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嫌がらせ部隊

 キングが居る牧場の柵にもたれているタロスの姿を見つけた。

「タロス。

 銃を使ったことがあるか?」

「ああ、ラウラさんが使っている奴だろ?

 一度撃たせてもらったことがあるよ。

『バーン』ってでっかい音がして、凄い衝撃。

 そして木の的がはじけ飛んだ」

「それをコカトリス部隊に持たせたいと思っているんだが……。

 運用はラウラたちの部隊に近い。

 ただ、撃ったあと戦うんじゃなく、すぐに逃げてもらうんだがな」

「それは何でだ?」

「ん?

 コカトリスは険しい崖でもものともしないだろ?

 崖から攻撃して、上に逃げる。

 普通の部隊は馬だから追いかけて来られない。

 ただ、弓には注意かなぁ……。

 もっと射程の長い奴もある。

 弓より射程距離が長いなら、撃って逃げればいい」

「それでもいいな」

「他には?」

「あと、夜中、わざと銃で攻撃して逃げる。

 要は夜襲だね。

 別に攻撃が当たらなくてもいいんだ。

 デカい音がしていつ狙われるかわからない状況では寝られないだろう?」

「ふむ……。

 要は嫌がらせ?」

 タロスが俺に聞く。

「そう、嫌がらせ部隊。

 万全な状態で戦場に来られなければいい。

 傷ついて、睡眠不足。

 疲れ切って戦場に来ても、十分な仕事はできないだろう。

 そのためには正確な部隊配置の情報が必要だ。

 その辺はミケに任せてある」

「そっ、そうか……」

 ミケの名が出ると、少し言葉が詰まるタロス。

「まあ、タロスの部隊も斥候を出さないといけないだろうがね」

「それは任せろ。

 問題はない。

 うちの部隊には夜目が効く獣人が多いからな」

 タロスはサムズアップした。



 そのあと、コカトリスの牧場に射撃練習場を作ったようだ。

 銃撃の音にコカトリスを慣らさせるためらしい。

 遠距離からの射撃の訓練だけでなく、走りながら近距離でも射撃をして離脱する訓練。

「小部隊で、的を絞らせないような攻撃も考えているぞ?

 怪我人が出れば嫌がるだろ」

 と言うタロス。


 いつ、どこから撃たれるかわからない、自分がいつ怪我をするか……いや、死ぬかわからないストレス。

 スッゲー嫌だろうね。

 タロスの考え方は正しいと思う。

 負傷兵が出れば進軍速度は落ちる。

 呻く負傷兵が更に士気を下げるだろうな。

 農民は国の基本。

 歩兵には逃げてもらいたいな。

 戦う前に、勝てるって訳?

 いや、それは希望的観測過ぎるか……。



 それから我が領地は戦争に向けて準備を始める。

 石造りの大きな道をクレイに任せて一気に作った。

 街道の境界には関をつくる。

 その周囲に広場。

 ドロアーテからの物資を集積し、兵を留める場所。

 セリュック側の防衛と街の巡回に回す騎士以外はその場所に集めることができるようにするためだ。

 着々と糧秣と兵士がその場に集まり始めた。

 一応攻められる側。


 待ってりゃいいだけなんだけどね。


 それでも国境の警備は厳重にしておく。



 すでに、王都からの行軍は始まっているようで、タロスの部隊は一部を少数部隊に分け、嫌がらせを開始したようだ。

 オングストレーム侯爵の寄子が動き出すと、更にはミケと連絡を取りながら、こちらも各個に嫌がらせを開始する。

 タロスの部下に多い獣人は森林や山岳に親和性が高く、潜伏はお手の者らしい。

 まあ、タロスには「夜襲してすぐ逃げるように」と言ってある。


 ストレスを与えればいいだけなのだから……。


 しばらくすると、

「オングストレーム侯爵の援軍に向かう兵士が夜な夜な襲われ、大きな音がすると怪我をする。

 恐れた兵が逃げ始めた」

 と言う噂が流れるようになる。


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