フォランカにて
フォランカへ近づき道沿いの森に降りる。このまま近づくとドラゴン襲来なんて言われて勘違いされる恐れがあるのでリードラには人化してもらった。素っ裸のリードラに戻り、「んしょ、んしょ」ってな具合で服を着るリードラ。やっぱ変……。大きさ調整の魔法でもかければいいのかもしれないが、シャツとズボンを着たドラゴンってのもなぁ……。まあ、俺が眼福状態になるということで度々着替えてもらうことにしよう。
リードラの着替えが終わると歩いてフォランカの街の入口へ行った。入街手続きの列はそれなりの長さがあるが、仕方ないので列に俺は並ぶ。
「クリス、手続きが終わったら、飯にでもするか? あと、リードラも冒険者登録しておこう。証明書になるしね」
「そうね、丁度昼だし何か食べてから行ける所まで行けばいいんじゃない? リードラに乗ったら何もなければ今日中にゼファードに着くだろうし。着かなくても行ける所まで行けばいいと思う」
「主よ冒険者登録とは?」
「リードラの強さを確認して登録するんだ。そうすればリードラは街に入りやすい。まあ、俺と一緒になるってことだ」
面倒くさいので端折ってしまった。
「主と一緒になれる? だったら急いで行くのじゃ。服も脱いだほうがいいか?」
上を脱ごうとするリードラ。
「いや違うから、俺と同じ冒険者になれるってことだから」
「リードラ、ちょっと先走っちゃったわね」
「何だそういうことか、残念じゃ」
そんなことを話しいている間に入街手続きの順番が来る。俺とクリスはギルド証でリードラは仮証明書で入街することになった。意外と驚いたのはリードラが字を書けることだった。そのことを言うと、
「主よ我は千歳超えじゃぞ? 字ぐらいは書ける」
とリードラは笑っていた。
門を入り飯を食う場所を探すのだが伝手が無い。ドロアーテならアイナビに任せておけばまず間違いないが、ここではそうはいかない。
「んー、リードラは鼻がいいんだっけ?」
「フィナと一緒くらいじゃなかろうか」
「お前の鼻で美味いと思う所に行ってもらえないか?」
「我はあまり料理に詳しくはないぞ? それでいいのか?」
「ん? 責任は俺が取るよ。クリスもそれでいい?」
「まあ、いいんじゃない?」
リードラが大きく鼻で息を吸う。匂いを感じ歩き出した。俺たちも後に付いていく。
気にしておかなければならないのは、リードラは焼いたものでなくても食べる。まあ、元来ドラゴンって爬虫類に近いみたいだから、千切って飲み込むのが普通らしい。
しばらくスーハースーハーと鼻で息をしながらリードラが歩いていくと、ピタリと止まり通りの右を見た。
「主よ、ここからは肉が焼ける良い匂いがする」
その店はシュラスコ料理みたいな感じで大きな肉を金串に刺し、塩とスパイスで味付けして焼いていた。ソコソコ賑わっている。
「リードラ、美味そうな店だな」
「そうじゃろう?」
「面白そうな店ね、匂いもいいわ」
クリスも期待していた。
店に入ると、
「いらっしゃいませ!」
大きな声が響く。
「空いている席にどうぞ」
と言われ、入口近くのテーブルに座った。
ウェイトレスがやってくると、
「おすすめって何? がっつり系がいいんだけど」
「でしたら、グランドキャトルの後ろ脚の丸焼きかなぁ。ちょっとお高い銀貨五枚。量が多いから多分食べきれないと思うけど」
まあ、余れば俺の収納カバンに入れればいいわけだし……
「じゃあそれ1つ」
クリスを見ると声を出さずに
「エール、エール」
と言っている。
「あとエール三つ」
ガッツポーズをするクリス。
「適当につまめるものを二、三。任せるから持ってきて」
「えーと、グランドキャトルの後ろ脚の丸焼きと摘み二、三。あとエール三つですね」
「ああ、エールと摘みは早い方が助かる。うちには呑兵衛なエルフが居るんでね」
皮肉交じりに言うと、クリスが目をそらした。
丸焼きというのは時間がかかるようだが、話に聞くと最後の焼きを入れれば食べられる状態にしてあるらしい。俺たちが冷えたエールと摘みで二十分ほど飲んでいる間に長さ六十センチメートルほどの後ろ脚がテーブルの上にドンと乗せられた。運んでくるのは二人掛かりってどんなだ? 滅多に出るものではないのだろう周囲からの目も凄い。
「おお、デカいね」
「いい匂いがするわぁ。いくらでも食べられそう」
「主よ、これを全部食べてもいいのじゃな?」
「ああいいぞ」
それぞれに、ナイフが渡され自分の好きな大きさに切って食べる。
ん? リードラの食べる速度が半端ない。お前はフードファイターか! まあ、俺らも全部食べられるわけじゃないし、俺とクリスが拳大の塊を食べている間に、リードラは太もも部分を制覇し、ふくらはぎに到達していた。牛の骨を折り適度な大きさにして食べる。
バキ! ボリ! メキ!
