表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/328

木漏れ日亭にて

 最近木漏れ日亭は繁盛している。理由はほぼ毎日コカトリスのオムレツが食べられるため……原因は俺だ。数量限定とはいえコカトリスの卵が食べられるとあって並んで待つ人さえいた。

 俺がオムレツを教えたのだが、あっという間に木漏れ日亭の料理人はオムレツを覚えた。更に自分のところの味を作ったのも原因かもしれない。ケチャップのようなすっぱ甘いソースを作り、さらに美味しくしたのだ。色が緑色なのはご愛敬。

 というわけで俺は、数日に一度木漏れ日亭にコカトリスの卵を卸しに行く。大体昼の忙しい時間が終わったぐらいが多い。

「こんにちは、いつもの奴を持ってきました」

 俺がそう言うと、ルーザさんが出てきた。

「いつもありがとうございます。この前の分です」

 と、ルーザさんが出した卵の代金を受け取り、俺は調理場へ行くのがパターンである。しかし、この日は違った。

「おい、お前! お前が卵を卸している者か?」

 急に屈強そうな男に声かけられた。

「何の話です?」

「最近、卵の出所を探そうとして嫌がらせのようなことをする人が居るんです」

 ルーザさんが俺の耳元で囁いた。まあ、こんだけ客が来る、いくらで売っているのかは知らないが、それでも来るぐらいだから、木漏れ日亭自体も儲けているのかもしれない。

「俺が卵を持ってきていたとして、どうする?」

「儂らの方に回せ!」

「そんな上から言われてもなぁ……」

「俺たちはバックに貴族様が付いているんだぜ、聞かないと大変なことになる」

 余程貴族が後ろ盾なのが言いたいのか、ぺらぺらと喋る。

「どう大変に?」

「お前の奴隷がどうなってもいいのか?」

「お前らにあいつらをどうこうできる?」

 一応あいつらSランク以上なんだがなぁ。

「所詮は女、どうにでもなる」

 嫌な感じだ。イラっとする。うっすらと殺気を乗せて

「やってみれば?」

 と言うと、屈強そうな男は静かになった。

「ちぃ、今日はこのぐらいにしておいてやる」

 悪党の捨て台詞を吐いて去っていった。

 今日は俺以外誰もドロアーテには来ていない、家を襲おうにも一日遅れだ、それに、牧場周辺にはコカトリスもおり、見知らぬ人間など殺されないにしろ突かれて石化、コカトリスから逃げたとしても、キングにやられるのが落ちである。


「で、あいつら何者なんです?」

「最近来た貴族の取り巻き。何でも八歳ぐらいの隷属の紋章をつけた女の子を探しているとか?」

 ルーザさんが言った。

 ああ、ついに来たのね。

「結構横暴だから、皆には嫌われているわね。ただ、結構上の方からの命令だから、見つけないわけにもいかなくて、そのまま居ついているの。迷惑な話……。で、美食家気取りだから、あなたの卵に目が行った。そんなところかしら」

「面倒ですね」

「そう、面倒……」

「とりあえず、今日の分の卵を調理場へ置いておきますね」

 そう言うと、調理場に行って卵を三個置いて帰った。


 俺は家に帰ると、皆に木漏れ日亭での顛末を話した。

「まあ、少々の軍隊が来ても、ここの守りはコカトリスの群れと私たちで撃退はできるけど、アイナの件が面倒だわね」

 クリスが言った。

「キングを隷属するときに思ったんだけど、多分隷属の紋章って魔法書士ごとに形があるんだと思うんだ、ってことはアイナに付けた隷属の紋章の形を変えれば、探している奴にはわからないってことにならないだろうか? んークリス来て」

「何?」

 俺の前に座るクリス。

「ちょっと左肩の紋章見せて」

「いいわよ?」

 上着を脱ぎ、タンクトップのような下着が出てくる。肩をむき出し血のように赤くなった隷属の紋章を見せてくれた。

「これがいじれるかなってね」

 クリスの隷属の紋章は、紋章っぽ過ぎて気に入らない。何か別の形にできないかと思っていた。

「ちょっと、いじってみるから変な感じがしたら言ってな」

 俺は、紋章の線をいじる。おっ動くねぇ。

 不要な線を一つにする。できるねぇ。

 意外と簡単。あとは、何の形にしよう……。ふと思い浮かんだのがユニコーン。形はF-20 タイガーシャークの尾翼に付いていた奴だな。

「クリス、大丈夫か?」

「えっうん。くすぐったいけど問題ないわ」

 よし、これで良いかな?

「ユニコーン完成」

「綺麗。これなら人にも見せられるわ。あなたの物だってね」


 じーーーー

「アイナ、これでいい?」

 クリスの左肩のユニコーンを見せると

 コクリ

 と頷いた。

「酷いわね、私は実験台? まあ、前の形よりは何十倍もいいけど」

 愚痴を言うクリス。

 アイナはそそくさと、服を脱ぎ、左肩を出した。

 これを変えれば、アイナの素性がバレることも無いだろう。

「じゃ、始めるぞ?」

 クリスと同じく、紋章をいじり始める。

 納得いく出来になった。

「はい出来上がり」

「カッコいい」

「でもわざと黒くしておくぞ? 俺がアイナを奴隷化したことにしないとな」


「私もです」

「ガントさんの紋章じゃなくなるけどいい?」

 おっと、フィナは言う前から準備してるし。

「はいはい」

 適当には言うが、丁寧に線を作り、ユニコーンの形に仕上げる。

「私もユニコーンが付きました。マサヨシ様、赤く変えられないのですか?」

「赤がいい?」

「はいです」

 色だけ付ければいいのかな? 線の上にクリスと同じ、血のように赤い色を置く感じでいじってみる。できるじゃん。

「ほい、赤いユニコーン出来上がり」

「一緒です」


「だったら私も……」

 目立たないのに赤い顔だとわかるぐらい赤くして、マールが来た。

「へいへい」

 マールの紋章も赤いユニコーンに変更。

「エヘヘ」

 マールは喜んでいた。


さて、後はわざとアイナを見せて、違う娘だと思わせたら終わりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] タイガーシャークにユニコーン エリア88 懐かしいw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