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屑魔石

 んー、銃って無いよな。

 開発したら、強くなれるかね……。

 まあ、俺は黒色火薬を作る方法を知らないからできなくて仕方ない。


 カリーネの所に邪魔しに行った時、ギルド受付裏に転がる小さな魔石が入った箱を見つけた。

「なにこれ?」

「あっ、それ屑魔石」

 まだ弱い冒険者が持って帰った魔石で、小さすぎて使い道が少なくとも、冒険者を育てるという事で小さな魔石でも手に入れているということだ。

 そのせいで、屑魔石が溜まる。

「あれ、一応買い取るんだけど、小さすぎてね……」

 ダンジョンの浅い層に居るゴブリンやらコボルドやらの魔石だそうな。

「一応、魔法も付与できるんだろ?

 何にも使えんの?」

「んー、アクセサリーなんかにして、弱い魔法を付与することはできる。

 首飾りにして治癒魔法を付与したら、肩こりなんかには効いたり、身体強化の魔法を付与すれば若干の体力増強なんかもできるんだろうけど、それをしてしまうと高価になるから、結局しないわね」

「貰っていいか?」

 俺が聞くと、

「それは無理。

 一応ギルドのものだから、自治領の予算から出してね」

 カリーネがニコリと笑って言った。


 ケチ……と言ったら怒られるかもな……。


「あとで請求してください」

 俺が言うと、

「畏まりました領主様」

 カリーネが大きなおなかを摩りながら頭を下げるのだった。


 さて、貰った屑魔石……何に使いましょう?

 砂みたいになるのかね……。

 魔石を握ると崩れる。

 小さな砂利


 あまり硬くはないようだ。


 魔石の砂ねぇ……。

「エン、火の魔法を付与できるか?」

 聞くと、ボーイッシュな姿の精霊が現れる。

「ダメねぇ。

 一番弱いファイアぐらいじゃないかしら」

 俺はファイアの魔法を付与する。

 魔石が赤く輝いた。


 ん?

 指に魔力を通し、魔石の砂の山に近づけると連鎖的にボウワという音を上げ燃え上がる。

「うわっ……。

 これって……」

 クレイに頼み、魔石をコンマ五ミリ程度の同じ大きさの粒状に整える。

 再びファイアーの魔法を付与して魔力を通すと、ボウンと音がして、小さな爆風と共に更にに大きな炎が上がった。


 ん?煙が出ないね。

 黒色火薬のデメリットである燃焼後の煙が無い。

 ああ、完全燃焼するのか……。


「ん、使える。

 結構な爆発力

 火縄銃的な物に使えばいいかね?」


 さて、ドランさんの登場です。

 紙に書いた簡単な設計図をガントさんに見せると、

「三日待ってくれ」

 との事。


 基準になる棒を決め、その大きさのオリハルコンの筒を作り、周りにオリハルコンを巻きつける。

 コレで銃身が出来上がる。

 ネジをきり尾栓を作って、側面に魔力を通す穴を作る、穴にはミスリルを詰め込んだ。

 引き金を引くと、指の魔力がミスリルのの火ばさみのような物を経由。伝達され、さらにミスリル経由で火薬化した魔石に魔力が到達して着火する。

 弾は鉄でいいだろう。

 本来ならば鉄の銃身に、鉛の弾なんだろうが、うちならば鉄よりも硬い素材がある。


 鉛って毒性があるからなぁ……。

 加工はしやすいんだけど……。


 魔石用の早合と錫杖を作れば先込め銃の出来上がりってところだろう。

 これを使えば魔力の無い者でも長距離射撃ができる。

 技術がなくとも数を揃えて面で攻撃すれば逃げ場などはなくなる。


 あー、屑魔石の価格が上がるなぁ……。

 まあ、ギルドが喜ぶから良いか……。



 数日後、出来上がった銃を手に入れ、兵の訓練場へ向かった。

 弓の練習をしている中のを見つけると、その場所に向かう。

「マサヨシ殿、何かあったのか?」

 ラウラが俺を見つけたようだ。

「ああ、新しい武器を作ったから、試し撃ち。

 丁度弓の練習をしているみたいだからね」

「それは構わぬが……新しい武器と言うのはそれか?」

 俺が手にしたオリハルコンの筒。

 不思議そうにラウラが見ていた。

「こんな感じかな?」

 人が居ない場所に立つと、先込め銃に魔石と弾を入れる。

 そして、スコープモードで銃を撃った。

「ターン!」

 と軽い音がすると、狙った的の中央近くに弾が当たる。


 DEXの恩恵かね……。

 まあ、練習すれば皆使えるか……。


 音で馬が驚いたのか「ブルブル」と言う馬の声が聞こえた。

 弓の練習をしている兵士たちも俺を見る。

「マサヨシ殿、それは何と言う?」

 ラウラが聞いてきた。

「『銃』と言う武器だ。

 弓のように連射は効かないが、結構な距離を飛ぶ。

 そして威力もある」


 まあ、連射能力を上げるのは方法がある。

 三段構えとか……。


「数を揃えれば面で攻撃ができるな。

 音も大きいから馬も兵も驚くかもね」

「命中率は?」

「練習次第」

「馬上で使えないか?

