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街灯

 そういや、俺んち近辺に家の明かりは増えたが他の明かりって言うのがない。


 まあ、まだ町って言うより村だからなあ。


 周囲に壁を作って堀を作ったせいで、平城のようになっている。

 なら壁の中だけでも明るくしたい。

 だったら街灯?

 小さな魔石はたくさんある。

 電柱立てて、その先にでも魔石をつけるか。

 一応反射板のようなものもつけて、光に方向性を持たせる。

 今はLEDになってしまったが、昔の電球の街灯っぽい奴。

 夏にカブトムシが飛んできていたのを思い出す。

 持っていた魔石を小さな丸にしたものを二十個ほど作った。

「なにやってるの?」

 クリスが聞いてきた。

「照明を作ってる」

「ふーん」

 クリスは興味がないらしい。

 そのまま、別の所へ行ったようだ。


 俺は魔石に電球をイメージしたプログラムを魔力と共に流し込んだ。

「うし、どうかね」

 魔力を流すと、白い光が点る。

「あとは……」

 俺はクラーラのところへ行った。


「ちょっと、銀を分けて」

「どうするの?」

「ああ、照明を作る」

「ふーん」

 クラーラもあまり興味がないらしい。

 銀のインゴットを一個俺に渡すと、仕事に戻った。


 クレイに手伝ってもらい照明用の銀製の傘を作り魔石を固定した。

「作るのはいいんだけど、魔力をどうやって供給する?」

 クレイが聞いてきた。


 ん……ん?


「あっ忘れてた」

「作っても、魔力を供給できなきゃダメでしょ?」

 ヤレヤレという感じのクレイ。


 クレイ先生の指摘の通りだ。

 さてどうしよう。

 魔石を使って線を作るか。

 前に転移の扉でそうしたけど、結構面倒なんだよな。

 魔力をよく通して、細長いもの………………!


 おっ、マジックワームの糸。

 ヘルワームやヘブンワームだと、オリハルコンのハサミがいる。鉄のハサミでギリギリ切れるマジックワームの糸なら、使い勝手もいいか?


 ワームズ部隊の紡績工場に行くと、ヘルワーム、ヘブンワーム、マジックワーム、シルクワームがせっせと糸を吐き出していた。

 糸巻きに巻き取られた糸は銀狼族のおばちゃんたちに染色されている。


 銀狼族のおばちゃんに、

「機織りが追い付かなくってね」

 と聞いた俺がマークに相談して、

「糸そのものを売りに出しましょう」

 ということになったのだ。

 染色された糸はなかなか無いらしく、発色がいい糸は高値で売れるそうである。


 まあ、それはいいとして……。


 俺はおばちゃんから糸巻きに巻いたマジックワームの糸をもらうと、魔光燈の球……魔光球とでも呼ぼうか……に繋ぎ、魔力を流してみた。

「おう、光る」

 あとは、デカイ魔石が欲しい。

 大きめの魔石があれば、蓄魔池にしてこの辺の魔力を賄ってもいいんだが……。

 そういや、ウォーラットを討伐したときにデカい奴が出てたな。


 デカい魔石に俺の魔力を注入する。

 その魔石と魔光球をマジックワームの糸で繋ぐと光り始めた。

 スイッチが欲しいな。


 ドランさんのところに行って図で説明すると、

「ちょっと待て」

 と言ったあと、魔力の通りがいいミスリルを使ったスイッチを作ってくれた。


 畜魔池と魔光球の間に挟んでスイッチを入れてみると

「おお、光るね」


 乾燥してあった木をクレイ先生に頼んで電柱代わりに立てていると、

「何をしているのじゃ?」

 と言ってリードラが現れた。

「街灯を作ろうかとね」

「街灯?」

「ああ、夜の通りを照らす。

 リードラみたいに夜でも目が見えるならいいが、普通の人は夜周りが見えない。だから明るくしておく。

 明るくなっていれば防犯にもいいんだ」

「ふむ、確かにのう」

「とりあえず、人通りが多いこの辺に作ろうかとね」

 マジックワームの糸で銀の傘をつけた魔光球すべてを繋ぎ、スイッチを入れると、すべての魔光球が点灯した。

「今は昼間じゃ。

 夜にならねばわからんな」

「確かにな」


 そして夜になって再点灯。

 すると、「ブーン」という羽音とともに一メートルほどもあるでっかいカブトムシが数多く来る。


 ちょっとデカすぎだ。


「なんだ、この虫は?」

 俺はリードラに聞いてみた。

「虫系の魔物じゃな。

 ビッグ・ビートルという魔物じゃ。

 固い甲羅じゃが、まあ、我なら問題ないのう」

 ガントレットもつけずに、拳を叩きこむリードラ。

 甲羅を貫通すると、中から白い体液が噴き出る。

 全身が体液だらけになるリードラ。

「汚れるのが問題じゃな。

 (ぬし)よ、その街灯とやらは、もう少し開拓した後のほうがいいかものう。

 その光にビッグ・ビートルが呼び寄せられているようじゃ」

「ああ、田舎じゃダメかぁ……」

 俺はリードラを洗浄しながら、反省するのだった。


 後日、レトロさを求めずにLED電球をイメージして魔光球を作り、発光させてみると、ビッグ・ビートルはやってこなかった。

 最初からこうしておけばよかったと後悔する。


 ちなみに、畜蓄魔池の魔力充填はリードラがやってくれるそうな。

 こうして我が土地の夜が少し明るくなるのだった。


読んでいただきありがとうございます

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