リードラの山
リードラの背に乗り山を目指す。
「ある程度風の影響を受けないようにはしておるが、大丈夫かの?」
「んーちょっと、風が強いな。まあ、何とかする」
仕方ないので、いつも高速移動で使う風防魔法を使った。
「フィナ、大丈夫か?」
「はい、楽になりました」
いったいどのくらいの速度が出ているんだ? 翼の先にはベイパーが出ていた。飛行機などで主翼の乱気流でできる雲のような物だ。翼をはばたかせず動力的な物はないので、魔力で飛んでいるのだろうか。下を見ると凄い勢いで風景が流れていく。
「主よ、山が見えてきたのじゃ。もうすぐ着くぞ!」
目の前に槍のように尖った山が並んでいた。リードラは急上昇すると、その中の一番高い山に向かった。
正面に洞窟の入口? ああ、リードラの家の入口が見えてくる。入口の前だけ踊り場のような場所がありリードラはそこに降り立った。リードラが伏せの体勢になる。俺達は背を滑り降りた。
「ここがお前の家?」
「ああ、我の家じゃ。そして母様の墓地」
リードラは中に入ろうとして立ち止まった。
「結界が破れておる。相当高位な魔法使いでなければ解けぬはず」
「お前がここを出てからどのぐらい?」
「四、五十年になるはず」
「気付かれたのかもしれないな。山にリードラのような守り人が居ないって……」
リードラは、はっとしたような顔をすると、急いで中に入る。俺たちも後に付いていった。
直径百メートルは有ろうかと言うドーム。
「母様の遺体が無いーーーー!」
リードラが叫ぶ。二十メートルは有ろうかと言うドラゴンが立ち上がり、大きな口を開けて叫ぶ様はちょっとした怪獣映画だ。声が反響してうるさい。
「四、五十年も経てば朽ちてなくなるんじゃないです?」
フィナが問うと、
「そんなはずはない! ドラゴンは元々魔力が高い生物。死んでもなかなか朽ちないのじゃ」
「落ち着け! リードラ」
リードラがふーっと息を吐く、
「主よすまぬ。取り乱した」
「落ち着けばいいよ。結局荒らされたってことでいいのかな?」
「そうじゃ。しかしあの大きな母様をどうやってここから持ち出したのか?」
ふと地面を見ると地面に何か書いてある。この文字みたいなのは何だ? 紋章みたいな感じだが。
「リードラ、これは?」
「魔法陣……、まさか、転移?」
「転移魔法が使える奴が居るのか?」
「膨大な魔力が必要なため何十人もの魔法使いで魔法陣を書き行う魔法。母様の大きな体を転移させようとしたら百人単位ではないじゃろうか?」
「ちなみに嫁はどのくらいの大きさ?」
「我の倍ぐらいじゃったかな……」
おっと、四十メートルってすげえな。ふと横を見るとフィナが心配そうに俺を見ていた。俺はフィナの頭を撫でるそして話を続ける。
「転移先の特定はできるのか?」
「この魔法陣を読めればわかるが、我にはわからない」
俺が魔法陣をじっと見ているとINT補正で魔法陣を理解したようだ。言葉が思い浮かぶ……『ゼファード』と……。
「フィナ、リードラ、ゼファードって何だ?」
「『ゼファード』この国最大のダンジョンがある場所……」
フィナが答えた。俺のマップに場所が表示される。
「仕方ない、行かないとな……」
無意識に足が動き出したようだ、フィナが俺を引っ張って止める。
「マサヨシ様今からでは遅すぎます。一度家に帰って準備してからではだめですか?」
「ああ、そうするか」
俺も考えがまとまらない。
「リードラも来い、お前は俺の奴隷だろ?」
「主よ良いのか?」
「ああ来ればいい」
俺は扉を出し家のリビングと繋いだ。
俺はフィナに手を引っ張られリビングへと行く。
「主よ、通れぬ」
リードラは頭と首だけを通し俺に言った。
「ああ、これを渡すから、人化して入れ」
新しい俺の着替えを渡した。
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