情けねぇ
俺はデカい寝室にある椅子に腰かけていた。何とか我慢はしているが、抱き付かれると、非常にまずい。
四人はスースーという呼吸とともに寝ているようだった。それぞれの胸の大きさでゆれている。
そういえば魔石を分捕ったな。魔石ってどういう感じなんだろう。
カバンを漁り、魔石が入った箱を出す。中身を見るとスイカ大の魔石が一つと、マンゴー大の魔石が五個、そして、小さな魔石が五十四個入っていた。
魔石ってこんなものか。小指の先程度の魔石を取り出した。これに、魔法を付与してやれば、魔道具として使えるようになるわけね。
何の魔法? んー、飲み物の冷却にしてみようか。温度は四℃? 液体と接触している時に発動。うぉりゃ!
ちょっと気合を入れて、魔石に魔力? というか、魔力に乗せてプログラムを注入でいいのか?
銀食器のコップに水を汲み、リビングの机へ。コップの中へ魔石を沈める。
しばらくすると、コップが結露し始めた。
「おっと、成功?」
実際に水を飲んでみる。
ガリッ……魔石噛んだ……。
こりゃいかん。呑み込んだら危険。子供なんか喉詰める。何とか魔石って加工できんのかね。
魔石をもう一個、サイズは前のとほぼ同じなものを、新しく出す。
これが輪っかにならないかな? コップの底に丁度合うような輪っかにできれば、底に取り付けられるかな?
一部切断して、アルファベットCの形にしておけば、開く力で、固定できるんじゃね?
魔石に魔力を流す。今回は魔石が柔らかくなるイメージ。
おっと、粘土状になった。
「ふんっふふんふふ、ふんっふふんふふ、ふふふふふーん♪ ふんっふふんふふ、ふんっふふんふふ、ふふふふふーん♪ ふんふふんふふんー♪」
ゴ〇太君が懐かしい。工作教育番組のテーマソングを鼻唄を歌いつつ、魔石を細く伸ばし、輪っかを作る。その輪っかの中心角で三十度程度の円周を切り取る感じでC型の魔石を製作。今度は、魔石が固くなるイメージで魔力を使い硬化させた。
おっ、上手くコップの底より少し大きい感じ? 魔力に乗せてプログラムを注入。
コップの底に押し込んで固定してOK?
ひっくりかえしても……、魔石は落ちないね。
さて、水を汲んでと……。
ちゃんと、冷えるかな?
おぉ、冷える冷える。表面が結露した。
俺は、製作した冷えるコップを持ち
「テレレレッテテー。冷えるコップぅ。
集中していたためか、皆が起きているのに気付かなかった
「『テレレレッテテー』は要らないと思うわよ?」
「あれ? クリス起きてたの?」
かなり恥ずかしい。
「何してたの?」
「冷えるコップを作ってた。ぬるい水やエールは嫌だろ?」
「確かに冷えたものを飲むようになってから、ぬるいのは飲めない」
そうクリスは言った。
「後は、風呂用の魔石かなぁ」
俺はマンゴー大の魔石を取り出し、四十一度の湯が出るというのをプログラムし魔力とともに注入した。俺が風呂に行こうとすると、クリスも付いてくる。
「実験だから、寝てても良いんだぞ?」
「今だったら、マサヨシを独り占めできるでしょ」
してやったりの顔をしているクリス。まあ、付いてきてもこなくてもいいんだけどね。
俺は、風呂に魔石を取り付け、魔力を流す。すると適温な湯が出てきて一杯になった。
「これで、風呂も使えるな」
これで、とりあえず住む家としては使えるようになった。
俺がベッドに戻ろうとすると、
「ダメ!行ったらダメ!! 抜け駆けできないじゃない」
全裸でクリスが風呂に入ってきた。
「抜け駆けしたら、揉めるだろ?」
「大丈夫、皆で話してる。今日は私の番」
おお、知らない間に順番決まってたのか。俺って景品?
「でも、相手しないぞ?」
「何で? キスしてくれたじゃない?」
「あれは、愛しい娘って感じかな?」
「私は女として見てほしいの!」
「正直、女として見たらクリスは魅力的だ。我慢できなくなりそうな時もある。でも、まだ、手を出せない」
「前の奥さん?」
「そうだなぁ、忘れていないんだ。覚えているからクリスに手を出す勢いが無いんだ。吹っ切れてないってのが本音かな。多分俺は吹っ切れるまでどの娘にも手は出さないと思う。俺の中では妻ってのは大きいんだよ、正直好きだったんだ。申し訳ないがどこかで吹っ切れるまでは、皆を妻にするのは無理なんだと思う」
「私たちに待てってこと?」
「俺の我儘、妻のことが吹っ切れるまで待ってほしい。女々しいと言われても仕方ないが、それでも俺の妻はまだあいつなんだ」
「いつまでも待てということ?」
「いつまでもじゃないよ、どこかで吹っ切れると思う。都合のいい言い方だけどな」
「私は長命なエルフだから待てるかもしれないけど、あの子たちはどうするの?」
「わからない、嫌われるかも」
「嫌うはずがない! 私がそうなんだから、あの子たちもそう」
クリスに言われ、ぐうの音も言えなくなった。俺は皆に甘えている。彼女たちは俺に愛情をぶつけているのに、俺は嫁にこだわって何もしない。俺はどうすればいいのか……。
「私は待ちます」
フィナが、風呂に入ってきた。
「待つ。どうせマサヨシは四年は私に手を出さない。それまでに吹っ切れればいい」
アイナも来た。
「はいはい、お付き合いします」
付き合いかよマールは、
「俺が本当にお前らを娘としてでなく女として好きだと言えるまで待ってもらおう。俺が吹っ切れたら、お前ら足腰経たなくなるぐらいにしてやるからな! 覚悟しておけ!」
情けない俺が奮い立つように言うと、
「そこまでしてもらえるなら、私は待つわよ? 足腰経たないなんて、経験したことないんだから」
「獣人族の女は足腰が強いんです。マサヨシ様こそ、足腰立たないようにならないでくださいね」
「望むところ」
んーアイナはまだだぞ?
「私は房中術も学んでおります。骨抜きにされるのはマサヨシ様の方かも知れませんね」
結局四人とも奮い立ったか、それでも負けないようにする。待たせたからにはね。




