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目が覚めて

 朝になったようだ、目をつぶったままだが、明るく感じる。さて、起きるかな……と思ってソファーで伸びをしようとしたとき、右腕に抵抗があった。そういえば、ソファーで寝たんだな。狭かったせいか、体がガチガチだ。


 あれ? 

 視線を感じる。目を開け、周りを見ると、フィナがフルフルと手を握りしめこっちを見ていた。

「どうした?」

 俺が尋ねると? 

「どうしたも、こうしたもありません。ひどいです!  クリスさん抜け駆けです!  マサヨシ様!  私も腕枕してほしいです!」

 フィナも腕枕をしてほしかったようだ。


「うるさい」

 ぼそりと言いながら、扉が開き枕を抱いてアイナが起きてくる。

「だって、クリスさんが腕枕されているんですよ?」

「クリスはマサヨシの妻。たまたまクリスだっただけ。私もフィナもマサヨシの妻、順番は必ず来る。フィナだけが抜け駆けもある」

「私だけも……」

 フィナ、何を想像している? 恍惚とした表情で斜め上を見ている。


「フィナは、マサヨシが信じられない?」

「えっ、そういうわけでは」

「一番じゃないとダメ?」

「一番のほうが嬉しいけど、一番じゃないといけないってわけでは……」

 フィナの尻尾が垂れ下がる。

「だったら、ワーワー言わない」

「はい、すみません」

 それにしても、フィナを黙らせるアイナもすげー。自分が話題で、こんだけ騒がしくても寝ているクリスもすげー。


 すると、つかつかとアイナが俺の前に来た。

「クリスと何があったのかは知らない。でも私は信じてる。家がなく震えながら夜を明かす生活や泥だらけの野菜や腐りかけたパンを食べる生活から救ってくれたマサヨシを信じてる」

「おっおう」

 アイナの勢いに負ける。

「だから、私を一番にお嫁さんにする」

「おうっ?」

 ん? 会話の流れからして、アイナは納得してたんじゃないの? 

 不意打ちに戸惑う。

「アイナ、それとこれとは違うだろ!」

「私が一番です!」

 フィナも盛り返してくる。訳わからん。


「ん? ん? どうしたの?」

 さすがにうるさかったのか、クリスが目を覚ました。

 三人がクリスを見る。話に乗り遅れた奴一名……。

「なんなのよ!  教えなさいよ!」

 また面倒な。


「あのあと、腕枕したまま寝たでしょ」

「あー、そういや、キスして、話して、腕枕して寝たわね」

「「キスまで……」」

 あれ、フィナとアイナの後ろに、なにかオーラが……。

 クリスが、ハッとした顔をして付け加える。

「ねえねえ、二人とも、マサヨシって、意外と包容力有るわよ」

 揉めているのに気づいたのだろう、クリスのやつニヤニヤしてやがる。

 おっと、フィナとアイナのオーラが大きくなったような気がする。火に油を注いでどうする! 


「だから、あなたたちも腕枕してもらいなさい。キス付きでね」

 ふっとオーラが収まる。

「良いんでしょ?」

 クリスが、俺の目を見て念を押す。

 すでに俺の意見は無い。

「あっああ……俺は問題ないが……」

「二人とも良かったわね」

「「はい!」」

 フィナとアイナの二人が、俺の方を見てる。何を期待している? 

 まあ、俺はなんか腑に落ちないが、揉めてたのが収まったので、良しとした。

 この世界でも多分尻に敷かれるんだろうな。


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