骨が砕かれる音が響く。見ている人が引く!引く!引く!
煮込んだ後の豚骨並みに綺麗になった牛の骨、リードラはすべてを食い尽くした。
「あー食べた! もうちょっと食べられるがこのぐらいが丁度いいぞ!」
腹八分目ってわけね。
「まあ、俺も腹はいっぱいになってるし、クリスはどう?」
「私も美味しかったわよ?」
「じゃあ出るか」
そう言うと、俺はウェイトレスを呼び金を払い、引いている客と店員を背に店を出た。
予定通り冒険者ギルドへ向かう。場所は入街手続きの際に聞いておいたのでマップに表示されており、それに従ってギルドへ向かった。
おっと、ここも両開きのウェスターンな扉。建物はドロアーテよりちょっと小さいかな?
昼過ぎにもかかわらず、暇そうな冒険者のパーティーが数組たむろっていた。これはもしかして……。
「おっとぉエルフだぜぇ、別嬪さんじゃないか」
ゲヘヘって笑い方、初回のドロアーテ以来か……最近知名度上がって避ける人が多くなったんだよなぁ。
「おう、そんなデブな奴じゃなくて、俺たちとパーティー組まない?」
「そこの女も大きいが胸もでけぇな。挟まれてぇ!」
久々の美女いじりだねぇ。
皮鎧を着た、パーティーのリーダーらしき男がリードラの前に来て
「そこのデブ……」
と言った瞬間リードラがリーダーの顔にビンタを飛ばした。勢いで浮き上がり錐もみ状態でパーティーが座る机の上に落ちる、そして、リーダーらしき男は泡を吹き気を失っていた。
「フンッ」
リードラが皮鎧パーティーを睨みつけると、連中は伸びたリーダーを連れ足早にギルドの外に出ていくのだった。
俺たちは受付に行く。
「いらっしゃいませ、どのような御用で?」
「ああ、このリードラの冒険者ギルド登録とカードの作成をお願いしたいんだが」
俺とリードラは受付けの椅子に座る。クリスはその後ろに立った。
「では、これに名前の記入を」
「我の名か?」
「ああ、リードラって書いてくれるか?」
「わかったのじゃ」
字を書いて受付嬢に渡す。
「はい、それでは、この水晶に手をかざしてください」
流れは一緒だな……多分。
リードラが手をかざすと水晶球が光り始める。ピシッピシッ……軽快な音立て水晶球にひびが入る音がした。そして光が収まるとひびで濁った水晶球が残った。
「あっあの、私は初めて見ました。噂には聞いていたんですが……。最近だとドロアーテで二人の冒険者が水晶にひびを入れたと聞いています」
結構有名なのね。
一連の説明を聞き、俺たちは受付から離れた。
「リードラ、ステータス見せてもらえないか?」
「いいのじゃ」
リードラはステータスオープンと唱え、俺にステータスを見せてくれた。ちょうど胸元あたりに表示されるので、俺はリードラの胸をガン見している感じになる。
リードラ 女性 年齢:1074歳
HP:742186
MP:748304
STR:SSS
INT:SSS
AGI:SS
VIT:SSS
職業:龍人
所有者:マサヨシ
冒険者ランク:F
おお、軒並みSSSかよ。リードラがトップだな。敵になる奴いるの? まあ、俺が引っ張ったのもあるだろうが。
「凄いものを見せてもらった」
「えっ、何がすごいの? 乳?」
何で乳! 信用ねぇなぁ。
「ステータス見せてもらったの!」
「えっリードラ、見せて見せて!」
クリスがリードラのステータスを見る。そして引く。
「さすがドラゴン基準……それを上回るマサヨシは……バケモノ」
出ましたバケモノ。
「さて、ここでやることも終わった、そろそろ移動するか?」
そう言った時、
「マサヨシ? これさっきの?」
クリスが依頼掲示板にある盗賊の討伐依頼を見つけた。
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