解散
朝食を食べ終え、いつもの生活が戻る。
ただ、左手に輝く赤い指輪が女性陣の安心になっているようだ。
触る姿をよく見かける。
俺がリビングで寛いでいると、ランヴァルド王にバルトール王、そして、メイナード王が現れた。
三人がソファーに座ると、何も言わずマールが紅茶を出す。
そして、ランヴァルド王が俺に声をかけた。
「マサヨシ、これからどうするつもりだ?」
「そうですね。
あんまり考えていないのが本音かな。
でも、ここをハブにして、王都や主要な街と繋いで物流の中心にすることも考えてはいます。
ただし、影響が大きすぎるだろうねぇ。
失業者とかも多くなりそう」
「ハブとは何なのだ?」
「ああ、馬車の中心の事。
車輪が街で、中央が俺の村。
だから、うちの村を経由すればいろいろな街に行ける。
リンミカからうちの村に来てオウルとか、ストルマンからうちの村に来てオセーレとか。
どこに行くにも、うちの村が必要なら、必然的に人とカネが集まると思ってね」
「魔道具か?」
再びバルトール王が聞いてきた。
「そう、魔道具を使う」
実際はダンジョンだけど……。
「ちなみに、ストルマンからここまでが何日になる?」
メイナード王が気にする。
「んー、一日かからない?」
程々の物はアグラと相談して既にできていたりする。
ダンジョン街道の出口を増やせばいいだけなのだ。
俺の言葉を聞いたメイナード王が、
「つまり、遠くのものが安く手に入ると?」
と聞いてきた。
「ああ、そうなる。
距離が離れていたために高くて得られなかったものが、安く手に入るようになる。
最終的には、南領という所とも繋いでみたいところだと思っています。
こちらではなかなか手に入らないような物もありそうですから」
俺は言った。
「ああ、手紙もできますね」
「手紙?」
ランヴァルド王が言う。
「ええ、今手紙を書いてストルマンからここまで運ぶとしたらどのくらいの時間がかかりますか?」
「冒険者ギルドを通し、便のある冒険者にそれを運んでもらう。
そうだな、三か月という所か。」
「そんなにも?」
「当たり前だ。
ギルド毎に便がないといけない。
つまり、オウルからパルティーモ、パルティーモからその次のギルドなどと言うようにギルドが依頼して運ぶ。
大体その間は馬車か徒歩だ」
前には聞いていたが効率悪いな。
「それが一日になりますね」
「「「一日?!」」」
三人の王が俺を見た。
「緊急の場合ならばもっと早くできるようにすることも可能です。
商人などは商機を逃さないようにできますね。
簡単な王同士の相談も可能だ。
必要であるなら、手紙で時間指定をしてここで会ってもらってもいい」
まあ、いろいろ使い方があると思いますよ」
「その道を使う権利は?」
ランヴァルド王が聞いてきた。
「俺次第です。
ランヴァルド王やバルトール王、メイナード王に権利を渡すのは問題ありません。
まあ、バルテンに渡すつもりはありませんが……」
気付いたのだろう、メイナード王が、
「まさか、準備をしておけば一日もせずにオウルに兵を派遣できるとか?」
と聞いてきた。
「ええ、可能です。
しなければならないなら、躊躇なくしますよ?」
「つまり、我々も急襲されることがあると?」
メイナード王が続ける。
「それは、クリスやイングリッド、クラーラが泣くのでしたくないですね。
俺は三人が嫌いではありません。
我々に被害が無い限りそんな事をするつもりはないですよ。
だから、小さいからと我々を舐めるようなことを国民にさせないでください。
獣人が働いていようが、子供が働いていようが、魔物が居ようが私の所に居る者をバカにしなければ問題ありません」
この世界は獣人を蔑む傾向がある。
国が無いというのもあるのだろう。
その結果なのか、移住者に獣人が多いのだ。
「畏まった。
こちらに来る者に周知させておく。
『国を守るために、余計なことをするな!』と」
ランヴァルド王が言った。
「そうじゃのう。
儂もマサヨシと敵対したくはないな」
「それを言うなら私もです」
バルトール王とメイナード王が苦笑いしていた。
「他には?
まだあるのだろう?」
バルトール王が聞いてきた。
「そうですね、この森の開発でしょうか?
ある程度森林は残しますが、全て畑にします。
精霊の加護もありますので、作物の育ちは良くなるかと……」
もう、ベルマン辺境伯に気兼ねなく開発ができる。
クレイ先生に出張ってもらって、開発を進めるつもりだ。
「まあ、土地があっても耕す人が必要です。
ですから、移民を募集しないといけないでしょうね。
どこかの国の貴族たちが嘆いていたことが、バルテンの所のちゃんとしていないところでも起こるかもしれませんね」
俺が言うと、ランヴァルド王が苦笑いをしていた。
「伸びしろがあり過ぎて怖いのう」
「そうですね。
人手が無いことが発展の妨げになっているようですが、人手が手に入れば……」
バルトール王とメイナード王が頷く。
「いや、もうすぐ人手も手に入る。
事務方を連れてマティアスがドロアーテに来るはずだ」
ランヴァルド王が気付いた。
「そうなんですよ、結構あてにしています。
ドロアーテの下級官吏なんかも居残るらしいので、その辺を使いたいですね。
ある程度の大きさで村にする必要がありますから、村一つに官吏が最低一人は要る。
管理する人員を増やさないといけなくなるでしょう。
後の事を考えると、うちの孤児院の卒業生なんかも居ますが、経験のある官吏の下で育てる必要もありそうです。
ああ、王の下で孤児院の卒業生数人を研修させたりできないですかね?
誰か有能な者の下に着けてもらえると助かります」
「それはいいが、もし有能で我が国に置いておきたいということになったら?」
メイナード王が聞く。
「そういう時は本人に聞いてください。
本人が残りたいというのであれば残ればいいと思います。
強制はダメですよ?」
俺は言った。
すると、
「まあ、残しておいても、マサヨシの息がかかった者が国の中に食い込むか……」
と言ってメイナード王がニヤリと笑う。
「そこまでは考えていませんがね」
俺は苦笑いを返しておいた。
結局、人手不足。
何年かけてでも事務方を増やさないとなぁ。
とりあえず、マティアス元王に期待かね?
その日、ランヴァルド王、バルトール王とメイナード王が国に帰った。
あっ、一応うちまでの扉と引き出物を持たせた。
結果、何故か夕食時に我が家のように王や王妃がウロウロし、食事の時、テーブルに座っていたりする。
サラの飯が美味いらしい。
「自分ちで食べてくださいよぉ」
メイナード王が
「仕方ないであろう?
この場所の食事が美味いのだ」
と言った。
そしてメイナード王が少し考え、
「ここに修行に来させても?」
と聞いてきた。
「ああ、別に問題はないけども」
「だったらうちも」
バルトール王も、
「それならうちだって」
ランヴァルド王まで……。
ん?何で三人とも居る?
まあ、料理人は大歓迎。
孤児院で働いて、手伝ってもらえばいいと思う。
ついでに料理の勉強って事で。
そして、各国から調理人が集まる。
後々サラとエーリクを先生にして料理学校も有りかもしれない。
読んでいただきありがとうございます。




