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オムレツ

 次の日になり俺は仮設ベッドで身を起こす。

 久々の一人寝だ。人の温かさは嬉しくもあり面倒でもある。広いベッドならいいが、シングルじゃちょっときつい……ん?

「アイナ、なんでここに居る?」

「寂しかった」

 俺の足元で毛布を頭にかぶり、座って苦笑いをしているアイナが居た。

「で、潜り込んだ?」

 コクリ

「マールは?」

「おいてきた」

 ドタドタとマールが飛び出してくる。

「アイナ様が居ません」

「おぉ、アイナならここに居るぞ?」

「何でこちらに?」

「マサヨシと寝たかった」

 ん?

「私という者がありながら。マサヨシ様が良いので?」

「そう、マサヨシのほうが良い」

「マサヨシ様! 私のアイナ様は譲りません」

 どういうこと?

「マサヨシ、マールが鬱陶しい。治療してから付きまとう」

「好かれているならいいんじゃない?」

「結構ウザい」

 アイナさん拒否反応。

「なんで、こんなに私は想っているのに」

 マールがアイナにラブコール?

「確かにウザいな」

「アイナ様ぁーー」

 絡み過ぎると面倒そうなので放っておくことにした。


 クリスもフィナも起きてはいなかったが、俺は一階に降りる。カウンターに行くとルーザさんが居た。

「おはようございます。ルーザさん、ちょっとお願いがあるのですが」

「はい、どのような?」

「ちょっと厨房を貸してもらえませんか? 邪魔にならなければですが」

「厨房は今、下準備の最中なので少々融通は利きますが何をなさるので?」

 ルーザさんは首を傾げ俺に聞いてきた。

「昨日、コカトリスの卵が手に入りまして、それで卵料理をしようかと……」

「コカトリスの卵ですか? それは珍しい。厨房に連絡してきますのでしばらくお待ちいただけますか?」

「わかりました。無理ならいいので」

「いいえ、無理やりにでも使えるようにします!」

 ルーザさん気合入ってるな。


 しばらくすると、厨房からルーザさんが戻ってきた。

「厨房を空けましたのでどうぞ使ってください」

 俺は、ルーザさんに促され厨房に入った。

 フライパンが吊るされ、鍋とボールが重なり、大きなまな板、中華包丁のような大きな包丁があった。菜箸は無いか……。大きめのフォークで代用するか。

 俺は、大きめのボールを借り卵を割る。フォークで白身を切るようにかき混ぜた。塩は有るな……でもちょっとした小石ぐらいだ。おれの握力で無理やり粉状にして入れた。コショウは無いな。香草っぽいのがある。んー、入れたほうが良いかやめたほうが良いか? やめておくか。あとでパラパラってかける方向で……。

 フライパンに軽めの油(料理人に聞いたら、これでいんじゃね?程度の物)を入れ熱する。その中に卵液を入れる。卵を回し半熟程度になったところでトントンとフライパンの端を使って卵の形を整えた。

 プレーンオムレツ、こっちバージョン出来上がりか……。ちょっと味見。フォークでオムレツを切ると中から半熟の卵が出てきた。一口食べると……おぉ、卵の味が濃い。これがコカトリスの卵の味なのか、確かに鶏の卵より美味い。塩味も丁度。香草を振りかけて食べてみたが、香草の苦みがアクセントになって美味かった。でも、ケチャップが欲しいかな。


 じーーー

 誰かの視線を感じる。視線の元にはルーザさん? フォークを咥えてますね……。

「ルーザさん、食べてみます?」

 ルーザさんの顔が笑顔になる。

「えっ、食べていいんですか? 本当にいいんですね?」

「食べたかったんでしょ?」

 あそこまで食べたいアピールされてはなぁ。

「えっ、まあ、一度食べてみたいとは思っていましたが……なかなか手に入るものではないので……」

「残り物ですが、食べてください」

 俺は、皿に残っていた分を全部ルーザさんに渡した。

 ルーザさんはフォークで切り食べる。

「美味しい、えっ焼いただけなのにこんなに。塩加減が絶妙、香草が卵の味を引き立てる」

 あっという間にルーザさんの皿からオムレツが無くなってしまった。

 俺は残りの卵液で八つのプレーンオムレツを作り、五つには野菜を盛って我々の分とした。使った物の片づけも終える。

「ルーザさん、上から女性陣を連れてくるので、パンとこの料理とスープを出してもらえますか? 残った三つについては、ルーザさんが食べるも良し、お客に出すも良し、お任せします」

「えっ、あと三つも? 太ってしまいます」

 ありゃ、食べる気満々だな。

 そんなルーザさんを残して俺は部屋に戻った。


 部屋に帰ると、リビングにはアイナとマールは居たが、クリスとフィナは居なかった。

「アイナ、あいつら起きてないのか?」

 コクリ

「仕方ないな」

 俺は二人の寝室の扉を開け、

「起きろ! 飯だ!」

 と、大きめの声で起こしたが、

「んっんー、もう少し……」

「もうちょっと寝たいのですぅ」

 結局二人は起きやがらない。

「せっかく俺がコカトリスの卵を料理したのに。アイナとマールで食ってしまうか」

「えっ」

「コカトリス?」

「眠いんならいいよ。せっかく向こうの世界の料理作ったが三人で食べるよ、冷えたら不味くなる。寝る方がいいんだろ? じゃあね」

 そう言うと、俺は二人の寝室を出た。背後からドタドタと音がしたが、放っておく。

「さあ、二人とも朝飯だ。下に降りよう」

 そして、アイナとマールと一緒に食堂へ行った。


 テーブルの席につき朝食が運ばれてくる。とりあえず、三つのセットがきた。パンと俺が作ったオムレツとスープ。

「この卵料理は俺が作ったんだ、コカトリスの卵で作っているから美味いぞ」

 俺は「いただきます」を言うと、アイナ、マールともに朝食を食べ始めた。

「美味しい、今までで一番」

 アイナがそう言ってくれた。

「美味しいです。マサヨシ様は、料理もされるので?」

 マールが聞いてきたので、

「独り暮らしだったら、身に付いただけだよ」

 そう答えた。実際、必要に迫られただけだしな。


 二、三分しただろうか。クリスとフィナが来た。クリスもフィナも寝癖がついたままだ。よほど急いだのだろう。

「朝食、要らないのかと思った」

 追い討ちをかける。

「ゴメン、今度からちゃんと起きるから、許して」

「マサヨシ様が作ったコカトリスの卵料理を食べないわけにはいきません。許してください」

 そう言っているうちにルーザさんが苦笑いしながら二人分のセットを持ってきた。口元に卵がついているのはご愛敬。

「美味いぞ、食べてみろ」

 俺が作ったオムレツを食べ、

「あーん、とろふわだわ。味もいい」

「塩味が絶妙です。いくらでも食べられそう」

 ここまで絶賛されると、俺も気分が良い。たまには、向こうの料理を出すのもいいかもな……そう思った。



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― 新着の感想 ―
[一言] 屋敷買ったくせに何故宿に?
2019/11/10 13:31 退会済み
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