戦闘不能にする。リードラは……えっ両手だけ人化解いてるの? うわぁ、人が飛ぶ飛ぶ。んー何だっけ? あぁ、シュ〇ーラッシュのラル〇みたいだ。
クリスは次々と切る・切る・切る。リードラは次々と殴る・殴る・殴る。足を切られて動けない奴と、物理的に殴られて気絶している奴、リードラ、微妙に手を抜いていたのね。
俺たちは盗賊たちを縛り上げ転がす。
「リードラはここで盗賊たちの監視。ドラゴンに戻ってもいいよ? 威圧感あるから。服は破けるから脱いでね。あと、盗賊たちにリードラの裸を見られたくないから陰で着替えて」
「わかったのじゃ」
ちょっと照れてるリードラ。
リードラが建物の陰に行って服を脱ぐ。
建物の陰から光が見えると尻尾が伸びてきた。
ズーンズーンって感じで地面を震わせながらリードラが戻ってくる。おぉ口元から炎。息するたびにちょろっと火が見える。皆焦ってるね。
「じゃ、よろしく」
コクリ
長い首でリードラは頷く。
「クリスは俺と館の中に入るぞ!」
「了解!」
二人で館の中に向かった。
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