転移の扉の行き先
俺の扉の劣化版を作ることにする。材料提供は離れの奥にあった我が家の倉庫らしき所からだ。そこにはいろいろな品物が眠っていた。色々としか言っちゃいけないような物が多かった。なかなか人には言えないことをしていたようで……。「そういや離れって見てねぇよな」ってことで、俺が捜索した結果だ。未成年には見せられない物も多かったので、そういう物は俺のカバンに収納した……。倉庫は結構すっきり、どんだけあったんだ? いろいろな物。まあ、俺は決して使うつもりはない。ホントに無い。断じてない。で、そこに取り外されたと思われる扉があったってわけだ。
しかし、俺のマップから座標を特定、魔力を魔石に流しプログラミングし、その場所に飛ぶようにすれば転移扉の完成だとは思うのだが。安全性の関係で使う人間の魔力の登録はしておかないといけない。誰でも出入りできるのはよろしくない。あと、転移の場所だ、道のど真ん中にってわけにもいかないだろうから、移動するための場所も考えないとな……。家屋の中が無難だと思う。
さて、転移場所の交渉相手だが……まあ無難に木漏れ日亭だろうな。コカトリスの卵を一番必要としているのはあそこだろうし、前みたいに外から持ち込んで因縁つけられても面倒だ。作る前に交渉しておかねば、急に来てもびっくりするだろう。早速ルーザさんに交渉だ。
俺は木漏れ日亭に扉で移動し、入口から中へ入った。
「こんにちは!」
俺は大きな声であいさつをする。あいさつは重要だぞ?
しかしルーザさんの声がしない。
「卵はどこだ! 出せ!」
代わりに男の声がした。調理場から?
「なんかあった?」
そこら辺に居た客の男に事情を聞く。
「またあいつら、卵をよこせって来てるんだ。金を払わずに貴族の手下だってことだけで……」
「ルーザさん、こんにちは」
俺は調理場に入った。皮鎧を着た屈強そうな男が三人、ルーザさんに詰め寄っている。二人は俺と同じぐらい?リーダーらしきは、おっとデカいな二メートル近くありそう。
「あっマサヨシさん」
俺を見つけて、ルーザさんが寄ってくる。
「また来たんですか?あの男たち」
「はい、最近酷くなって、お客様にも迷惑がかかる次第で……」
「そう……」
俺は、カバンから卵を出し腰あたりで持った。
「これ上げようか?」
「おっおう」
リーダーらしき男は急に卵が出てきたのでびっくりしたのか適当な返事をした。
「あーげた!」
定番の卵を持ち上げる奴をやってみた。
おっと、沈黙。
リーダーらしき男の眉間に怒りジワ。メタボにバカにされると効果があるらしい。イラっとした?
俺は気にせず、
「上げたから仕舞うぞ?」
俺は収納カバンに仕舞った。
「バカにするのもいい加減にしろ!」
リーダーらしき男が怒りだすが、俺はアイアンクローをしてそのまま持ち上げた。威圧も込みだ。
「お前らのほうがバカにしてないか? 俺はルーザさんと契約しているから卵を持ってきているだけだ。横から割り込んでくるお前らの方がおかしいと思うんだが……間違っているか?」
リーダーらしき男は俺を蹴ってくるが、特に痛くないのでそのままである。取り巻き二人も片手で持ち上げられるとは思っていなかったようで唖然としている。
「おい、そこの、どう思う? 俺とルーザさんは間違っているか?」
取り巻きの一人に尋ねてみる。そのうちリーダーらしき男は痛みからか口から泡を吹き気絶した。
「ルーザさん、ごみを捨ててくるのでちょっと待ってくださいね」
俺は木漏れ日亭の外にリーダーらしき男を投げ捨て戻ってきた。
「あいつはAクラスの冒険者だぞ? それを……」
「それはどうでもいい、俺とルーザさんが間違っていると思うか?」
「間違っていないと思います」
取り巻きがしぶしぶ言った。
「だったら、お前らの交渉の仕方が間違っていると思うんだが? 力ずくなら俺も力ずくで対応するぞ? ただのデブだと思うなよ! 『デブがそう言った』と貴族様に言っておけ! 交渉するなら俺だ、他に手を出したら潰す。行け!」
取り巻きはすぐに店を飛び出しリーダーらしき男を抱えて去った。
「私が50歳若ければ……」
不穏な言葉が聞こえたが無視をする。
「そうそう、お願いがあって来たんです。ちょっと込み入った話なので、二人だけでよろしいでしょうか?」
「二人っきり? えっ」
いや、ルーザさん違うから……俺どんだけストライクゾーン広いんだ?
ルーザさんは自室のソファーに俺を導いた。
「えーと、早速話なんですが、俺は魔法使いでいろいろな魔道具を作っています。その中で転移の扉という物がありまして、俺の家とこのドロアーテを結びたいと思っています。ただ、道のど真ん中というわけにはいかないので、この木漏れ日亭の中で使っていないような部屋や倉庫があれば、そこと俺の家を結びたいのです。ちょっと見てもらえます?」
俺は部屋の中に扉を出し、行き先を俺の家にして扉を開ける。
「えっ、向こう側の景色が違う」
「まあ、こういう感じです」
俺は扉を仕舞った。ルーザさんは少し考えていたが、
「いいですよ? さっきのこともありますし、卵を直接届けてくれるのも助かります。卵の受け渡しをあまり見られないほうがいいでしょう」
と言った。
「ありがとうございます」
「あとは、使っていない場所なんですが……確か使っていない薪置き場があったと思います。この宿の風呂用に薪を使っていたのですが、魔石に変えた時に使わなくなっていたはず。ちょっと来てもらえますか?」
俺はルーザさんに付いていった。
「ここです」
ルーザさんが言った。
中庭にある小さな小屋、壁半分がレンガで途中から板張り屋根も板張りだ。ただ、カウンターを経ずとも直接外に出ることができる。少し遠いが、調理場に直接入ることができるようにもなっている。便利だ……。
「ここを使わせてもらってもいいですか? 気に入りました」
「はい、喜んで!」
こうして、転移場所ができた。
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