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近況報告

「俺んちじゃダメだ! 名をつけろ!」と各国の父親たちに言われて俺んちの名称は「ヘム」にした。

 ヘムの街。

 どこぞの国の言葉で「家」って意味だったと思う。


 ダンジョン街道を使ったハブ化計画の行き先は結局王都とパルティーモのみにした。

 そこからであれば、国内の他の都市に行くにしろ宿を使ったりするだろう。

 商人から使用料を取りパスを渡す。

 一回、一カ月、半年、一年とパスの種類を作る。

 その運用もうまくいっているようだ。

 オウルやセリュック、リンミカ、ストルマンから中心であるヘムの街に商人の支店が集まり、倉庫が増える。

 物流の中心になっていた。

 その税金が自治領に入る。

 結構な金額。


 いいねぇ。


 オセーレやリンミカで要らなくなった建物を回収し移築した。

 当然新築もある。

 ボーと孤児院の大工志望の子たちとベンヤミンたちの二組によって作られていた。

 新規参入してくるドワーフたちも居て建築ラッシュである。



 ついでに言えば鍛冶もうまくいっており、ガントさんの指導の下、武器の量産体制に入っていた。


 ウンウン、自前の職人も増えている。


 商業都市と言う感じ。


 シルクワームによる布、シュガーアントの砂糖については、出来上がった倉庫に積まれ、遠くは南領まで届いているらしい。




 森を開き広大な軍事訓練場を作る。

 種族のこだわり無しに軍隊を作った。

 ラウラとミスラには軍を鍛えてもらっている。

 特殊な部隊として、コカトリスに騎乗する部隊とダンジョン産のワイバーンの部隊も作っている。

 コカトリスに騎乗する部隊の隊長はタロス。

 ワイバーンの部隊の隊長はリードラである。

 コカトリスは岩場などの足元が悪い場所でも移動が得意であり、数十メートル程度の滑空も可能であることがわかった。

 石化の特殊能力も相まって、結構使えそうだ。

 リードラの部隊は、上空からのブレスによる爆撃。

 弓なんかが届かないところからの攻撃のため、まともに戦える者は居ないんじゃないだろうか?

 結構凶悪な部隊。

 敵味方を分けて爆撃などは難しいので、使いどころを考えないといけないだろうな。


 ちなみにラウラが一番に妊娠をし、子が生まれた。

 名はカルラ。

 真っ赤な顔をして踏ん張り、豪快におむつを汚す。

 んー、豪快な女性になりそう。

 母親似か……。



 ダンジョン鉱山の配置替えを行い、鉱山村を建設。

 鉱毒処理はスライムに任せた。

 水に溶け込んだ鉱物をそのまま飲み込むので、体を焼くと水に溶け込んでいた鉱物も回収できる。

 便利なものである。

 この村でできた金銀などの貴金属のことはクラーラに任せている。



 ドロアーテにはマティアスを配置し、軍務、内務ともに治めてもらっている。

 オースプリングとの接点。

 まあ今一番危ない街。



 ノーラのところはノルデン侯爵ということになっているが、規模的には公爵並みである。

 岩塩の収入で潤い、大森林の開墾による収穫増でレーヴェンヒェルム王国の穀倉地帯になっていた。

 ノルデン侯爵領が無ければレーヴェンヒェルム王国が飢えるとまで言われている。

 民は麦などの穀物が安く手に入るようになって喜んでいた。

 執務室にはベビーベッド。

 中には女の子。

 アリスと名付けた。

「他の血が混じると、翼がなくなるはずなのに」

 とノーラは言っていたが、背中には大きな翼が付いている。

「付いているほうがいいなら、それでいいだろ?」

 と言うと、ノーラは頷いていた。



 そう言えば、ダンジョンの入口を別に作る。

 そこを村にした。

 そして道具や武器屋を作りヘムで作った物を売る。

 宿屋も作った。

 経験者を配置しその下に過程が終わった孤児を働かせた。

 新しいダンジョンの入口に冒険者たちは群がる。

 そのお陰で村は賑わっていた。

 。←

 カリーネは村の冒険者ギルドのギルドマスターに就任。

 ゼファードのギルドマスターをやめる際には、そこに居た職員もごっそり連れてきていた。

「恨まれたって、関係ない」

 とのこと。

「アグラに言って、そのうちあの入り口を閉じさせてやるわ」

 と言っていた。


 入り口を閉ざされるという事は、ゼファードにとって死活問題だろ?