 最初にその『銃』というもので、距離による先制攻撃。

 けが人による士気低下を誘い、音によって敵をひるませてから切り付ける。

 混乱する部隊など、役に立たない。

 こちらは組織的な攻撃で、敵を倒すだけだ」

「しかし、馬を銃撃の音に慣らさないと、使えないだろうな。

 銃撃の音で混乱するような馬じゃ使えない」

 俺の心配を、

「それは簡単だ。

 銃撃の練習に付き合わせれば、音に慣れるだろう。

 それに、私の乗る神馬スザクが驚かなくなれば、周りに従う馬も気にしなくなるだろう」

 と一蹴した。

 スザクはラウラの愛馬。

 神馬六頭のうちの一頭。

「ラウラの中で使う算段は決まっていると?」

「ああ」

 と頷くラウラ。

「ちなみに馬の上で使う銃の事を馬上筒(ばじょうづつ)って言うんだ。

 幾つ要る?」

「私の下に居る騎士は百人程。

 とりあえず、その騎士たちに持たせようと思う」


 こりゃ、ドランさんに言って仕様変更かなぁ……。

 銃身を短くして、片手で扱えるようにしないと……。

 雨にやられるということはないからその辺は問題ない。

 馬の鞍の両方に置けるようにする。

 二発限定。

 接近時に一発撃って先制し、攻撃。

 逃げる時に一発ってところだろうな

 それだけでも損耗率が違うだろう。


「マサヨシ殿、何か思いついたかな?」

 ラウラが聞く。

「ん、まあね。

 ドランさんに頼んでみるよ」



 ドランさんの工房からカンカンと槌の音が聞こえる。

「あっ、マサヨシ様」

 中からクロが現れた。

 クロはドランさんの向こう槌を振るう一番弟子だ。

 痩せていた体は今では筋肉隆々になっていた。

 煤けていた毛は艶々としている。

「ドランさんは?」

「ああ、マサヨシ様に頼まれたものを改良しておりますが……」

「ちょっと仕様変更して、数を依頼したいんだ」

「一緒に来てください」

 俺はクロと作業場に行った。


 作業場でドランさんは槌を振るっていた。

「師匠、マサヨシ様が来ました」

 クロが声をかけると、

「おう、少し待たせてろ。

 これを終えたら、話は聞く」


 ドランさんは仕事優先。

 職人っぽくて良し。


「さてと、待たせたな」

 ドランさんが汗を拭きながら出てきた。

「いいや、それほどでも」

「で、何だ?」

「この銃の事」

 俺は銃を出した。

「片手で扱えるようにしたい。

 馬に乗って使えるように……」

「馬に乗って使うか……。

 手綱を持つために片手で扱えるようにしろと……」

「さすがだね。

 そういう事」

「片手で扱うなら、軽い方がいい。

 オリハルコンにこだわらなくても、鉄より硬ければいいのならミスリルでもいいな」

 ドランさんが考えている。

「鞍に固定する道具も要る。

 銃口を上に向けて固定できないといけない。

 斜め上でもいい」

 俺が言うと、

「弾が落ちないようにするためだな。

 予備の弾も入れられるような物も必要か……」

 とドランさんはすべてを理解する。

「で、戦争はいつだ?」

 ドランさんが言った。

「さあね。

 向こう次第じゃないか?

 俺は国力を上げつつ、準備をするしかない」

 俺が言うと、

「まあ、儂は鍛冶屋として弟子を育てる。

 育てながら言われたものや作りたいものを作るだけだ」

 ドランさんがニヤリと笑う。



 しばらくすると、ドランさんがミスリルの銃を持ってきた。

「持ってみな」

 持ってみると、

「軽っ」

 思わず声が出る。

「その場で構えて撃つのならば少々重みがある方が安定しそうだが、馬に乗って片手で使うならこのぐらいがいいだろう。

 馬の負担も少なくて済む」

「ええ、狙撃するための銃じゃありませんから、十分だと思う」

「それじゃこれも」

 革製のホルダーを取り出す。

 少し大きい。

「馬に固定するホルダーな。

 道具と弾、火薬魔石を入れられるようにしてある。

 休憩の間に弾を込められる」


 ラウラにできたものを渡し、実際に馬上で使ってもらった。

 弓の練習場で、

「ターン!」

 と言う発射音。

 スザクはピクリともしなかった。

 そして、的のど真ん中に当たる。

「おぉ、さすが」


 そういや、ラウラも上がってたか……。


「これなら使える。

 馬に乗って走っている時は、さすがに外れるだろうが、要はその部隊の誰かに当たればいい。

 別に騎士に当たらずとも、馬に当たればいいのだ。

 そうすれば、騎士は落馬し怪我をする」

「じゃあ、ドランさんに頼んで、作ってもらうぞ?」

「マサヨシ殿、頼む」

 こうして、ドランさんに頼み「弟子の練習でいいから」と騎士百人、計二百丁ほどの馬上筒を依頼した。

 今まで育てた弟子たち総動員で二か月ほどで作り上げるのだった。



 ラウラを先頭に馬に乗る騎士たちが馬上筒を使う訓練を見ている。

 整然と動き、的確に想定する部隊が居る場所に弾が当たる。

 距離を取って痛めつけた後、敵に突撃する。

 相手をする部隊は大変だ……。



 銃については、最初に作った物も作り続けてもらう。

 そして、ドランさんには気付いたところを修正してもらう。

 続々と出来上がる銃。



 巡回の騎士にも持たせるか……。

 とりあえずは、防衛戦専用かなぁ……。

 砦や魔物部隊が居ないドロアーテやセリュックにも送って訓練してもらおうかね……。


読んでいただきありがとうございます。

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