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一揉め

「さあ、ガントさん店に帰ろう」

 そう言うと、俺は例の扉を取り出した。それを見て

「お前、何だそのカバン! そしてその扉!」

 唾を飛ばしながらガントさんが聞いてきた。

「これは、収納量が無限っぽいのカバン。『無限っぽい』っていうのは、確認できていないから、有限かも。これは一度行った場所に行ける扉。『一度行けば』って制約がある。俺専用の魔道具ですね、多分他の人には使えません」

「まさか、王都まで行けるとか?」

「それは無理、一度も行ったことがないから」

「そこまで便利ではないのか」

「まあ、完璧な魔道具ではないかな? でも便利です」

「そのカバンだけでも俺が使えたら、商売がガラッと変わりそうだがな。マサヨシしか使えないんじゃ仕方ないか……」

 残念そうにするガントさん。

「まあ、そういうことですね」


 俺とガントさんは店に戻った。

「ガントさん教育ありがとうございました」

 俺はガントさんに頭を下げた。

「教育って言うほどのものじゃないがね。お前ならそのうち知りそうだ」

「『知っている』のと『知るかもしれない』じゃ大きな差だと思う。だから、ガントさんに感謝だね」

 照れくさそうなガントさん。

「お前なら大丈夫だろう。あの子たちを大切にしてやってくれ」

「はい、頑張ります」

 そう言うと、俺はガントさんの店を出た。


 久しぶりの一人歩きと言っても、一昨日ぶりぐらいか。出店を見て回る。ふと気づくと赤い光点が俺の両サイドに来た。どうするつもりか? 

「お前がマサヨシか? ちょっと聞きたいことがある」

 両腕を掴むと屈強そうな男、オッサンだな、が俺に言った。そして人気のない所へ連れていかれる。

「何でしょうか? 心当たりは無いんですが」

 有りすぎて困る。

「お前が連れているあのエルフは、お前の奴隷か?」

 脅してきているのかな? 

「手に入れたも何も、助けて紋章上書きしたら俺の奴隷になりました。だってあのまま放っておいたら、ゴブリンに殺されてましたよ?」

「とにかくお前の奴隷だな?」

「俺のって言えば俺のでしょう」

「ちょっと来い!」

 めんどくさいなぁ、でも何とかしとかないとクリスのことだしなぁ。

 オッサン二人に腕を持たれ引きずられていくメタボ、悲壮感しかないね。「何やらかしたんだろう?」って感じで周りからの視線が痛い。


 しばらく街中を連れまわされた後、豪華な屋敷に到着した。そして、俺を上回るデブに遭遇する。

 俺は後ろ手に縛られ、膝立ちにされた。

「お前か! マサヨシというのは! 儂のエルフを横取りしおって!」

 クリスの名前も知らないらしい。

「俺が言うのもなんだが、このデブ何者?」

 そう言うと、両サイドに居たオッサン二人が俺を殴った。痛いのは痛い。別に我慢できる程度だが。

「そこに居る男二人は冒険者ランクA、更にSTRがAの強者よ、痛かろう」

 しかし、オッサン二人は違和感があったのか、しきりに手を気にしている。

「儂の名はゲルトだ、ゲルト様と呼べばいい」

 アホだな、なんで「様」付けで呼ばんといかん。

「あのエルフを得るのにいくらかかったと思う? 白金貨五枚だぞ? エルフの冒険者を罠に入れ、そして儂のために教育した」

「エルフとそんなにやりたかった?」

「エルフは金持ちのステータスだ。持ってるだけで尊敬される」

 そんなこと、ガントさんに聞いたな。興奮しているのか息が荒い。「フーフー」言っている。汗もぐっしょりだ。身につまされるな。

「あんたがエルフを買うことは確定していたわけ?」

「そうだ、奴隷市で見世物にした後、儂が買う予定になっていた」

「それ、俺に言っていいの? 他の人に言ってしまうかも」

「知られたとしても、お前なんぞこの後いたぶり殺してやるわ!」

 ああ、一応真相を言って怯えさせて殺すパターン? 


