表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/328

宿への帰り道

 手続きを終えて冒険者ギルドを出ると、もう夕方になっていた。

「あのお家に私たちが住むんですね」

 嬉しいのか、フィナが跳ねるようにして歩く。

「そうね、楽しそう。まだ、三姉妹だけど……ね」

「マサヨシのことだから、色々ある」

 二人とも不穏なことを言わない。

 だが、こういう会話が楽しいのも確かだ。

「色々準備しないとなあ。寝具、食器、調理器具、薪。何回か行って必要と思えるものを買わないとな」

 引っ越しは意外と労力の要るものだ。


「そういえば、クリス、魔石って何? 浴槽についてたり、照明についていたり」

「あぁ、魔力を流すことで、付与した魔法が使えるようになる。ただ、使える魔石が少ないから金額高いのが原因で普及していないの。今度のお風呂でも欲しいところだけど、結構な値段がしそうね」

「だったら、今の宿屋って高級宿屋?」

「そうです。お風呂の付いた宿屋なんて、貴族様や豪商、Aランクを超えるような冒険者ぐらいしか泊まりません。私は昨日が初めてでした」

 フィナが言う。

「ふーん、そうなんだ」

 一泊銀貨十枚の意味がそれか。


「クリス、魔石って買える?」

「魔石自体は買うことができるけど、私たちだったら、魔物を狩ったほうが良いと思うわ」

「付与とか俺でもできる?」

「わからない。魔石に付与する技術は秘密なの、一子相伝とか、まあ、それも金額が高くなる理由なんでしょうね」

 北斗○拳かよ。

「マサヨシ様なら何とかしそうです」

 コクコク。

 フィナがそう言うと、アイナが頷いた。

「あんまり期待しないでくれよな。まあ、今度、魔物から魔石が出てきたら、挑戦してみる」


 話をしながら通りを歩いていると、ガントの店の前に来た。

「こんにちは」

 表にガントさんがいたので、声をかけた。

「おう、いらっしゃい。フィナ、綺麗にしてもらってるな。手は出してもらったか?」

「まだなんです。手を出してくれないんです。でも、お風呂上りに髪を乾かしながらブラシで梳いてくれました。気持ちよかったです」

 フィナは、髪を乾かした時のことを思い出しているのか、上を向いてぽーっとしている。

「お前が幸せならいいんだ」

「はい幸せです。でも手を出してくれないのが不満です」

「はいはい、そのうちそうなったら手を出します」

 曖昧にごまかす。


「ところで、ガントさん。街でこの子を拾ったんだが、肩に隷属の紋章があった」

 アイナを呼び寄せガントさんに紋章を見せる。

「ふむ、その歳なら逃げてきたってのは難しいだろうなあ」

 ガントさんは顎に手を当て考えながら言った。

「名前も知らないって言ってたから、相当幼いころにここに来たのだと思う。逃走は無理だろうな」

「あとは、放り出されたってのが考えられる。貴族の後継ぎ争いでは、負けたほうの子供が幼ければ捨ててしまう時があるらしい。記憶もあいまいな年ごろの時にね。ただ、それでも生き残り自分の素性を知ることがあれば困る。事前に隷属の紋章を付け、自分に反抗できないようにするんだ」


「で、奴隷の所有者の上書きってしてもいいのか?」

「ああ、でかい魔力で強引に書き換えるって奴か。そんなことができる奴がいるなら見てみたい。良いかダメかで言えば、そりゃダメだろうな。紋章の中に追尾の式のようなものが入っていたら、紋章を作った魔法書士に知られる。まあ、その後の追跡は無理だろうが、情報が知れて近日中に貴族様が探し始める」

「そうか、この子……アイナの紋章は上書きしちまったからなぁ」

「えっ、お前書き換えたのか?」

「書き換えると、紋章って赤くなるんだろ?」

 俺は、クリスとアイナの書き換えをしている。その際、赤くなることを知っていた。

「あっ、ああ、赤くなる。そして二度と書き換えはできない」

 俺は、アイナの肩を見せる。

「黙っててな」

「おっお前。マジか」

 興奮しすぎ、唾が飛ぶ。

「そういうこと、あんたしか知らないから、アイナが追われたら、本気出すよ」

「おう、わかった」

 ガントの顔に汗が浮かぶ。

「ありがとう。借り一つだ。もし何かあったら声かけて」

 俺たちは店を出た。


 アイナの職業が姫の理由がぼんやり見えてきたな。王族か貴族の娘ってところだろう。何らかの理由で捨てられたって感じかな?その何らかってのはわからないが、今のアイナを見たら別にどうでもいい。俺はアイナを抱き寄せると頭を撫でた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