ガントさんからの依頼
入街処理が終わり、俺とフィナは王都に入る。
「腹減ったなぁ」
「減ったですぅ」
ホットドッグ的なパンにソーセージを挟んだものを買い、二人で食べながら大通りを歩く。食べ終わるとガントさんの店を探した。
おっと、デカいねガントさんの店。
驚きながらガントさんの店に入る。
「失礼します。ガントさんはいらっしゃいますか?」
そう声をかけると、奥からドワーフの女性が現れた。
「ガントは私の夫ですが、どのような御用でしょうか?」
「俺はマサヨシと言います。ガントさんから手紙を頂きました。王都の店に来てほしいということでしたので、ここに来た次第です」
「ああ、あなたがマサヨシさん。夫から話は伺っております」
「それで、ガントさんは?」
「多分王都の外におります。厄介ごとの対応かと……。多分マサヨシさんに関係があること」
意味深なことばを言う奥さん。そんな話をしていると、ガントさんが店に戻ってきた。
「おーマサヨシ! よく来たよく来た」
ガントさんが俺を抱きしめた。んーあまり嬉しくない。
「それで、何の用でここまで呼び出した? メイドと料理人は?」
俺が聞くと、
「いや、その件じゃない」
「だったら何?」
ガントさんは唐突に、
「お前強いよな」
と聞いてきた。
「ん? 多分」
「で、お前、ペットに興味あるか?」
「何だ、ガントさん急に」
「ペットに興味があるかって聞いているんだ」
「無いわけじゃない」
「無いわけじゃないってのはあるってことでいいんだな?」
ガントさんが威圧してくる。
「ああ、あると思う」
「よし、この前借りにするって言ってたのを返してもらおう。ちょっとついてこい」
そう言われ、俺は肩をつかまれると、馬車に押し込まれ王都の外まで連れていかれた。そして、サーカスが使うような大きなテントの中に入ると、
「じゃじゃーん。ド・ラ・ゴ・ンだぁ」
とガントさんが「ドラゴン」を強調し言った。
おっとドラゴン初めて見た。デカいね20mぐらい? 角が2本? んーでもペットには邪魔かなあ。家に置くところないし、コカトリス居るし。おっと何かドーム状のものに囲まれてるね。結界? 動けなくしてるのか。あー表面が黒後げになってるところあるじゃん。火も吐いたのね。あぁ、あれ、絶対怒ってるよね。
「怒り心頭って奴か。ここまで縛っちゃ可哀そうだろ?」
でも、隷属してんのこいつ、野生のままじゃね?
「やっぱりドラゴン要らない、別件で返させてもらえない? こいつ隷属してないだろ?」
「頼む、買ってくれ! 知ってるぞ、調べたんだからな。お前、あの炎の風って盗賊団潰しただろ?」
「まあ、潰したな」
「結構、稼いだだろ?」
「んー稼いだっちゃ稼いだ」
「ドラゴンは良いぞー、飛べるし、戦力になるし」
「で、場所取るし、気が短いし、食費も高いんだな」
「そうなんだよぉ~。別の店で扱いきれなくなって俺に回ってきたんだ。卸値でいいからって。でもこんなの俺じゃ扱えないうえに赤字だぁ~!」
「なんだかんだ、あの結界みたいなのも張ってもらうのに結構お金かかってるんだろ? ドラゴン押さえ込まないといけないからねぇ。あの鎖は? ああ、あれも魔道具っぽいね」
「そうだ、金食い虫なんだおよぉ。あの結界で、金貨50枚はするんだ」
涙を流し俺に縋りつくガントさん。
「嫁に高く売れるって買った手前、あまり言えないんだよう」
「で、卸値っていくら?」
「白金貨6枚」
おっと、6億円
「ん? 何となく白金貨6枚じゃないような気がする。向こうが泣きついたんだ、卸値よりもっと安く買ってないかい?」
ガントさんをちらっと見て
「ああ、やめよっかなぁ」
じー。
ガントさんはマサヨシにジト目で見られている。
ガントさんは汗をかきだした。
「ちぃ、白金貨3枚だよ! 今までの必要経費を考えると、せめて5枚じゃないと」
「利益無しなら、白金貨4枚だろ? 1枚は多分利益」
「ぐっ」
ガントさんは更に汗をかきだした。
「わかった、4枚だ! 4枚であれを何とかしてくれ」
ガントさんは、落ちた。
「ヨシ買った! ホイ、白金貨4枚」
ガントさんに白金貨4枚を渡す。
「言うことを聞かせて、ドラゴンに隷属の紋章をつければいいんだな?」
俺は結界に近づくと、結界をコンコンと叩いてみる。
おっと、堅そうだ。
「おーい、ドラゴン。ここから出したら、言うこと聞いてくれる?」
「我はホーリードラゴン! 聖なるドラゴンと名高い。ステータスを下げる魔道具であるこの鎖で繋がれているとはいえ、我の力で割れぬ結界を、お主が割れるはずがあるまい? もしできたなら、何でも聞いてやろう」
言ったね。
「多分大丈夫。ほい」
俺はこのくらいかなっていう程度の強さで結界をノックする。
ピシッ……。
おっと、ヒビが入っての……、
ピシッ、ピシピシピシ……パキン!
結界崩壊ヨシ!!
