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駐屯地

「んー、オースプリング王国が俺の周りにプレッシャー賭けてきて鬱陶しいんだよなぁ。こっちも何かやってみようか……」

 そう言ってマティアスと話していると、

「兵を進ませればいいんだよ。

 場所を作って、そこに兵を進ませればいい。

 できればベルマン辺境伯やオングストレーム侯爵の兵士も混ぜてな。

 そうすれば何か起こるさ」

 オチを知ったような言い方。


 俺はさっそく兵を進ませる準備をすることにした。

 オングストレーム侯爵の所に行き、

「駐屯地として領地の境界付近の土地を使わせてもらえないだろうか?

 数は求めない、五十でも百でもいい糧秣などを負担するので、兵士を出して欲しい」

 と頼むと、オングストレーム侯爵もわかっているのか、

「畏まりました。

 街道沿いの土地は元々荒れ地です。どうぞお使いください

 兵は百ほどこちらで準備します」

 との事。


 ふむ……。


 次にミスラの所に行った。

 執務室の椅子に座るミスラ。

 俺はその机の前で、

「……という訳で、こちらの兵の一部をオングストレーム侯爵領に駐屯させたいんだ」

 と言うと、

「そうか……。まあダンジョン街道もあるし糧秣の心配はないだろう」

 ミスラは頷く。

「まあ、戦時用に作った駐屯地から倉庫とか排出するから、その辺は問題ないだろうな。

 それにしても、兵を進ませる意味は何なんだろう」

 俺が呟くとミスラがニヤリと笑って、

「そりゃ、オースプリング王国へ軍事的圧力をかけるためだろ?

 地方の雄と言われたベルマン辺境伯。老虎オングストレーム侯爵と戦をして、ほぼ無傷で勝った軍団が前進してくるんだ。それもオングストレーム侯爵の領土の境界まで……。境界が接している貴族はどう思うだろうな?」

 と言う。

「ん? どう思う?」

「わからないか?

 マティアス様が言っていただろう? 貴族は強い者につくんだ……自分の家を存続させるためにな。

 バルデンに泣き付いて何とかしてもらえるのならいいが……できないとわかったら……」

 皆まで言わず、俺に答えを出さそうとするミスラ。

「俺の方につくって訳か」

 正解とでもいうように、ミスラは頷いた。

「そう、街道沿いに兵を前進させれば、お前は戦わずして王都まで行くような気がする。

 まあ、お前がそうするならだが……」

 チラチラと俺を見るミスラが居た。


 ん? やれってこと?


「後からこっちについた者なんて、信用できないだろ?」

 俺が聞くと、

「ベルマン辺境伯やオングストレーム侯爵のようにお前の怖さを知っている者が近くにいる。それが壁になる。

 考えてもみろ、もし何かあっても、イングリッド殿下の父上のランヴァルド王、クラーラ殿下の父上のバルトール王、クリスティーナ殿下の父上メイナード王が背後に居る。

 裏切られたとしても滅多なことは無いさ」

 と笑う。そして、

「誰が兵を率いる?」

 と聞いてきた。

「俺とラウラかな。まあ、俺の指揮能力なんてたかが知れてるだろうし、実際に兵を率いるのはラウラになると思う」

「お前が出るのか! なら、数は少なくていい。こちらの負担も少なくなる。

 ラウラの馬上筒の部隊と歩兵五百ほどでいいだろう。あと、テロフのコカトリスとミケのワイバーン」 

 盛大な割引。


「リードラさんは?」

 ミスラが更に聞く。

「来てくれるとは思うが……」

「なら、ミケだけじゃなくてリードラさんのワイバーン部隊。少数精鋭で魔物込みの混成部隊だな。駐屯地にたむろって居るワイバーンなんて見たら、どう思うのやら……。確かあそこはハルトヴィヒ子爵の領地だったはず。その親はクルツ侯爵。どう動くか楽しみだ」

 ミスラが笑っていた。


 結局のところ、決まってしまえば部隊の移動は素早い。

 ダンジョン街道を使えばオングストレーム侯爵の領地に行くまでに一時間ほど。更に街道に出て境界の駐屯地に行くのが数時間。その場に事務所や倉庫を置いて壁で囲ったら、駐屯地の出来上がりである。

 櫓を作って遠くを見渡せるようにしておく。

 朝に移動を始めて夕方には駐屯地ができていた。

 次の日には糧秣を持った輜重部隊が現れ倉庫の中に糧秣を入れれば終わり。

 暫くすると、オングストレーム侯爵の兵も合流する。

 オングストレーム侯爵からは三百名。その他寄子で二百ほど。


 五百かぁ……。

 おっと、多くねえ?

 まあ、必要な物はこっちで準備するが……。


 オングストレーム侯爵の兵は、最初は駐屯地で闊歩するコカトリスやワイバーンを見て恐れていたが、そのうち慣れたようだ。

 更にしばらくすると、斥候らしき人間の光点が遠くから覗いているのがわかる。


 さて、どうなるのやら。



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