俺の事とココの事
食事を終え五人で部屋に戻ると、簡易のベッドがリビングに置いてあった。ルーザさんの指示で置いてくれたのだろう、助かる。
女性陣はソファーに座り、俺は簡易ベッドに腰かけた。
「さてと、マール」
「はい、マサヨシ様」
マールが俺の方を向く。
「俺が肉の名前を言えなかった理由はな、別の世界から来たからだ」
「へっ、またまたぁ、私を騙そうだなんてひどいです……よね?」
残りの三人が俺の意見を肯定しているので、マールが焦り始める。
「えっ、本当に別の世界から来たのですか?」
「そう、俺は別の世界で子供を助けた時に馬車に轢かれた。でもなんでかこっちに飛ばされてきた。あと、こっちでは二十二歳だけど、前の世界では四十五歳だったから。結構オッサンだ」
「訳が分かりませんね」
「その言葉、俺が言いたい。まあ、そういうことなんで、俺は一般常識が少ない。マールもフォローしてくれると助かる」
「はい、わかりました。お任せください」
マールはドンと胸を叩いた。
「さて、そういうわけで今更なんだが、ここってなんて国?」
皆に聞いた。
「オースプリング王国ね。現在マティアス=オースプリング王が統治している」
「王が任命した貴族による統治?」
「そうなるわね」
「王都は?」
「オウル」
「ドロアーテの統治者は?」
「ベルマン辺境伯、ドロアーテは辺境伯領の領都になる」
「とりあえず、国のことはここまでかな。必要になったら聞くからよろしく」
ほぼ、クリスが答えてくれた。お嬢様の知識は相当らしい。
「次に、四季はあるのか?」
「この辺りはあるわよ? 書庫で見たことがあるけど砂漠だけの所や雪だらけの所もあるらしいわ」
「ふむ、気候帯がいろいろあるのか、そこら辺は俺の世界と変わらないな」
「ちなみに、今は?何の季節?」
「夏が終わって秋になった感じです。ご飯が美味しい季節です」
フィナが答える。
「フィナ、食欲の秋とな?」
「はい、いつもは粗末な食事ですが、秋になると木の実や獣の肉が並びます」
あぁ、そういうこと。食べる物が増えるってことか。
「私も秋は好き。食べるものが多い。野草や残飯とかも増える。でも冬が嫌い。食べ物も少ない。暖かい場所を探してさまよう。止まったら死ぬから。そういう子を見てきたから。一晩中歩くこともあった」
アイナの頭を撫でると、目を細めた。
「でも、私は今幸せ」
アイナは俺をじっと見る。俺は笑顔を返す。
「さて、時間なんだが。イマイチこっちの時間がわからない。せめて、何か参考になるようなものは無いのか?」
「うーん、基本は太陽の角度で見ているわね。働くのも日が出てしばらくしてから日が沈むまでというのが多いわ。大きな教会があるような街では鐘を鳴らすこともあるけど、ドロアーテでは、聞かないから、多分鐘も無いのでしょうね」
「時計って無いの?」
「時計は国が管理してると思うわ。だから、一番正確な時間がわかるのは王都なのかもしれない」
「これ知ってる?」
再度登場Gのチタンの奴だ。
「これは?」
「腕時計。腕に巻いて使う」
「えっ、これが時計? 国で管理しているものは、すごく大きい部屋に入っている」
そのサイズなら水時計かな? まあ、魔法的なものもあるかもしれない。
「俺の世界では時間の正確さが重要だったから時計が発達したんだ。これがその一つ。この世界では時間の正確さがあまり重要視されていないみたいだね。正午がわかれば十分かな?」
「あとは、暦についてだな。クリス、一年は何日?」
「一年は、三百六十日よ? それが十二の月に分かれているの」
「大体、俺の世界と一緒だな。一月何日?」
「三十日ね」
「三十日はいくつかに分かれてる?」
「質問の答えになってるかわからないけど、一月は十日ずつに分かれる。その最初の日と六日目の日、十日目の日が、主な休み。十日のうち、三日が休みになるわけね。まあ、業種によっても休みは違うから、基本の流れで覚えてて。ちなみに冒険者ギルドは無休だから。いつでも行っていい」
「わかった。それと、暦を調整するために日を追加したり、月を追加したりすることある?」
「何? そんなことするの? ずっと三百六十日でやってるけど」
「いや、無いならいい」
今の話で考えると、俺の腕時計の日付表示、曜日表示は使えないか。まあ、重要なことじゃないな。
「今は何月何日?」
「九月十七日ね」
言い方は一緒か。
「最後は、種族について。クリスみたいなエルフ、マールのようなダークエルフ、フィナみたいな獣人、ガントさんみたいなドワーフ、俺やアイナの人族、他にどんな種族が?」
「んー魔族、龍族とかも居るわよ? 全部把握している人は居ないと思う。混血も要るしね。私とマサヨシの子供だったら、ハーフエルフね」
「魔族には魔王が居るとか? 人と敵対しているとか? 世界を亡ぼすとか?」
「魔王? 魔族の王としては居るけど、敵対はしてないわよ? 世界を亡ぼすとか聞いたことないわね。あと、龍族はドラゴンが人化した者のことを言うの。数が少ないから、見ることは無いでしょうね」
「ふむ、色々ありがとな。今んとこそんなもんだと思う。何か疑問あったら教えてくれると助かるよ」
「良いわよ」
「喜んで!」
コクリ
「はい!」




