現実逃避と癒し
リビングに俺がフィナに引っ張られて入る。その後から、ドラゴンの首が出たと思ったら、背の高い巨乳美女が入ってきたため、残りの一同はパニックになる。そのうえ、俺はぼーっとしていた。
「マサヨシ様がおかしいんです」
フィナが言った。
「何があったの?」
とクリスが聞く。
「この人は、リードラ。新しい奴隷です。ガントさんの依頼というのは、ホーリードラゴンであるこのリードラの買い取りでした」
「で、ここにリードラが来たってわけね」
「はい、そういうことです」
「マサヨシがおかしい?」
アイナがフィナに聞く。
「マサヨシ様は、前の世界で奥様が居たのは聞いていますよね? 病死したっていう……」
「うん」
「その奥様が、リードラの母親。魂がこちらに来た転生者だっていうことです。寂しさから、マサヨシ様に呪いをかけて、こっちに呼び寄せたんです。でも、会えなかったのです。マサヨシ様が来る前に亡くなってしまっていたのです」
「マサヨシ様は二度も連れ合いを亡くしたということ?」
マールが聞く。
「そういうことになります。そのあと亡骸に祈りたいと、リードラさんの背に乗って、住処までいきましたが、リードラがマサヨシを探している間に、住処の結界を破られ、奥様の亡骸を奪われたのです。その魔法陣をマサヨシ様は読み取られ、行き先が『ゼファード』だということを突き止められました。何の準備もなく、そのまま出掛けようとしたところを私が止めて連れ帰りました」
俺はフィナが泣いているのには気づいた。
「俺、ちょっと寝る」
そう言ってリードラの紹介もせず、奴隷たちを置いて自室に入る。現実逃避に近い。
部屋の中を真っ暗にして、布団を被る。前のこと、今のこと、色々思い浮かぶ。色々考えて、結局何も解決しない知らない間に寝ていたようだ。
いつもなら誰かが入ってきたら気配で気づくが今日は違ったようだ。誰かが布団に居る。後ろから黒い肌の腕が俺の腰に絡み付いていた。
俺は体を動かし、犯人の方へ振り返る。そこには、髪を解き裸のマールが居た。いつもは下着を着ているはずなんだが……。
「どうしたマール?」
「マサヨシ様が元気がないので、元気付けようかと」
「それじゃ、別の部分が元気になっちまうよ」
苦笑いをしながらマールを抱き寄せた。
「でも、私にはこれぐらいしか……」
「ありがとな、心配してくれたんだろ?」
「みんな心配しています。リードラ様も……」
「そういや、あいつの紹介さえしてなかったな」
「リードラ様は空いた個室にベッドを準備して寝てもらってます」
「そう、で、今いつ頃?」
「真夜中過ぎぐらいでしょうか」
「意外と寝てたんだな」
「はい、夕食になっても出てこられないので、皆心配しました。食事は私とアイナ様で何とかしましたのでご安心ください」
おもむろに
「頭撫でてもらっていいか?」
俺がマールに言うと、微笑みながら
「私でよければ」
と答えてくれた。
俺はマールの膝枕に頭を乗せ横になる。そして、頭を撫でてもらった。
「よくこうして頭を撫でてもらった。俺の耳を掻くのが好きでな、それが終わると頭を撫でてくれる」
「奥様のことは好きだったので?」
「ああ、好きだった。くだらない話をしては笑っていたよ。俺は俺の趣味の話、妻は妻の趣味の話。それぞれの話をして、あーだこーだ言い合う。楽しかったなぁ」
マールが悲しそうな顔をする。
「でも、もう吹っ切らないとって思ったんだ。嫁はもうこの世界にも居ない。正直引きずっていたのも確かだ。俺が妻の亡骸に祈りたかったのは、俺の切り替えをしたかったからなんだ」
なんか語ってるなぁ……似合わねぇ。でも話しているうちに、何か纏まってくる。
「マール、やっぱり俺は妻の亡骸を探すつもり。俺の我が儘だけどね。そして祈って吹っ切って、お前らとちゃんと付き合いたい。そういうのじゃダメかな?」
「えっ」
マールが驚いて手で口を押さえた時に気づいた。
俺は起き上がり、収納カバンをガサゴソと探って防御の指輪を見つける。
「そういやマールには渡してなかったんだな。ほい、防御の指輪。手出せ」
俺は強引に左手を取る。
「薬指に入れていいか?」
コクリと頷く。
俺はマールの左手薬指に指輪をつけた。
「悪かったな、指輪渡してなくて……」
「クリス様も、フィナ様も、アイナ様も皆つけてるのに、私だけ……。でも私が口に出して言うことじゃないし、忘れてるだけだと思ってたけど不安で……。でも、貰えた……嬉しい!」
マールが涙を浮かべ、そして飛びついてきた。
「見えるって、せめて隠せ」
形の良い大きな双丘が目の前にある。そう開けっ広げだと、こっちが恥ずかしい。
「でも、お前結構あるんだな」
「何がですか?
「乳」
「触ってもいいです。マサヨシ様なら」
胸を見せつけてくるが、
「今度触らせてもらうよ。さあ、寝よう」
俺はそう言うと、マールと布団に入って寝た。
鳥がさえずりはじめ外が薄明るくなった時、目が覚めた。ふと横を見ると裸のダークエルフ。マールはちょっと寝相が悪い。布団をかけ、頭を撫でていると、くすぐったいのか目を覚ました。
目が合い真っ赤になるマール。
「そろそろ起きるか? 飯の準備をしないと」
「まだです、もう少し撫でていてください」
「はいよ」
しばらく俺はマールの頭を撫でる。満足したのかマールは布団を脱ぎ立ち上がった。
「だから、見えるって」
「私は、マサヨシ様に見られるならいいんです」
「いやいや、よくないから……早く服を着ろ!」
俺はさっさとベッドから降り、部屋を出る準備をした。
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