冬
秋が過ぎ冬になる。この辺は何気候なのかは知らないが雪が降るようだ。
俺たちはたまに冒険者ギルドに行き適当な依頼をこなす。信号機たちは自分たちの仕事をこなし成長していった。
さすがに秋仕様の服ばかりではいけないとアイナ行きつけで冬服の準備もした。外出時は皆モコモコだ。
リビングには暖炉もあるので暖かい。パチパチと薪が燃える。皆が集まる場所になる。
コカトリスたちは、上半身の羽毛の中に下半身を上手く仕舞いじっとしている。寒いのが苦手?でも一応餌は取っているようだ。俺の家の周りにはコカトリス以外の魔物の反応が無い。
フィナは雪が好きなのか庭駆けまわっている。狼じゃかなったっけ? しかし物足りない……冬にはコタツ、やっぱりコタツだろう。ミカンは無いがコタツは欲しい。コタツ……作ろっと。
発熱部は魔石を使えばいいか。あとはコタツのやぐらとコタツ用の敷布団と掛布団、その上に天板。
「ちょっと出かけてくる」
俺は近くに居たクリスにそう言うと扉を出した。すると、クリスが
「私も行っていい?」
「ダメだと言っても付いてくる気なのだろう?」
「当然!」
クリスが胸を張った。
「おいで」
そう言ってクリスの手を取ると俺の扉でドロアーテの街へ向かった。
大通りを歩く……。いつもならアイナビで聞けばいいのだが、今日はクリスだからそうもいかない。だが、当たりはずれがあっても自分で見回るのもいいような気がする。クリスも久々に二人なのでご機嫌なようだ。色々な出店を見て回る。
「マサヨシ、何を買いに来たの?」
俺の目的を聞きたいようだ。
「コタツの材料」
「コタツ?」
「向こうの世界の暖房器具、暖かいんだ。できてからのお楽しみで……」
「うん、楽しみにしておく」
クリスは俺の右腕に抱きついてきた。
見回っていると、足が長いテーブルは出てくるのだが、短い奴が無い。まあ、こっちじゃ家の中でも靴を履く。床に横になるってことはほとんどないのだろう。
たまたま通った家具屋で、まだ足のついていないテーブルの天板を見つけた。一メートル×二メートル程度の長方形だった。
「すみません、このテーブルの買い手はもう見つかってる?」
そこに居た若い職人に聞くと、
「いいえ、まだです」
「この天板に椅子の足をつけるっていうのは可能です?」
「可能ですが、低くなり過ぎますよ?」
何を考えているんだこいつって感じで見られる。
「そういうのが欲しかったんで……」
「今あるのだったら、そこにある足をつけることになりますが?」
結構がっちりとした椅子の足、長さが五十センチぐらいだろうか。十分だ……。
「それでお願いします。あと、その天板と同じ大きさ、んー少しぐらいなら大きくて良いのですが、そういう板は有りませんか?」
「ああ、これなんてどうです?」
ちょっと大きめの磨かれた板が出てきた。イメージぴったり!
「これでお願いします。今日中にできます?」
「ああ、足だけなら、すぐにですよ」
「なら、先に支払いを済ませておきます」
金額は七千リル、金貨一枚を払いお釣りをもらう。
そして、あとで寄ることを連絡し家具屋を出た。
俺のテンションが高いのに気付いたのか、
「嬉しそうね」
とクリスが聞いてきた。
「ああ、そりゃ自分の思うようにできそうだからね。嬉しくもなる」
「次はどうするの?」
「大きめの布団と毛布、カーペット二枚かな」
「私が選んでもいい?」
「ああ、任せる」
大体イメージしている大きさをクリスに伝えた。
クリスは鼻歌を歌いながら探す。
「デートみたいだな」
ふと口に出た。
クリスの顔が赤くなった。
「嫌?」
「いいや? 楽しいぞ?」
「だったら良かった」
クリスが抱き着いてきた。
色々まわって結局選んだのは赤と白のチェックの布団とピンクの毛布、カーペットは赤の分厚い大きめの奴と白の薄く小さめの物となった。こちらの女性も赤やピンクは好きなようだ。
家具屋に寄って注文通りのテーブルと板を貰うと、扉で家に帰った。
家に帰ると早速マンゴー大の魔石を出し魔石を薄く広げる。「魔石に触ると、四十度程度で発熱、そして再度触ると発熱を止める。更に周囲の温度が四十五度で発熱を止める」というプログラムを魔石に流し込む。そしてコタツのやぐらにするテーブルに魔石を固定。リビングにカーペットをセット、その上にやぐら、毛布と布団、最後に天板にする板を置き、コタツができた。
「できたの?」
クリスが聞いてきた。
「使ってみるから見てて」
ソファーに会ったクッションを持つとカーペットの手前で靴を脱ぎ、コタツに入り魔石に触った。じんわりとコタツの中が暖かくなる。そしてクッションを枕に横になった。
「ふう、いいねぇ……」
「入ってもいい?」
クリスも靴を脱いで、俺の横に入ってくる。
「コレいいわね」
そして二人は動かない。
コタツは人を堕落させる。
コタツの魔力に引き寄せられるようにフィナ、アイナ、マール、サラ、タロス、テロフがコタツで横になって動かなくなった。
この日、しばらく俺の家の家事一切が止まった。




