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反乱の後始末

 家に帰るとリビングで酒を飲む重鎮たち。


 俺に押し付けやがって。


「で、どうなった?」

 グラスを片手にランヴァルド王が聞いてきた。

「ウルフは貴族の本音を聞かせたらセリュックから帰りましたよ。

 首謀者の貴族は催眠状態にしてあります。

 ウルフのいうことを聞くでしょうから、数日もしたらオセーレに戻るんじゃないですかね?

 参加した貴族の後始末は、王に任せます。

 俺の仕事は終わり!」

 俺が言うと、

「いいや、お前にはオセーレに来てもらうぞ」

 とランヴァルド王(オッサン)が言ってくる。

「ん?」

 あからさまにいやな顔をしていたと思う。

「解決したのはお前だ。

 既にマサヨシはランヴァルド王国の危機に関わっている。

 だから、お前は俺の横に立って結果を知る義務がある」

 との事。

「それは……」

「俺がマサヨシに押し付けた……と言いたいのだろ?」


 そりゃそうだろう。

 無茶振りのオーダーをこなして帰ってきたんだぞ?


 ランヴァルド王(オッサン)の問いに俺が頷くと、

「その通り、押し付けた。

 しかし、私の判断のお陰で反乱が収まったことも事実。

 ならば、反乱を納めた者が、裁きの場に居るのは当然」


 ふむ……。


「で、これは既定路線?

 ランヴァルド王の後ろ、イングリッドの横に俺が居るってことを国中に広めたかったとか?

 でないと、わざわざウルフを泳がせて反乱を起こさせたりしないだろう?」

 俺はランヴァルド王(オッサン)を指差しながら言った。

 ランヴァルド王はニヤリと笑うと、

「よくわかったな。

 俺の後ろ盾に王女イングリッドと今一番力があるノーラ・ノルデン侯爵、そして王子の反乱を治めたマサヨシが居るとなれば、下手に暴れようとする者は居なくなるよ。

 そして、今回の反乱の首謀者たちは消える。

 後はウルフの扱いだけ……」

 今まで見た中で一番悪い顔。

「廃嫡などしたら、後継ぎが居なくなるだろう?」

 俺が言うと、

「儂と同じじゃよ。

 気付かぬか?」

 笑いながらバルトール王がジョッキを持って俺に近づいてきた。

「魔族も人間より寿命が長いんだぞ?

 ウルフが廃嫡になろうが後釜を据えればいい。

 ほれ、王家の血筋の子を作ることができる者がここにおるではないか」

 バルトール王が俺とイングリッドを指差す。

「バルトール王は自分の子ではないと言っていた。

 しかし、ランヴァルド王は自分の子だろ?

 それはおかしくないか?」

 すると、

「いいや、おかしくはない。

 私は王国が長く続くほうを選ぶ。

 今のウルフが王位についたとしても、従うものは少なかろう。

 それでは王国当代はよくとも次代は続くまい。

 内乱が起こり、民が疲弊する。

 しかし、ノルデン侯爵と自治領主のマサヨシが後ろ盾のイングリッドの子が王位に就いてみろ?誰も異論を唱える者が居なくなる。

 私でさえ認めているのだからな

 だからそっちを選んだ訳だ」

 苦笑いしながらランヴァルド王(オッサン)は言った。


「ハア……こっちもか」


 子種要員?

 できるの確定?


「嫌ですか?」

 イングリッドが言う。

「いや『子供が欲しい』ってのはいいと思うんだが……、王位を予約されてるのもなぁ」

「私に妹か弟ができる可能性もありますから、とりあえずは子供ができたら伸び伸びと育てればいいのではないでしょうか?」

 イングリッドはランヴァルド王(オッサン)を見た。

 確かに長命種の魔族であるランヴァルド王(オッサン)も……。

「その可能性も無いわけではない」

 痛い所を突かれたのかランヴァルド王(オッサン)が苦笑い。

「王も仲がよろしいようで」

 俺が言うと、

「お前には負けるがな……。

 自治領主であろうが王であろうが跡継ぎを作るのも仕事。

 さて、私は何人の子を抱くことになるのやら」

 ランヴァルド王が言い返してくるのだった。



 次に俺はメイナード王を見る。


 もう無いよな。


 無意識に睨み付けていたようだ。

「マサヨシよ、目が怖いぞ。

 わっ儂の所は、落ち着いている。

 ホント、何も無いからな」

 両手を振って、全力で否定するメイナード王が居た。



 ------------------------

 当事者のノーラと俺がランヴァルド王(オッサン)の横に立ち、裁判の行方を見守る。

 一応後ろ盾。

 結局、ランヴァルド王は反乱の首謀者をウルフからベルゲン侯爵をはじめとした参加した貴族たちに置き換え、すべての罪を押し付けた。

 俺がランヴァルド王(オッサン)に真実を話し「ウルフは騙されてただの旗印になった」ということになったからだ。

 それはウルフを守るため。

 しかし、ウルフを処罰しない訳にはいかず、ウルフは継承権のはく奪をされ、ただの近衛騎士団の団長になった。

 貴族たちの領土は没収。

 ノルデン侯爵領に近い領土の一部がノルデン侯爵に割譲された。

 残った領地は王家が管理するということだ。


 苦笑いのノーラ。

「書類が増えるだけ」

 と呟いていた。



 はーーーーーーっ、もう終わりでいいんだろ?

 後は何も無いよな?


 頭を抱えそうになるのを抑えていた。

 家に帰り俺は自分で火酒のロックを作ると、自棄になって一気に飲んでいた。



読んでいただきありがとうございます。

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