「おい! お前たちやれ!」

 オッサンたちが俺を蹴りまくる。確かに痛い、でも別にそれだけだ。皮膚が裂けたり、変色したりはしない。オッサンたちは頑張って蹴りまくる。しかし、しばらくすると疲れが見えてきた。

「おいオッサン、もっと蹴らないと傷もついてないぞ? 頑張れ頑張れ!」

 オッサンたちは必死だ、剣に持ち替え俺を攻撃する。なりふり構えなくなったのか? ちょっと痛みが増えたかな? 皮膚には異常がない。

「お前たち、無抵抗の物に傷もつけられないのか!!」

 次はゲルドが蹴ってきた。

「お前の方が弱いぞ? 大丈夫か? 俺を殺すんだろ?」

 頑張って蹴るのはいいんだが、俺の体に汗がかかる。正直嫌だ。

「もういい? 俺帰りたいんだけど」

 俺は縛られていたロープを引きちぎり立ち上がる。オッサン二人とデブは(俺はメタボな)唖然としていた。

「お前、知らないかもしれないけど、あのエルフどっかの貴族だぞ? お前が言ったことを報告したらどうなるだろうなぁ? ゲルドさん追い回されるかなぁ? アサシンとか派遣されたり……大丈夫かなぁ? そこの二人もこのゲルドさんの仲間なんだろ? 生き残れるかな? というか、俺殴られたり蹴られたりしたから暴れていいよね?」

 俺はAGIの恩恵を使い素早く移動、オッサンたちは反応もできない。オッサンたちにデコピンを入れると二人は縦に回って倒れた。


 その後殺気をゲルドに当てる。ああ、これがガグブル。そのまんまか。

「おっお前、何が欲しい。何でもやる。儂ができることなら何でも。だから許せ!」

「許せ? 人に頼むときは『許せ!』だったか?」

「許してください」

 ゲルドは頭を床に擦り付け土下座する。

「許すというのはどういう条件? 生きていればいい、商売が続けられればいい、何でもできる、色々あるだろう?」

「できればなっ……」

「何でもできるは無いだろう?」

 俺は殺気をきつくする。

「だったら、商売が続けられるというので……」

「商売が続けられればいいんだな?」

「はい……」

「お前、魔石持ってないか?」

「取り扱っている物はあります」

「それを貰えるか?」

「はい、それだけで?」

「いや、もう一つある。お前が嘘をついたら電撃が走る魔法をかける。要は嘘をつかなければいい」

 お笑い芸人が罰ゲームに着ける、筋肉を強化するパッドをイメージしゲルドに魔法をかけた。

「試すぞ? 常に『はい』で答えろ」

 そう言うと質問を始める。

「お前は商人だな?」

「はい」

 当然ビリビリは来ない。

「お前はエルフを無理やり奴隷にした」

 ゲルドは苦い顔をしたが諦めたように、

「はい」

 と答えた。

「お前は女だ」

「はい」

 まあ、ゲルドは男なので嘘判定。最強レベルのビリビリがゲルドの体を走り、

「ギャーー」

 ゲルドの声が響く。

「まあ、こんな感じで嘘をつくと電撃が走る。嘘をつかないようにね。テスト終わり! それじゃ魔石頂戴。もらって帰るから」

 俺はゲルドに案内され倉庫のようなところに出た。

「ココに魔石があるので好きなだけ持っていってください」

 電撃が走らないところを見ると、もうあきらめているのか。

「いっちゃん良いのは? これ?」

 俺は大きめの木箱を指差すと、

「いや、それになります」

 ゲルドが別の箱を指差した瞬間、

「ギャーー」

 とゲルドが身もだえた。

「だから、嘘はつけないんだって。これだろ?」

 俺はさっきの箱を指す。

「はい」

 ゲルドは渋々答えた。

「じゃ、これだけ貰ってくね。もう君と会いたくないからエルフに手を出さないでくれると助かる。じゃあね」

 俺はそう言うと魔石の木箱を持ってゲルドの屋敷を出ていった。


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[一言] 「そこに居る男二人は冒険者ランクA、更にSTRがAの強者よ、痛かろう」  しかし、オッサン二人は違和感があったのか、しきりにに手を気にしている。 しきりにに手を→しきりに手を
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