ワイバーンライダー
敵の情報を得るために必要な物。
本来は俺のレーダーが他の人に使えればいいんだけど、そうはいかないようだ。
実際にレーダーの魔道具を作ってみたが、まともに使える者がリードラでギリ、他の妻の中に居なかった。
リードラでも長い間は使えない。
知らない知識の魔法を使うというのが難しいのだろう。
では、基本に戻る。
元々気球も飛行機も最初は偵察用に使われた訳で……。
つまり、高空から地上の様子を見る訳だ。
高空から見下ろし、敵の配置を知る。
そんな事を考えた。
リードラの部隊のワイバーンを一頭借り受けることにした。
「一応言っておくが、このワイバーンはワイバーンロードじゃ。
ワイバーンの上位種で、通常はワイバーンを束ねる。
我の下に居るせいで、ワイバーンは束ねておらんがの」
リードラが言った。
「何でだ?
何でワイバーンロード?」
何となくわかるがとぼけてみると、
「主はワイバーンを隷属化したであろう?
ただのワイバーンでおるはずがなかろう?
そんなことも忘れたのか?
周りにおるであろう。
ポチ、神馬、キング思い浮かぶであろう?」
呆れた顔でリードラが言う。
だよね。
引っ張ったのね……。
「今更か?」
俺が聞くと、
「今更じゃ!」
と再び呆れ顔のリードラ。
「まあ、知能が高い分、騎乗する者の言う事は聞くであろう。
我からも言っておるし、主からも言うであろうからの」
「通常のワイバーンより大きいとか?」
「そうじゃのう、二回りほど大きいのではないか?
契約の際に見たであろう?」
「確かに光ったが、あまり気にしていなかったんでね」
「飛行速度も我ほどではなくとも、それに近い速度が出る。
普通のワイバーンライダーなど、相手にならんだろうな」
「それはありがたい。
戦うための者じゃないから、敵のワイバーンライダーに見つかれば逃げるからね」
「戦わないのか?
敵のワイバーンライダーなど倒してしまうだろうに……」
「うちのワイバーンライダーは偵察用だよ。
敵軍の配置を上空から確認する。
襲ってきた相手は撃墜するも良しだが、それ以外は戦場の情報収集。
念話の魔道具で本陣に報告し、敵の動きを本陣が把握。
そのうえで兵を動かす。
向こうの動きを俺たちが知れば、対応しやすいからね」
目が良く、夜目が利く獣人……ミケをワイバーンライダーにした。
夜間でも飛べるうえに、精霊による隠密性が高い。
「ご主人様、私が本当にワイバーンライダーでいいのかニャ?
もっと、騎士とかそういうのがなればいいと思うのにゃ」
「ん?
ミケは風の精霊と仲がいいだろ?
だから、ワイバーンごと隠れて敵の上を飛べる。
つまり、向こうの情報を手に入れることができるって訳だ。
それに、ミケは念話の魔道具も使える。
そうすれば、ミケの情報で軍が動くことになる。
タロスの役にも立つぞ?」
「ニャ!」
ミケの顔が赤くなる。
「タロスと付き合ってるんだろ?」
「ニャンでそれを……」
「みんな知ってるから……。
まあ、俺もサラから聞いたんだがね」
それをだしにする俺もいい性格ではないな。
「タロスはコカトリスを束ねている。
ミケが敵の位置、数、武器を把握すれば、安全な位置からタロスは攻撃できる。
ミケがタロスを守ることができる。
つまりタロスの怪我が減り、生きて帰ってくる確率が上がる」
「わかったニャ!
タロスを守るためにやってやるニャ!」
こうして、ミケ騎乗の情報収集専門のワイバーンライダーができる。
次の日から、ミケがセリュックの訓練場でワイバーンロードと共に、空戦機動の訓練をする姿が見かけられるようになった。
ワイバーンロードとの相性もいいようで、
そして、その時に部隊規模を上空からでも理解できるように、ラウラに頼んで五十人、百人、二百人、五百人、千人、二千人での訓練を上空から確認する訓練も並行で行う。
「ご主人様、歩兵は多分百人ニャ!」
「正解! 奥の騎士の部隊は?」
「これも百人ニャ!」
「残念、五十人」
「でも……上から見ると百人と一緒ニャのに……」
「騎士は馬に乗っているからな。
そのせいで数の割に上から見たら大きく見えるのかもな」
「わかったのニャ!
次は間違えないのニャ」
訓練場の無線にミケの声が響いていた。
偵察は戦いの要。
ミケには頑張ってもらわねば……。




