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経済封鎖

「オングストレーム侯爵は経済封鎖を受けているらしいな」

 マティアスから連絡があった。

「経済封鎖?」

「ああ、オングストレーム侯爵と寄子で経済圏を作っているとはいえ、足りない物は周囲から仕入れる必要があるからな。

 オウルやパルティーモの方から物資が入らなくなれば、民は不満を持つだろうな。

 不満は上の者に行く」

「ちなみにベルマン辺境伯のほうは?」

「あっちもあまり変わらないだろう。

 すでにベルマン辺境伯がお前に付いたことはわかっている。

 表立って軍を動かし手を出さないのは、手を出したらお前……またはその軍が動くことをおそれているんだろう。

 先のオングストレーム侯爵との戦争が一方的だったから、余計だろうな」

 さて、あとはお前の仕事だ」

 そう言うとマティアスは電話を切った。


 丸投げらしい。

 仕方ないね……。


 ドラゴンになったリードラと共にオングストレーム侯爵の領都に向かう。

 オングストレーム侯爵の領都ベルミナ。

 ひときわ大きな屋敷の上で、リードラはホバリングすると、庭に降りる。

 すると、庭に警備兵が現れた。

「突然の訪問申し訳ない。

 俺の名はアスマ自治領領主マサヨシ。

 オングストレーム侯爵にお目通り願いたい!」

 俺が叫ぶ。

 警備兵が呼ぶことも無く、オングストレーム侯爵が現れた。

「マサヨシ殿。

 護衛も付けずになぜこのような場所に!」

「いちいち、護衛をつけてウロウロしていては、時間がかかり過ぎるからね」

「豪胆ですな。

 私があなたを怨み、この城の兵全員で襲うことは考えないので?」

「そうなったらそうなった時。

 それに俺はちゃんと護衛を連れてきています。

 ほら」

 息をするたびに、赤い炎が小さく噴き出すリードラ。

 俺がリードラを見ると、リードラの口角が上がる。

「確かに……。

 我々だけでは無理ですな」

 オングストレーム侯爵は苦笑いしていた。


 俺は客室に通された。

 いい匂いの紅茶が目の前に置かれると、

「それにしても、なぜこの街に?」

 オングストレーム侯爵が俺に聞いてくる。

「ああ、オングストレーム侯爵とその寄子たちが経済封鎖をされていると聞いてね。

 俺のほうに移ったことで起る不利益を考えず申し訳ない」

 俺は頭を下げた。

「何故頭を?」

 驚いたようで目を大きくするオングストレーム侯爵。

「勝ったから終わりじゃないでしょう?

 負けた相手のことも考えないと。

 それも、損害を受けた相手を元に戻す……いや、以前以上の賑わいを取り戻すぐらいにしないと……」

 俺の言葉に、オングストレーム侯爵が俯いた。

「負けた者たちにそこまで……」

「勝ったからこそ……。

 んー、いや、オングストレーム侯爵が俺の下に付いたから……ってところです。

 さて、この辺の物流が滞っているんだったっけ?」

「はい、食料もなかなか手に入らず。

 先のあなたとの戦争で兵糧に使ったため、備蓄もあまりない有様で……」

「了解。

 うちの都のヘムで手に入るようにしておきます。

 あと、この近くにダンジョン街道の入口を作っておくので使ってください。

 この認証カードを持っていれば、ダンジョン街道を使えます。

 ダンジョン街道を使えば私の街ヘムまで一日はかからないと思うので……」

 そう言って、ダンジョンカードの通行許可証となるカードを十枚ほど、オングストレーム侯爵に渡した。

 そのカードを受け取りながら、

「ダンジョン街道?」

 とオングストレーム侯爵が聞く。

「ああ、知らないんだ。

 えーっと……主要な都市を繋ぐ魔法の道って感じかな?

 ダンジョン街道を使えば、ヘムはもちろんパルティーモやオウルにも行けるので、商人を上手く使えば流通の封鎖などどうにでもなります」

「ありがとうございます」

 オングストレーム侯爵が頭を下げる。

「あと、オングストレーム侯爵。

 主要な街道を整備したいのですが?」

「街道整備など、いくらかかるか……。

 お恥ずかしながら、我が領土の台所事情は良くなく……」

 情けないのかオングストレーム侯爵がこぶしを握り締めていた。


 本来街道整備には金がかかる。魔力で何とかする俺がおかしいのだ。


「金は要りませんよ。

 明日か明後日には街道が石のように固くなっています。

 それだけです。

 別に食料となる穀物や野菜はオースプリング王国領内で買う必要もありませんしね。

 仕入れる場所が時間的に近くなれば、輸送の費用などが安くなって、モノの値段も少しは下がるかと……。

 ヘムで買ってもらえれば、自治領も潤いますのでこちらとしても助かります」

 でへへと頭を掻く。

「俺のせいで死んでしまった男たちのことは難しいですが、流通が今まで通りになれば、オングストレーム侯爵であれば領内を元に戻すのは可能でしょう」

 俺が言うと、

「このオングストレーム侯爵。

 早急に力を取り戻し、マサヨシ殿のお力になれるように努力します」

 と頭を下げた。

「頑張ってください。

 何か必要な物があれば言ってくれれば準備します」


 こんなものかな。


 こうして、話は終わった。

 その日の夜から、クレイ先生に頼んで土木作業。

 そして、オングストレーム侯爵の経済をオースプリング王国から切り離す。

 ちなみにベルマン辺境伯についても、ダンジョン街道の使用許可を出し、道の整備を行った。


 うちについた貴族が苦労するのは困るからね。


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