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地図作り

 訓練場の詰め所でミケの訓練を終えた時、ふと壁を見て、

「地図みたいなものは張らないのか?」

 俺はラウラに聞いてみた。

「マサヨシ殿、地図と言うのは国の情報だ。

 それを人目が付くところに置いたりはしない」

「詳細な地図というのは?」

「なかなか難しいな。

 国中を精査するというのは難しく、費用も時間もかかる。

 だから、詳細な地形を書いたものは、それだけでその国の宝になり機密です。

 旅人が持つ地図などは『街道がどこに繋がっている』とか、『目印になる者は何』程度のものなのだ」

「ここにも地図は要ると思うか?」

「ドロアーテの地図は手に入っていますが、ドロアーテとヘム、セリュックまでを繋ぐ地図は無い。

 今後の事を考え、ノーラと話をして、マサヨシの国としての国境を考えながら、作ったほうがいいのかもしれないな」

 ラウラは言った。


 まあ、ラウラが言ったからだと言われると癪だが、確かに、詳細な地図と言うのは必要だと思う訳で……。


「お邪魔するよ」

 俺が扉で執務室に現れると、

「とーたま」

 トタトタと裸足でカーペットを歩くアリスが出迎えた。

 マルティナさんの趣味なのか黒いゴシックタイプに見える服を着ている。

「だっこ」

 と両手を上げてきた。

「おう」

 俺は抱き上げる。

「今日はどうしたのですか?」

 執務をやめ机から立ち上がると、ノーラが近寄ってきた。

「ああ、セリュックに地図はあるのかなと……」

「地図はありますが、お爺様のころのもの。

 少し古くなりますね。

 最近、我が侯爵家の後見人様が付いてから大きく変わりましたから」

 若干のジト目と共にノーラが言った。

「おっ、おう……」

 としか俺は言いようがない。

「それにしても、急に地図などとどうかしたのですか?」

「自治領の地図が必要じゃないかと言われてね」

 俺が言うと、

「あなた……『言われた』相手は、ラウラさんですね。

『土地を守るために地図があったほうがいいのだが……』と以前言っていました」

 と見透かしたように言うノーラ。

「よくお分かりで……」

 頭を掻きながら言った。

 ノーラはため息をつくと、

「とりあえずは、魔族側の方は部下にやらせます。

 ドロアーテからヘムまでの地図はあなたが手配してくださいね」

「ああ、マティアスに、ドロアーテにある地図を基準にうちまでの地図を作るように指示を出す」

「こちらも人手が足りない中を、やるのです。

 ご褒美はおねがいしますね」

 ノーラが俺にもたれかかる。

「おいおい子供の前だぞ?

 それに、ご褒美をするなら地図を作り上げた者にじゃないのか?」

「いいえ、侯爵家の長たる私が後見人様から、ご褒美を頂きます」

 すると、アリスが、

「ご褒美、ご褒美。

 おとうたんのおいちいの」

 たまに差し出すお菓子の事を言っているのか、喜びだす。

「そうよね?

 ご褒美欲しいわよね?」

 と、ノーラが聞くと、

「うん」

 とアリスが大きく頷くのだった。


 妻の尻に敷かれるだけじゃなく、子供にまで……。

 子供を出しにされてはなぁ


 頭をボリポリと書きながら思う。


 ノーラとマティアスにも頼み、人を出してもらって地図を作る。

 護衛にわんこ部隊を付けておいた。

 結局急いで地図を作ったのだが、それでも一年近くかかるのであった。



 あっ『マサヨシの自治領』とか『あいつの自治領』で呼び方が定まらない俺の自治領。

 結局名前を付けろということになり、俺の姓であるアスマを取り「アスマ自治領」と呼ばれるようになる。


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