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ペンダント

 ドランさんの店を出て通りを歩く。すれ違う度に男がリードラの胸を見ていた。俺も視線の先を見ると、俺の着替えでは大きさのフォローができていないのか、押さえつけられてぽっちんが浮き出ていた。リードラはあまり気にしないが、もともとホーリードラゴンだったため羞恥心が少ないのかもしれない。でも俺は気にする。

「リードラ、服を買いに行こう」

「何でじゃ? (われ)はマサヨシの匂いに包まれるこの服が良い」

「ダメです、私でさえ洗濯物でしか匂ったことがないのに……」

 それはちょっと違うぞフィナ。

「リードラ? あなたはそれで良いかも知れないけど、あなたの主人であるマサヨシはどうなるのです? わざと胸を強調して通りを歩かせる変態だと思われるの」

(われ)は、マサヨシが変態でも良いぞ?」

 俺は変態じゃないし……。

「リードラ、俺はお前の胸を人に見せたいとは思わんよ。お前は俺のもんだろ? 見るなら二人きりの時に、じっくりと触らせてもらう」

「まっまあ、(ぬし)がそう言うのなら……」

 と照れるリードラ。

「揉みしだく」

 しかしアイナが即座に言う。クリスを見ると目を逸らせる。

「揉みしだかれる」

 フィナよお前もか!

「マサヨシ様、準備はできております」

 胸を反らし強調してくるマール。

 いやいや、何の準備だ?

「まあ、とにかく服は買う。でないと、リードラを独占できんだろう」

「よくわかったぞ(ぬし)よ、そういうことなら場所を探し見えないところで……」

「だーかーら、普通に服を買うの! アイナ、おばちゃんのところに行くぞ」

 あー、しんどい。


 俺が先行してアイナ行きつけの店に入る。

「あら、冬以来?」

「そういうことになるかな」

「で、今度はあの子かい? 大きな子だね」

「俺の服じゃ胸のあたりが合わなくてね、適当なのを見繕ってもらいたいんだ」

 おばちゃんはリードラの前に行くと、

「ちょっとおいで」

 おばちゃんがリードラに声をかけた。

(ぬし)よ……」

「心配ない行っておいで」

 不安げなリードラに俺がそう声をかけると、リードラは渋々おばちゃんに付いていった。

 まあ、おばちゃんに任せておけば問題ないだろう。

 他の四人はアクセサリーや服を見に行く。


 そういえば、『大きさ調整の魔法』なるものがクロースアーマーにかかっているということだった。リードラはドラゴンの姿と人化した姿二つを持っているため体の大きさが変化してしまう。バレッタとかでもいいのだがドラゴンの時は髪の毛がないし落としてしまうのがオチだろう。

 んー、魔石で紐を作って大きさ調整の魔法をかけて防御の指輪でも通しておけば、それなりに見えるかね。でも防御の指輪はその物に大きさ調整の魔法がかかっているようで、渡した皆の指にピッタリである。だったら、普通に防御の指輪をリードラに渡したほうが良いだろう。さてどうする、リードラの髪を飾るというのは難しそうだ。だったら、ペンダントとかのほうが良いのかね? あのデカい胸の上にペンダントヘッドが乗る形にはなるが、それもまた良しかな……。

 俺は銀貨を取り出し魔力を通して柔らかくする。作るなら肩につけたユニコーンの紋章。AGIのEXの器用さ補正なのか見る間に形になる。元々こういう細かい作業が嫌いではなかったのもあるのだろう。しばらくすると見たことのあるユニコーンの紋章になった。何となく目だけは赤く染めておく。あとは紐を通す穴を作り硬化させればペンダントヘッドの完成である。

 そのあと小さな魔石を三つ取り出し柔らかくしてから、できるだけ細く伸ばすことにした。意外と伸びる。一本一メートル程度か……。その三本の魔石を三つ編み状に撚り合わせ紐を作った。その紐に俺がイメージする大きさ調整のプログラムを魔力とともに流し込む。そして、手首に巻き付けるとミサンガほどの長さになった。

「これならいけるかな?」

 俺は、手首から紐を外しペンダントヘッドに通した。


「それ欲しい」

 アイナが言う。

 集中しすぎていたせいか、周りに居たことにも気づかなかった。

「私だって欲しいわよ!」

「私もです」

「マサヨシ様に作ってほしい」

 製作に集中して放置していたことを根に持っているのか結構グイグイ来る。

「お前ら、いろいろ見てたんじゃないの?」

「だって、マサヨシが何か作り始めたでしょ? 気になるじゃない」

「それも下手な職人よりきれいです」

「マサヨシが作ったというのも重要」

「欲しくなる要素です」

「これは、リードラの! お前らは既製品で足るだろ? あいつは大きさが変わるから作っていたわけだ」

「私だって既製品よりマサヨシの手作りが欲しい!」

 クリスが声を上げると

「「「そうだー!」」」

「もっとかまえーー!」

「「「そうだー!」」」

 三人が声をそろえる。

 なんでシュプレヒコールなんだよ!二回目、内容がずれてるし……。

「はいはい、君たちの心はよく分かった。そのうちな、そ・の・う・ち」

 そう言って四人の追及を誤魔化していると、リードラが戻ってきた。


「うん、冒険者っぽいね」

 茶の厚手のズボンに白のシャツ、ポケットも多め……。俺の着替えに近い感じか。俺の貸した着替えよりは胸が窮屈ではないな。潰されてぽっちんが出てるようじゃ困る。

「それじゃ、俺の着替え返してくれる?」

 リードラはカッと目を見開き

「返さねばならぬのか?」

「だって俺の服だし」

「匂いを嗅いではいかんのか?」

「嗅いで何してた?」

 ボッ

 リードラが赤くなった。

「私も嗅ぎたい……」

 フィナも嗅ぐの好きね……。

「今はいいけど、後でちゃんと返してね」

 そう言うと、リードラは渋々頷いた。


「リードラちょっとおいで」

 俺はリードラを呼びペンダントをつける。すると、紐は首に余裕を持った長さに調整された。

 ん、丁度いい。

(ぬし)よ、これを私に?」

 ペンダントヘッドを触りながら俺に聞いてきた。

「リードラは何も渡してないからな。髪飾りにしてもドラゴンに戻ってしまうと外れてしまいそうだし……。デザインは紋章と同じにしたけど良かったかな?」

 コクリ

 リードラが頷く。

「ああ、それ紐に大きさ調整の魔法をかけてある。リードラがドラゴンに戻って大きくなっても紐が伸びるから、そのままつけてて大丈夫なはず」

(ぬし)からの贈り物……嬉しいぞ!」

 リードラが抱き着いてきた。今までで一番力が入った抱擁だった。ああ、リードラも引き上げちまったか。

「欲しいわね」

「欲しいです」

「欲しい」

「マサヨシ様に作ってもらいましょう」

 見つめあって頷く残り四人。

 皆の結束が強くなるのはいいが、俺が面倒になるのはやめてほしい……そう思った。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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