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元王来たる

 元マティアス王がドロアーテにやってきた。

 ほとんどの官吏を連れてである。

 マティアス王は部下に慕われていたようだ。


 そして、

「私はもう既に王ではない。

 お前は私の上司だ。

 マティアスと呼ぶこと。

 私の前でヘコヘコするんじゃないぞ!

 そうしないと、部下たちに示しがつかないからな」

 と釘を刺される。


 元とはいえ王の上に立たないといけないとはね……。


「役人のリストだ」

 そう言って分厚い紙の束を差し出すマティアス王。

「で、お前は全員を雇えるのか?」

 と聞いていた。

「連れてきておいてその言葉はないと思う、一応オースプリング王国の国家予算並みには持っているつもり」

「わかった。

 内政、軍事のプロは連れてきている。

 今のところ、軍はドロアーテに配備させておこう。

 騎兵が五百、歩兵が千二百、魔法兵が三百。

 全部で二千人程だ。

 官吏の配置については私に聞いてもらえれば、適切なものを配置しよう」

 と言った。

「助かる」


 と言うか、あなたが政治のプロですから……。


 色々な相談をする。


 インフラの話。

 人口増加による水の確保の難しさ、そして下水の重要性。

 汚水の処理の難しさ。

 あと、どこに道を通せば効率が良いか。

 ちなみに汚水の処理はスライムがいいらしい。

 知らなかったが、オウルの郊外に下水処理場があったらしい。

 汚水を溜める場所を作り、そこにスライムを飼う。


 開墾の話。

 開墾の場所と、街道へのアクセス。


 軍の話。

 軍事拠点をどこにして、どういう運用をする。

「お前の家の周辺に軍の拠点を作って、セリュック、ドロアーテへの道を活用して兵を動かす。

 ミスラ・バストルは早々にバルデンの下を去るだろう。

 指揮官が一人増えるぞ」

「ミスラが?」

「急いで引継ぎをするといっていた。

 あいつは慕われている。

 お前が寡兵で危なかった私を助けたことで、お前の株も上がっているしな。

 王都騎士団の者も結構な数が付いてくるだろう。

 兵力が増えるぞ。

 当然、その下の従者や家族も来る。

 宿舎の補充もしないと」

 マティアスが言った。

 ただ、軍事面のためと言うなら、大戦力を一気に投入可能な超デカい門でも作るかね。

 数千人の軍がいきなり背後に現れるってのも面白いかもしれない。

 ガントさんにでも相談するか。


 今まではそういう話をする相手が居なかった。

 ノーラと話をしていいのだが、ノーラはノーラで忙しい。

 俺は自分自身の思うままに動いていただけ

 国を扱ったことのあるマティアス王がどれだけ有能であるかがわかった気がした。

 さすが元王。

 結婚が終わり、見失っている道筋。

 おぼろげながら道筋が見えてきた。


「引き抜かれた文官、騎士たちで内政、王国の統治に支障が出るんじゃないのか?」

 俺が聞くとマティアスは、

「それを何とかするのも王だよ」

 とマティアスはさらりと言っていた。

「あいつが慕われているのなら、残っていただろ?

 今更、私もオースプリング王国の心配などせぬよ。

 使える者を使い、こちらで活用すればいい。

 オウルに残ったのは、頭の固い偉い身分の者が多い。

 あれじゃ、国は回らんだろう」

 苦笑いしていた。

 そしてそのあと、

「残った妻や息子は親に引き取られた。

 王位を得ようと画策する者も出てくるだろう。

 荒れるだろうな」

 マティアスはボソリと呟いた。



 デュロム村も家の周りも開墾についてはクレイ先生に頼んで着々と進める。

 移住者を求め、獣人だろうがドワーフだろうがエルフだろうが魔族だろうが種族を問わず誰でも受け入れた。

 そのため、人口は増加する。


 俺の妻の中に獣人であるフィナが居る。

 そして、俺の料理人であるサラも。

 獣人たちも「獣人を受け入れる領主」ということが広まっていた。

 獣人を低く見る傾向のある世の中、扱いの変化を求め獣人の多くが自治領へ来ることになった。


 百人程度で村を作りそれぞれに役人を配置して戸籍を管理する。

 後々、村には建物を作り小学校のような物を作りたいと思う。

 基本的に畑の広さは同じなので作付けと収穫量がよくわかる。

 それを基準にして税を集めた。

 税率は三割。

 他のところは五割以上、酷い所では七割ということだから、移民が多いのも頷ける。

 物によっては村ごと移住というところもあった。

 手を貸したのは俺。

 収納して再配置するだけ。

 しかし、建物不足の自治領にとっては嬉しい申し出だった。

 住民の居なくなった田畑は荒れるだろうが、もうオースプリング王国のことは気にしないことにした。


 騎士は十人程度での巡回を行うことにする。

 強い魔物などは出ないが、どうしても悪い事を考える輩は居る

 その下にわんこ部隊を一つ付けておいた。

 遠吠えでの報告。

 素早い伝達が可能になった。


 こうして少しずつ、着実に自治領は大きくなっていく。



 そして、二年が経つ。


読んでいただきありがとうございます。

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