 こわっ。


 まあ、ついでに、その村を管理してもらっている。

 冒険者ギルドの建物は村の役場兼冒険者ギルドって感じ。


 そんなカリーネのお腹は大きい。

 臨月とまではいかないが、パンパンに膨れていた。

 何かあっても俺とアイナが何とかするつもりではあるのだが、結局のところ「仕事をしているほうが楽だから」とカリーネは仕事をしていた。

 実際エリスが産まれる直前まで働いていたそうな。


 手伝うのはエリス。

「お腹の子が蹴ってる。

 お姉ちゃんだよーー」

 と言って、カリーネのお腹に耳を当てて話をしていた。

 一応、獣人の産婆をつけているので少しは安心だ。


 その村を警備するのはアクセルとテオドラ。

 十人程の騎士、そしてその倍ほどの兵士が居た。

 まあ、アクセルとテオドラが居れば過剰戦力だろうが、冒険者ってのは気が荒いからこのくらいいれば十分だろう。



 孤児院は冒険者ギルドと提携することで、不慮の事故により両親が亡くなった子を引き取るようになっていた。

 ヘルゲ院長の下、基礎教育と職業訓練校として活動。

 ヘムに住む子供たちも孤児院で勉強してもらっていい事にしている。

 授業料はなし。


 イングリッド、マルティナさん、アビゲイルさん、そして様々な職業を教える職人が授業を行う。

 たまにマリーさんがお手伝い。


 フィナは孤児院でお姉ちゃんをしていた。

 つまり孤児院の赤ちゃん、幼児担当だ。

 そこには、ラウラの子も居た。

 フィナもお腹が大きい。

 子供と遊ぶことはできないが、読み聞かせとかをやっているらしい。


「ふぃなねーちゃん。

 赤ちゃんできる?」

 とお腹を触る子供たち。

「うん、領主様の子供。

 もう、何か月かしたらできるよ?

 赤ちゃんできたら、一緒に遊んでくれる?」

「いいよー」

「うん、僕お兄ちゃんだから、守ったげる」

 ドンと胸を叩く男の子。

「お父さんお母さんどうして私を置いていったのかな?」

 寂し気な女の子。

「多分、生きて欲しいからじゃないかな?

 お姉ちゃんはお姉ちゃんが死んでも、この子には生きて欲しい。

 笑ったり、泣いたり、怒ったり、楽しんだり、いろいろ経験して欲しい。

 お姉ちゃんは辛い時もあったけど、生きてたから領主様に会えた。

 この子も『いい人に出会って、少しでも幸せになれたら』って思うの」

 フィナの言葉を聞きハテナマークがついた子供たち。

 そこで、

「今は楽しい?」

 とフィナが聞くと、

「うん!」

 と皆が頷いたそうな。

 フィナが嬉しそうに話していた。



 アイナも孤児院で働いていた。

 保健の先生って感じだろうか。

 授業もするが、主には怪我をした子供の治療を行う。

 アイナ自身が美人だし、少々無理をしても全快するので、言い方は悪いが体育会系の子供たちはアイナに会うために頑張ってケガをしていた。

 こうして、アイナに治療してもらうのだ。

「また、告白された……。

 私はマサヨシの物だって知らないのかしら?」

 と、ベッドで愚痴る。

 しかし体育会系の子供たちの基礎能力は高い。

 アイナのお陰である。



 なかなか子供ができないと言われているエルフのクリスは既に子を抱いている。

 名はレイ。

 ブスッとした顔は俺似? クリス似?

