追加?
視線を感じた。マールが俺を見ている。
「ん?」
「何で、私を助けたのですか?」
マールは近寄り俺の横に腰掛けた。
「メイドが欲しかったからって言っただろ?」
俺は、手鏡を作りながら話をする。
「もっといいメイドが居たはずです。私みたいなボロボロでなくても」
「んー多分、あの場所に居た人が君じゃなかったとしても、俺はメイドとして雇っていると思う。要は『たまたま』君がそこに居たんだ。メイドができる君が居て俺たちは君を助ける力があった、だから君を助けたんだ。ただ、それだけ。感謝するならメイドのことを教えてくれた人にだね。あとは、君の生き運だろう」
「でも……」
俺は手鏡を作る手を止めた。
「まあ、建前としてはそういう風に言っておこう。要は君が可愛かったんだ。俺は、基本的にこの世界の差別のことなんて知らん。ダークエルフの立場も扱いも知らん。でも、子爵様みたいにこんな可愛い子を痛めつけるよりも、俺が守れるなら守って、メイドとしてフォローしてもらえるほうが楽しいって思ったわけだ。下心ありありで申し訳ない。俺は、マールが居てくれて助かってるよ。わからないことをフォローしてくれる。逆にマールはもっと俺に頼ってもいいんだぞ? さっき鏡が欲しいって言ったようにね」
こっぱずかしいことを言ってしまったので、マールの顔が見れない。そこで、再度手鏡を作り始める。
「俺は、今のマールしか知らないから言うが、俺には申し訳ないぐらいの良いメイドだぞ? だから、今後は『何で?』とか言ってほしくないな。『私なんだから当然!』ぐらいに胸張って生きてほしい。おっと、こんなもんかな?」
手鏡が一つ完成し、ベッドの上に置く。
マールがもたれてきた。
「ずるいです」
「んー歳をとると、ずるくなるみたいだね。一応、精神年齢はそこそこいってるから……あっ、人基準だけどね」
俺は、もたれてきたマールの頭を撫でる。
「よくお父さんに頭を撫でてもらいました」
「アイナ曰く『お父さん』らしい」
さて、残り二つ作らねば、
「言い得てますね。マサヨシ様と居ると安心できる。私も一緒に居ていいですか?」
「奴隷にした時点からそのつもりだし、それでいいんでしょ? お三方」
俺は三人のほうを見る。
「バレてた」
「バレてます」
「バレてる」
「「「えへへへへ」」」
三人とも頭をかく。
「『えへへへへ』じゃないよ、ずっと覗いてただろ?」
「えっ、今の全部見てたんですか?」
マールが赤くなる。
「だって、マールのことどうするのか気になるでしょ?」
「気になります」
「気になる」
「とりあえず、マールの『父さん』ってことで落ち着いたから」
「えっ、でっできれば……あのぉ……皆みたいなほうが……」
マールが真っ赤になって俺を見る。
「「「だってさ?」」」
三人に揶揄われる。
俺は頭を抱えた。
三人の視線が手鏡に行く。
「ちょっと待ってな。すぐ作るから」
さっさと手鏡を二つ作る。
「ほい、女の子は手鏡があるといいってマールが言ってたから……使ってくれ」
特製の銀鏡である。
「マサヨシにしては気が利くわね」
「そうです。気が利きます」
「気が利く」
余計なことを言うので
「返せ!」
と俺が言うと、
「「「ごめんなさい」」」と三人は謝った。
謝るなら言わなきゃいいのに。
俺が一番に風呂に入り、アイナとマール、クリスとフィナで風呂に入った。
俺がアイナの髪を乾かしていると、
「私もしてもらっていいですか?」
マールが近寄ってきた。灰色の肌に黒い下着……誰だ選んだの? つけてないみたいじゃないか。
「なぜに黒い下着?」
「お店のおばさんが、一枚ぐらいはこういう下着も必要だと……」
「あのおばちゃん、余計なことを。つか、何で勝負下着を今着る?」
「だって、マサヨシ様に見てもらいたいから……」
「マールはアイナじゃなくマサヨシを狙うようになった。私は安心」
「俺は、面倒だよ。はい、アイナ。髪乾いたから纏めてやる。いつものでいいか?」
コクリ
アイナは頷く。そうして、いつものポニーテールでアイナの髪をまとめた。
「まあ、皆にやってることだから、おいで」
俺はマールの髪を梳く。
「あっ、んぅ気持ちいい」
んー妖しい声を出してほしくない。しかし、髪を乾かしている間にマールは寝てしまった。アイナもコックリコックリしている。
俺はマールを抱き上げ、アイナを連れて寝室に入って寝かせた。アイナも秒殺で寝てしまった。
次に出てきたフィナとクリスの髪を乾かす。それぞれに髪をまとめると「おやすみなさい」と言って、二人は寝室に行った。
「久々の一人寝」って言って朝になったらだれか増えてるパターンが多い。まあ、今のうちに寝ておこう。
すると、やはり誰か近寄る気配がした。
「抱っこしてもらえませんか?」
「マール?」
「抱っこ……してもらえませんか?」
「抱いて寝ろってこと?」
コクリ
「寝られないでいたら、アイナ様に言われました。マサヨシなら優しくしてくれるって」
アイナめ……。
「仕方ない、おいで」
俺の横にマールが寝る。俺に抱きついてきた。俺は抱き枕らしい。んー感触がいいものが当たって困る。何が不安だったのかはわからないが、安心したのかくーくーと寝息が聞こえてきた。
さて、ソファーで寝るかな。
体を抜いて移動しようとしたが、動くたびにキュッと力を入れる。結局、諦めて添い寝した。
添い寝って、結構寝られないのよ……。