ホーリードラゴンはきょとんとしていた。
「言うこと聞いてね」
「はい!」
「ん、素直でよろしい」
俺は、ホーリードラゴンに近寄ると、頭を撫でた。
ホーリードラゴンが目を細める。
「鎖は、邪魔だね」
拘束部分を引きちぎりホーリードラゴンを自由にする。
ドラゴンも汗流すんだなぁ。
「あぁ、鱗に傷がついてる。暴れたんだろ? ちょっと待ってろ」
俺の治療魔法をドラゴンにかけると、みるみる傷は無くなった。
「ガントさん、ドラゴン洗ってないの? 泥だらけじゃん」
「結界の中に居たんじゃ洗えないだろ?」
「そうだな確かに……」
んーアイナで使った魔法をちょっといじって。イメージはデッキブラシでの水洗い、念入りにだな。水は温水で……と終わったらタオルで拭き取り、拭き取りも念入りにして、温風乾燥。
ホーリードラゴンの周りに水が浮き、体に当たり始める。見えないデッキブラシが、ホーリードラゴンの鱗をこすりだす。気持ちがいいようだ。
「うえ、きったねえ。水が真っ黒じゃん」
水が綺麗になったところで、見えない布がホーリードラゴンを拭きだす。その後温風が送り込まれ、ホーリードラゴンの洗浄は終わった。真っ白だ。めっちゃ綺麗。
「おぉ、ピッカピカだ。よく見ればカッコいいんだな、お前」
「綺麗」
フィナが言った。
「我は美しいのじゃ。ドラゴンの中で一番美しいと言われるホーリードラゴンなのじゃ。体を洗うなど何か月ぶりじゃろう。気持ちいいぞ」
ホーリードラゴンが翼を広げ胸を張る。
「良かった良かった。で、俺に隷属してくれる?」
「良かろう。我よりもお主のほうが強いからのう。助けてもらった恩もある」
契約台を使い契約を開始する。
「紋章はユニコーンでいいな。ちょっと、体を下げてくれないか?」
そう言うとホーリードラゴンが伏せの状態になった。そして、ドラゴンの左肩にユニコーンの紋章をつける。くすぐったかったのかホーリードラゴンはもぞもぞと動く。ちゃんと魔力で書いた紋章は白く残った。
うむ、紋章を書けたようだ。「俺や、俺の家族、俺の仲間を傷つけない、殺さない。俺の言うことを聞く」ってのを、魔力に乗せて紋章に流し込む。すると、紋章が白く光りだす。光が消えると、紋章は黒くなっていた。
「ヨシ完了」
「我よりも強き男、出会ったことが無かった。魔道具と結界で縛られ、運ばれてきた我を助けた男」
ぽっ
ん? 「ぽっ」って聞こえた?
「我を組み敷いて、あんなことやこんなことで辱めることのできる男」
おっと、不穏な言葉。
じーーーーー。
おっと、フィナから不穏な擬音語。
「あのドラゴン、マサヨシ様のこと好きですよ?」
「あの大きさじゃ無理じゃない?」
「マサヨシ様、忘れましたか? クリスさんが龍族が居るって言ってたでしょ? 人化したドラゴンが龍族」
「おぉ、そんなことも言ってたな。あそこのドラゴンは人化してないぞ?」
俺が、ホーリードラゴンを指さして言うと。
「ん? 人に化ければいいのか? ちょっと待て」
ホーリードラゴンは光りだすと小さくなっていった。俺ぐらいの大きさになったかな?
ゼロ系新幹線が二つ胸に付いていた。お前乳デカすぎるだろ。? おっ、角はあるんだな。年齢は……俺と同じかそれよりちょっと上に見える。見た感じクリスより年上。髪の毛は白のロングだ。でも全裸はいかん!
俺は、俺の着替えを出す。せめて胸は隠さないとな。
「俺の着替えだが、着ておけ」
俺は収納カバンから、俺の着替えの上下を探して渡した。
「これは、主の匂いがする服……」
ホーリードラゴンは俺の着替えを持ちじっと見つめた。
「あのドラゴン、羨ましいです……」
フィナも匂い好きだよな。
「ホーリードラゴンよ黙ってそれを着ておけ。っていうか、呼びづらい。お前、リードラな」
「リードラ、いい名だな」
ホーリーじゃ安易だしリードじゃ変だし、リードラでいっか……って考えた適当な名前なんだが、喜んでもらえたようだ。
「リードラ、言うことを聞け。その服を着ろ」
「着方がわからぬ。主よ、教えてくれ」
「仕方ないなぁ……」
と、リードラへ近寄ろうとしたとき、フィナが止めた。
「あれは策略、私が教えてきます」
フィナがリードラへ近づく。
「あなたの策はわかっています。近づいたマサヨシ様にその乳を見せて、誘惑しようとしているのでしょう? でもね、ダメなの。満足してるの、いろんな種類の乳を見てるのですから」
俺、乳に満足してるって? そんなこと言ったことないぞ? 並べて見たことないし。
「乳じゃダメ? 嘘だ……母様はそんなことを言わなかった」
愕然とするリードラ。
「アイナはツルペタ、私は小さめつまり微乳、クリスさんが形のいい張りのあるつまり美乳、あなたは巨乳枠なのです。マサヨシ様は巨乳を好みません」
えっ、俺そんなこと言ったことないけど。
「あぁ、私はダメなのか? 主の欲望にこの乳は応えられないのか?」
愕然とするリードラ。
「いいえ、大丈夫。まずは服を着ましょう。それからです」
フィナは服の着用を促す。
「俺も服を着てほしい。でないと、ここから出られない。巨乳でも俺は問題ないから大丈夫」
「おぉ、巨乳は関係ないのか? 満足させられるなら服をすぐ着よう」
意味が分からん。
言いくるめられたリードラは、服を着た。つか、服の着方知ってるし。だったら、この件要らんじゃん。
はあ、疲れた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。




