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母になる者、母になりたい者

暫く経った。

オースプリング王国とうちの境界付近での小競り合いはあるようだが、オースプリング王国とは今のところは問題ない。

あまりに静かなせいで、不気味なくらいだ。

そんな間にマールとカリーネ、フィナが出産を終えた。


マールはグレーな皮膚に白い髪の男の子を抱いていた。

名はテオ。

マールの母親であるモーラさんが付き添っている。

「おばあちゃんになっちゃったわね。

 私なんて、なかなかマールを授からなかったのに、マールはすぐに授かった」

「母さん。

 それはマサヨシ様のお陰。

授かり辛いと言われるエルフであるクリス様。

同じく私にも子を授けてくれた。

 いろいろ考えて、時期を見据えて、欲しいと言っていた私のために考えてくれたの」

「本人の前で言わんでも……」

 俺が言うと、

「旦那様の前で言わないでどうします?

 私はただ死ぬしかなかった。

 それを助けて、愛してもらって、愛する人の子まで授かった」

「それは生き運だろ?」

「そう、でも、あなたが居なければ、今の私は居ません。

 自信をもって、あなたに紅茶を出す私はこの世に存在しないでしょう。

 だから、やっぱり感謝しているんです」

「それを言うなら俺も感謝だぞ?

 元気な子を産んでくれた」

「ゴホン」モーラさんが咳払い。

「そういう話は私が居ないところでしてもらいたいわね。

 にしても、あの人に頼んで、もう一人ぐらい子供を作っちゃおうかしら」

「年の離れた妹ですか……。

でも甥っ子より年の離れた叔父叔母って……」

マールが眉間にしわを寄せて悩んでいた。

リアクションし辛い雰囲気が続くとテオが泣き始め、世話を始めた二人を置いて部屋を出る俺が居た。



カリーネの子は男の子。

白い髪で狐の耳と尻尾を持っていた。

カリーネの乳首に吸い付き、元気よく乳を吸う。

「エリスはあまり乳を飲まなかったんだけど、この子は凄いわね。

 男の子と女の子の差かしら」

そう言いながら乳を吸う男の子を見ていた。

「私たちとちょっと違うのは、尻尾が二つに分かれているのよね。

 伝説の人弧と一緒」

「そんな伝説があったんだ」

俺がカリーネに聞くと、

「ああ、私たちの一族の伝説。

 凄い魔力を持ってたらしいわよ?

 まあ、あなたとの子供だからあり得るかな?」

チラリとカリーネが俺を見る

「お父さん名前は?」

興味津々なのだろうエリスが聞いてきた。

「タマモだな。

 俺の世界にも九尾の狐の伝説があって、その狐の名の一つがタマモ」

「タマモちゃんね。

 タマモちゃん、私はエリス。

 よろしくね」

まだ何もわからないであろう、タマモに近づき頭を撫でていた。



フィナは双子の男の子を産んだ。

銀狼の耳と尻尾を持つ。

「銀狼族は双子を産むことも多いのです」

との事。

フィナには獣人のおばちゃんが付き、世話をしていた。


犬系の血が混じっているからかね?

多頭出産……。

しかし、カリーネは違ったな。

確率が高いだけで、あまり気にする必要はないか。


フィナの子には、ロムスとレムスと言う名を付ける。

どこぞの国の建国者兄弟だったっけ?

まあ、その辺は適当だ。


満足そうに我が子を抱くフィナ。


あいつに俺はこういう事をさせてやれなかった。

今更、情けなく思うね。


「前の奥様の事ですか?」

俺の心を読んだようにフィナが聞いた。

「いいや」

俺が言うが、

「嘘はいけません。

 私は匂いでわかるんです」

ニッコリと笑うふぃな。

「今更ですよ。

 私があなたを失ったとして、忘れられるはずがありません。

 だから、後悔でも何でもしてください。

 必ず私が……いえ、私たちがあなたを立ち直らせて見せます」

そういうフィナの目は力強かった。


女性が母になる……。

肝が据わったフィナ。

こりゃ勝てないな。

男が失神するという痛みを経験し、子供を産む女性。

今更ながら、尻に敷かれる生活は続きそうだ。



子供が居る者たちは、部屋食になっている。

だから、食堂に集まるのは、俺とアイナ、リードラ、イングリッド、クラーラだけ。

そんな中、

「月のものが来なくなりました」

頬を染めながらイングリッドから声がかかる。

「産婆さんに診てもらいましたが間違いないと……」

「あっ、私も」

クラーラもらしい。

「二人とも元気な子を頼むよ」

俺が言うと、

「うー、私はまだなのに……」

不機嫌なアイナ。

「そこは授かりものだからな」

 俺が言うと、

「それはそうだけど」

とアイナが不貞腐れるが、

(われ)は焦ってはおらん。」

リードラは胸を張る。

気になったのか、

「それは何で?」

とアイナが聞いた。

「マサヨシの魔力は多い。

 魔力が多い者は長生きする。

 これは魔物の世界の通例。

 人よりエルフ、ドワーフ、魔族の寿命が長いのはそのせいじゃ」


確かに話が通るな。

ホーリードラゴンの寿命が長いのはそのせいか……。


「つまり、私も長生きする?」

 アイナが聞いた。

「そうじゃのう、病気などにかからなければ、普通の人間よりは長生きするのではないか。

 それにマサヨシはいろいろ計算しておる。

マサヨシと交わっておればそのうちできるのじゃ」

リードラは、アイナを諭していた。


 結局のところ、俺の種馬モードは変わらず、乳母を用意したクリスからも求められるようになる。

「子供は多い方がいいの。

 作るだけ作りなさい」

クリスが言う。


 いつまで種馬モードなのかねぇ……。


読んでいただきありがとうございます。

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