 その後ろに控えるのはマール。

 少しお腹が目立つようになっていた。

「悪阻は?」

「ええ、だいぶ楽になりました」

といってお茶を出すマール。

「私はあまり酷くなかったんだけどね。

 もう働いていいの?」

「ベッドで横になっていても気が晴れませんし、ここに居れば旦那様の世話をできます。

 カリーネさんも言っていたように、働いていたほうが気が楽です。

 それに、部下たちも監視できますしね」

 メイドや執事として俺たちの周囲を監視する者がビクリとした。


 マールの下、諜報部隊のような物ができていた。

 マールが妊娠している今、管理しているのはミケである。

 ちなみにミケはタロスと仲がいい。


「だうー」

 と言いながら、レイがリビングのカーペットをハイハイしていく。

 スッゲーはぇー。


 ある日、少女のような者が数人レイに付いていた。

「あれ、何か付いていないか?」

 俺が言うと、

「私たちほどじゃないですけどぉ、精霊が付いていますねぇ」

 スイが言う。

「精霊付き?

 もう見えているのか?」

 何もいないはずの方向を見るレイ。


 そこには精霊。


 アウアウと手を上げていた。

「今から精霊と戯れるなんて、末恐ろしいわね」

 クリスが呟く。

「まあ、それはそれでいいんだろ?」

「そりゃね。

 無いよりいいけど……」

 するとクリスは何かを思い出し、

「そう言えば、おじ様の娘はどうかって、この前来た時に言っていたわね」

 と言った。

「おじさまの娘?」

「そう、ランベルク公爵」

 クリスが言った。

「へ? もうそんなの決めんといかんの?」

 後ろを通りかかったのか、話を聞いたのかイングリッドが、

「はぁ……マサヨシ様、貴族は生まれてすぐに婚約なんて当たり前なんですよ。

 下手すると、生まれる前からなんてことも……。

 有力者の子となれば余計です」

 と諭すように言う。

「誰が有力者?」

 俺が言うと、

「いい加減自覚してください!」

 イングリッドが呆れて言った。

「そんなものかねぇ」

 俺が言うと、イングリッドは、

「そんなものです」

 と言ってハアと溜息をついた。

「私も、そういうのが嫌だからあの王宮を出たの」

 とヤレヤレというふうにクリスが手を上げる。


「力を持つという事は、面倒なことも多いんだな」

 今更ながら言う。

「そう一族郎党、皆に何かの影響があるわ。

 それでどうするの?」

 クリスが聞いてきた。

「どうするの……とは?」

「婚約の件よ」

「婚約だけならいいんじゃないのか?

 向こう都合やこっち都合で破棄もできるんだろ?」

「バカね。

 こっち都合は有っても、よほどレイの性格や行動に問題が無い限り向こう都合は無いわよ。

 何てったって、王から言われた事だから」


 何でそこで胸を張る?

 クリスが王女であることを主張?


「テロフの事もあるからな。

 受けておけばテロフのバックについてくれるかもな」

 と俺が言うと、

「確かに有力者の後ろ盾と言うのは有ると便利だと思います」

 イングリッドは頷き同意する。

「そうね、テロフはあの国じゃ私の養子であるだけ。

 近くに力になってくれる人が居るのはいいかも」

 クリスも頷いた。

 そして、

「どうせお父様の事だから『自分の所だけマサヨシの血が入らない』と考えたのでしょうね」

 と言って苦笑いしていた。

「その考えをこっちもうまく使わせてもらえばいいんじゃないのか?」

 と俺が言うと、

「そうね……じゃあ、了承?」

 と聞くクリス。

「ああ、了承で」

 こうしてレイに婚約者ができた。


 クリスのようなお転婆でなければいいのだが……。


「私もレイ君のような赤ちゃんが欲しいです。

 そして今日は私の番です」

 俺の袖を持つイングリッド。

 クリスとマールが俺の方を見ると、

「頑張ってねぇ~」

「旦那様、ガンバ!」

 と言ってクリスとマールが手を振る。

「はいはい、ランヴァルド王国のために頑張りますか……」

 俺はイングリッドを連れて階段を上るのだった。


 まだ、昼間なんだがな……。


 種馬モード継続中。



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