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引っ越し完了

「さて、とりあえず食材だな」

 アイナナビ、略してアイナビ登場。

 トタトタとアイナが歩き始める。それに付いていく四人。頑固そうな爺さんが椅子に座っている店に着いた。

「おいやん、買い物に来たよ」

「おぉ、嬢ちゃん、生きてたんか?」

 コクリ

「マサヨシに拾ってもらった」

 俺の腕にぶら下がる。

 おっと孫を見る目か。

「で、何が欲しい?」

 俺を見る目は狼だな。

「そうですねお勧めの肉、平原キジとグランドキャトルがあればいいかと。他にもあれば買います。あと野菜が欲しい。それと香辛料。ってところです」

「そうか……時間あるか?」

「はい、時間はあります」

「ちょっと待ってろ」

 爺さんは奥に行く。

「ケーン、ケーン、ケー……」

 リ〇がケ〇シロウを呼ぶような声がしたが、すぐに途絶えた。

 潰した?

「ブモー!! ブモー!! ブモッ……」

 おっ、牛の声も消えた……。

 爺さんが戻ってくる。服を脱ぎながら……って、脱いだ服が血まみれ。鳥のような肉が3羽と、牛のモモ肉を担いでくる。お前はラ〇ボーか? やっぱり潰したのか。アイナ、この爺さんと何があった?

「おう、兄ちゃん、これが平原キジだ。3羽な。、グランドキャトルのモモ肉。あと、フォレストベアの肉もあるが、要るかい?」

「お願いします」

「ん、ちょっと待ってな」

 爺さんが奥に行って戻ってくる。

 えっ、熊の半身?

 頭は無いが着ぐるみ状態のクマの半身が出てきた。これ、100kgぐらいあるんじゃない?

「これは美味いぞ? どこの肉も最高だ。高くなるがいいか?」

「いくらです?」

「金貨10万リル、金貨10枚だな」

「問題ありませんね」


「あとは、野菜と香辛料か。野菜はそこにある奴、香辛料は香草ぐらいしかないがいいか?」

「はい、全部下さい」

「お前、これを全部か?」

「この店の物は新鮮でおいしいと、アイナが言っています。だから、有るだけ買います。アイナ、ここのは良い物なんだろ?」

 コクリ

「おいやんに任せておけば問題ない」

「そういうことなんでお願いします」

「わかった。準備する」

 爺さんは店先に置いてあるものをテキパキと木箱に詰める。10箱ぐらいの量になった。

「これで全部だ、どうやって運ぶ?」

「ああ、運ぶのは簡単です」

 収納カバンを箱に近づけると、木箱や肉は簡単に入る。すべてを収納するのに1分もかからなかった。

「お前、それは……」

「収納カバンです。で、いくらになりますか?」

 軽くスルーする。

「あっああ、20万リルになる」

「わかりました、これで」

 爺さんに金貨20枚を渡した。

「嬢ちゃん、兄ちゃんは優しいか?」

 コクリ

「良かったな」

 爺さんは、アイナを撫でる。年老いてごつごつしている手が、優しくなでる。

 アイナは目をつぶって気持ちよくしていた。

 爺さんが撫で終わると、アイナは爺さんの腰に手を当てヒールを唱えた。

「おぅ、腰の痛みが……無くなった」

「おいやんは腰が痛いって言ってた。今までのお礼」

 爺さんがアイナを見る目が優しい。

「おう、次、店に来るまでは元気にしておく。また買い物に来てくれ」

 コクリ

「嬢ちゃんを頼んだぞ!」

「ああ、任された」

 俺たちは爺さんの店を出た。


 例の扉で牧場へ帰る。扉を出ると既にキングが待っていた。

「クエェ、クエェ?(また増えた、大丈夫?)」

 申し訳なさそうに、俺の前に頭を下げる。

「また増えたのか? まあ、そこら辺は任せるけどこの場所でまだ足りる?」

「クェッ(足りる)」

「餌は? 大丈夫?」

「クエッ(足りる)」

「一応冒険者ギルドのマスターに言ったからこの辺の冒険者はコカトリスを攻撃しないとは思うけど、人には注意して! あと、人に攻撃しないこと。わかった?」

 コクリ

 キングが頷いた。

「ところで、雛が生まれない卵って、一日いくつぐらい産む?」

「コゥーーコケッコケックエ?(んー、一日に五個ぐらい?)」

「一個分けてくれてるけど、それを一日二個にできる?」

「コケッケ(大丈夫)」

「ありがとう。あんまり増やさないようにな」

「コケッココエ(あなたもね)」

 戦友という感じで会話を終わり、キングは去った。


 玄関に向かうと、卵が置いてある。いつも通り収納カバンに入れる。

 フィナが期待をしているのか、尻尾がブンブン動いていた。

「これは、木漏れ日亭に持っていくやつ。毎日卵じゃいかんだろう?」

 シュンとするフィナ。

 玄関を入り、風呂場の前にある洗面台に行く。そして昨日作った銀鏡を取り付けた。

「よし、これで俺んちって感じ」

 勝手に納得。


 ソファーで皆くつろぐ。マールはさっそくお茶の準備を始めた。

 あー、デカいな。これが我が家か。

「今後はどうする?」

 アイナが聞いてきた。

「んーギルドの仕事をこなして過ごす。あとは、魔道具の開発かな?」

 正直ガスコンロ的なものが欲しい。竈に火を起こして楽しみはしたが、毎日それをやれと言われるとちょっと面倒だ。あとは、俺の扉の劣化版。どこにでも行けるドアの劣化版の俺の扉だが、それよりも劣化させ、ある場所だけに通じるような扉を作りたい。そうすれば移動に俺が必要なくなる。分捕ったデカい魔石を魔力の貯蔵タンク的な物にもできないだろうか。


 魔道具のことを考えているとフィナがモジモジと聞いてくる。

「私と一緒に寝てくれるのは?」

「ああ、朝そんなこと言ったな。添い寝でいいんだろ?」

「はいです!」

「二人で寝たい人? 添い寝だぞ? 変な勘違いはしないように」

「ちぇっ」誰か(クリス)が舌打ちしたが

 サッ

 全員の手が挙がった。

「でも、鉢合わせになったら揉めるだろ?」

「ムー」って感じで眉間にしわを寄せて、皆考え出す。


「順番決めない? この前じゃんけんしたでしょ? まあ、最初はフィナってことで……。あっ、ちゃんと一人寝できる日も作ってな。「じゃーんけーん……ぽん」

 一撃でクリスが負けた。クリスはじゃんけんが弱いようだ。再度じゃんけんが始まる。

 結局、フィナ→アイナ→マール→クリス→一人寝→皆寝の周期になった。

「俺も一人でゆっくりしたい時もある、まあ全員で寝る日も作っていいし。今のメンバーで6日周期で回そう」


「フィナ、これでいい?」

「はい、皆と同じです」

 嬉しそうにフィナは言った。

「皆もこれでいい?」

「仕方ないわね」

 仕方ないも何もお前が一番にじゃんけん負けただろ?

「ん、問題ない」

「私はたまに一緒に寝られれば……」

 まあ、おおむね問題ないようだ。

 家のルールが少しずつ構築されていく、一歩一歩……こうして他人が家族になるのかねぇ。


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