フォランカへ
次の日朝食を食べると、居残り組に見送られてクリスと共にパルティーモへ行った。そこからは、リードラにはドラゴンに戻ってもらう。
服が破れるからということで人気がない森の中で裸になるリードラ、ちゃんと服を畳んで持ってくる。全裸で歩いてくるリードラと、歩いてくる間に揺れる乳……なんかシュール。リードラの、俺に対する羞恥心がないのも非現実的なのかもしれない。
「バカ、前ぐらい隠しなさい!」
クリスが言うが、
「我は主に見られる方が嬉しいぞ?」
リードラは気にしない。
俺は眼福だが、クリスの視線が痛いので、さっさと収納カバンにリードラの服を入れ
「そろそろドラゴンに戻ってくれないか?」
そう頼んだ。
「主よ堪能できたかな?」
「おう、よく見えたぞ」
俺がそう言うと、リードラは満足そうにしてホーリードラゴンの白い体に戻った。ペンダントは大丈夫みたいだな。
「凄い綺麗」
クリスは、初めて見るホーリードラゴンの大きさと美しさに飲まれる。
「リードラ、伏せてくれないか」
俺がそう言うと伏せの体勢になる。俺はリードラの肩に腰を掛け首を挟むようにした、そして、クリスをバイクの二人乗りのように抱きつかせる。
「クリス行くぞ?」
頷くクリス、
「リードラ、じゃあ行こうか」
俺がそう言うと、リードラは翼を羽ばたかせ空へ舞い上がった。
まず俺たちはフォランカへ向かう。真っ青な空を翼の先から飛行機雲を引きながら飛ぶリードラ。こんなふうに感じたのはいつ以来だろう。周りの風景を置いていく感じ……。そういやバイクに乗っていた頃以来か……。
「主よ気持ちいいのじゃ! 主を乗せ空を飛ぶ……」
後ろを振り向きながら口角を上げるリードラ。このスピードでは風切り音で声が聞こえないのかと思ったがちゃんと聞こえる。あとで聞くと念話ということだった。俺に隷属したことで回路?が繋がったらしい。
「頼むぞリードラお前の体に俺たちは固定されていないんだ、下手に曲芸なんかされたら俺たちぶっ飛ぶぞ?」
「大丈夫じゃ、ちゃんと考えておる」
クリスは速度に慣れないのか目を瞑ってしがみ付くのがやっとらしい。悲鳴を上げないだけマシか。そんなクリスの胸が俺の背に当たるのは役得ということで……。
しばらく飛んでいると、俺のレーダに光点が現れる。赤い光点と白い光点。数が多い赤い光点は白い光点を襲っているようだった。
「リードラ、上からでいいからあれに近づいてくれ」
俺はまだ小さくしか見えない塊を指差す。
「わかったのじゃ」
そう言うとリードラは近づき、その真上で高度を取ったままホバリングを始めた。
望遠鏡代わりにスコープをイメージする。
豪華に飾られた黒い馬車、見たことのない紋章が見える。家紋ってやつか? 騎士らしき十数名の者がそれを囲む。騎士の中にひと際綺麗な鎧を着た女性が居た。女騎士って奴か? この部隊の指揮官をやっているようだ。けものの皮を着た盗賊らしき男たち……こちらは騎士たちの倍以上居るだろうか、弓矢でけん制しつつ騎士を攻撃していた。何気に統率が取れている。馬車を守りながら戦っている騎士のほうが不利だな……。
「リードラ、雲を背にできるか?」
「主よ、どうするつもりだ?」
「あの馬車を助ける。お前は白いから雲を背にすれば目立たないだろ?」
「承知したぞ」
リードラは戦場と雲の間に入る。
俺は久々にライフルをイメージし盗賊の狙撃を始めた。
何もわからないまま、次々と倒れていく盗賊たち……距離が離れているのと雲を背にしていることで俺たちの位置は気づかれない。
攻撃場所も特定できず無音で飛んでくる弾に恐慌をきたす盗賊たち。その機会を見計らったかのように女騎士から号令がかかり騎士たちは反撃を始めた。
「もう大丈夫かな? クリス、治療とかしたほうがいいのかね?」
「ああいう高貴な人が乗ってる馬車には、治癒師の一人ぐらいは居るから放っておきなさい。面倒ごとは嫌でしょ?」
誰かが目敏く俺たちを見つけたようで指差して何かを叫んでいる。そういえば俺、黒服だから雲の前でも目立つねぇ、それでもちっちゃな点ぐらいだと思うんだが……ちょっと失敗。
「ほらバレた」
「申し訳ないね、自分のことを考えていなかった。厄介ごとはごめんだ、リードラさっさと先へ進もう」
俺たちは再びフォランカへと向かった。
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