アイナの真偽
次の日、俺はアイナを連れわざとドロアーテの街中を歩く。昨日居たゴロツキや、ちょっとした兵士みたいなやつらが、子供を見つけては左肩の確認をしていた。
「おいお前! その娘はお前の娘か?」
兵士風の男に俺は声をかけられた。
「ああ、この子は私の奴隷です」
「何! それは本当か? ちょっと、紋章を見せてもらってもいいか?」
おっと、ロックオンされたね。
「はい、では……アイナ左肩を見せてあげて」
アイナはゴゾゴゾと左肩を出した。兵士は紋章が書いてある手配書と比較している。
「違うな……すまない、間違いだったようだ」
アイナは紋章を仕舞った。
「アイナのような奴隷をお探しで?」
「いやな、この町に居たはずの奴隷が居なくなったと言って、貴族様が探しに来たんだ。それを我々領兵が手伝っているわけだ」
「その奴隷は何者なんですか?」
「それがな、さる高貴な方の落とし種ということだ……。おっと、これ以上は言えない」
「何かほかに特徴があれば気付いたときに連絡しますよ?」
「そうだなぁ、もしそうなら、その子のうなじの部分にほくろが十字に並んでいるらしい」
十字星ですか……。俺はそっとアイナを確認すると、おっと、有りました。
確か、ほくろって、メラニン色素でできてるんだよな。それを除去できんかね。
うなじを触るふりをして、色素を抜くイメージ。肌色のほくろになった。
「一応、この子も確認してみますか?」
「ああ、見せてもらえるか?」
兵士にアイナのうなじを見せた。
「無いな。これを持っていてもらえるか? 確認した印だ。二度手間は面倒なんでな」
そう言うと、兵士風の男は『確認済み』と書いた紙を渡してくれた。
「ちなみに、何でそんな幼い奴隷を?」
兵士風の男が聞いてくると、アイナが
「マサヨシは私が好きだから」
爆弾を投下した。
「えっ、ロリコン?」
兵士風の男の目が冷めた目に変わる。
「いや、違うから。アイナのことは好きだが、ロリコンではない」
「まあ、人の性嗜好にはいろいろあるからなぁ……。もういいぞ……行ってヨシ!」
1人の兵士風の男に勘違いされ、俺達はその場を離れた。
ハァ……とりあえず、アイナの検査はクリアしたからいいか……。
検査が終わりドロアーテをぶらぶら歩く。アイナが俺の右手を握ってきた……そして手を振りだす。まさに散歩……。子が居たら、こんな感じだったのかね。などとアイナが増えてからよく思う。俺の精神年齢が高い分余計にそう思うのかもしれない。
アイナが立ち止まった。薄汚れた子供が居る。アイナはじっと見ていた。少し前はあそこに居た。
冒険者ギルドがあるところには大体親無しの子供が居る。魔物に殺され親が亡くなるケースがあるのだ。そういう子供に救済があるかというと、そうではないらしい。親がお金をためておいてくれたなら何とかなる時もあるらしいが、子供が大金を持つと大人が食い物にして結局落ちていく。孤児院とかがあればいいのかもしれないが、なかなか無いらしい。冬を前に何とかしてやりたいが方法がわからない。寄付しても使われないんじゃ意味が無いからなぁ。
ふと思い浮かんだ。隷属の紋章で契約したら能力アップするが、契約書で契約した場合はどうなるのだろう。もし、俺の恩恵を受けられるならば……。契約書は嫌になったら破棄できるから、紋章のように制限されない。俺と離れたいなら破棄すればいい。しかし、俺は契約書の書き方は知らない。ガントさんに言われたが、一度魔法書士の勉強をしたほうが良いのかもしれないな。
「アイナ、あの子たちを助けるために、ちゃんと免許を取ろうと思うんだが……だめか?」
「マサヨシらしくていい」
「そうか?」
「うん」
アイナが笑った。




