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ベルマン辺境伯襲撃

誤字脱字の指摘、大変助かっております。


公爵の名前が安定せず申し訳ありません。


※しばらくお待ちください。



 迎賓館に帰ったが……ん? 誰もおらん。


 迎賓館を出ても、外には誰も居なかった。

 ただ、ワームズ部隊がウネウネ小屋へ戻る。

 同様にハニービーもブンブンと羽音をさせながら仲間とハイタッチして巣に戻っていく。

 キングもドヤ顔で柵の中に居た。


「クリス?」

 念話で呼んでみた。

「ああ、マサヨシ」

 と、返事があった。

「今どんな状態?」

「ドロアーテの領兵を無力化して大将のベルマン辺境伯を捕まえたところ。こっちの被害もあっちの被害も無し。リードラがドラゴンに戻っちゃったら向こうがびっくりしちゃって、シュガーアントとハニービーの毒であっという間に兵たちが痺れてコカトリス達の石化とワームズ部隊で縛って終わっちゃった。奴隷じゃないカリーネやラウラ、イングリッドにノーラ、クラーラまで強くなっちゃって大変だったんだから」

 ほっほぉ……何でだ?

 まあ、簡単に終わった訳だな。

「それで、今どこに?」

「城壁の門の前。ベルマン辺境伯も要るわ」

 それを聞き、アイナと共に門へ向かった。


 門までもう少しという所で、王たちとマリーさんを見つける。

「こっちは何とかなったようですね」

 俺が城門手前で話をしている王たちに話しかけた。

「帰ったか。凄いなお前の妻たちは」

「ああ、クリスにフィナ、マール、リードラの事ですか?」

「それだけじゃないぞ。うちのクラーラもどこから見つけたのかデカい斧を持って『体が軽いー』とか言って叫びながら戦っていた」

 バルトール王が笑う。

「クラーラ? なんで?」

「イングリッドもだな。見たことも無いような大きさの火球を出して兵士を脅していたぞ」

「そうね、背中から羽根を出して飛んだりしてたわ。普通は飛べないはずなのにね」

 と言ってランヴァルド王(オッサン)とマリーさんが笑っていた。

 〇ビルマン? 

 正確には〇ビルマンレディー?

「イングリッド? 魔法が使えるとは聞いていたけども……そこまでとは……」

「バストル家のラウラもドレスを着てレイピアを振るいながら前線で戦っていたな」

「まさか、ノーラやカリーネも?」

「ああそうだ、魔物の部隊も居たが、お前の妻たちでベルマン辺境伯の兵を殲滅した。それもどちらも無傷で」

「ほっほう……」

 としか言いようがない。


 冷汗が流れるね……。何でだ? 


「オウルはどうだった? お前が行ったんだ。何とかしたんだろう?」

 バルトール王が笑いながら俺に聞いてきた。

「マティアス王は『バルテン公爵に王位を譲る』と言って話は終わりましたよ。その辺の事が終われば俺んところに来るとか……。反乱治めた報酬か何かわかりませんが、ベルマン辺境伯の土地が俺の自治領に編入されることにななりました。」

「そうなのか? あいつが『王をやめる』と言ったのか? ってことはオースプリング王朝との対応は考えなきゃいかんな。バルテンでは国を運営できまい」

 バルトール王はめんどくさそうな顔をして言った。

「そうだな、信用の無い王ならば、我々も対応を考えねばいかん」

「私もそうですね。『マティアスだから』というのがありましたから」

 メイナード王も、ランヴァルト王も賛同する。

 うわっ、バルテン公爵、信用ねえなぁ。


「しかしなぜ『王をやめる』と言ったのでしょうか?」

 ランヴァルト王が口を開く。

「簡単だ。マティアスはマサヨシ……んー、いや違うな。多分その娘に何か残そうとしたんだろうな」

 バルトール王がそう言ってアイナの顔を見たあと、

「まずはベルマン辺境伯領を……。その後、バルテンが王になり力が弱くなれば、貴族たちは王以上の力を持つ者に近づくはず。だから、マティアスはお前のところに来ることにしたんだろう。マサヨシは元王であるマティアスを部下として使えるほどの男って事になる。過去の王以上の力を持つ男として認識されるわけだ。つまり、マサヨシのところに貴族が集まってくる。まあ、全部ではないだろうな。弱い王を操って甘い汁を吸おうとする奴も居るだろうしな」

 俺のほうを見てニヤリと笑う。

「向こうでもそれに近い話を聞きました。マティアス王にも言いましたが、俺が一番面倒なんですけど?」

 文句も言いたいところだが、

「「「それはそれだ」」」

 声を揃える王たち。

 そこ揃うんだ……。

「強いと知られた者の宿命だよ。お前が作った国なら、儂は遠慮なく国交を結ぶ。我が娘の夫だしな。その辺はマティアスが居れば大丈夫だろう。まあ、上手くやるんだな」

 バルトール王がガハハと笑った。


「マサヨシ、ミスラは?」

 心配そうにヘルゲ院長が現れた。

「ああ、無事です」

 ヘルゲ院長は一つ大きなため息をすると、

「そうか、ありがとう」

 と言った。

 ミスラの心配をしていたのだろう。

「今回の件でマティアス王が俺にベルマン辺境伯領を割譲してくれることになりました。マティアス王は退位後ベルマン辺境伯領都ドロアーテで政治をすることになっています。こんなんでいいんですかね?」

「マティアス王がそう言うならいいのだろう」

「ミスラはマティアス王退位後、時期を見てオースプリング王家の元を離れると言っていました。そして俺の騎士団の設立を手伝ってくれるそうです」

「そうか、ミスラが決めたのなら文句はない」

 ヘルゲ院長はうんうんと頷いた。


「で、これが? ベルマン辺境伯?」

 俺はしゃがみ込んで、縛られたおっさんを見た。

 恨めしそうに睨み返すベルマン辺境伯。

「そうじゃな、ベルマン辺境伯だ」

 ヘルゲ院長が教えてくれた。

「他の皆は?」

 クリスに聞くと、

「『いい汗かいたから』ってお風呂に行ったわよ。私はあなたが帰るまでココで後始末。私だってお風呂に入りたいんだから。聞いてよ! ベルマン辺境伯を探すの、大変だったのよ。顔しか出てないし、見たことないし。ヘルゲ院長に出てもらって、なんとか探してもらった訳」

「フーン」

 と、簡単に言うと、気に入らなかったのか

「それだけ?」

 と聞いてきた。

 ねぎらいの言葉ってのが必要らしい。

「ありがとな」

 そう言ってクリスの唇にキスをすると、

「バッ……バカ」

 クリスが赤くなって俯いた。


 俺はベルマン辺境伯を見下ろす。

 俺は収納カバンからオリハルコンのハサミを出すと、ベルマン辺境伯の目の前に出しニヤニヤしながら、ジョキジョキと刃を動かす。

「ひぃ」と声を上げるベルマン辺境伯。

「動くなよ。このハサミは、オリハルコンでできている。お前が動けば糸以外の物が切れる」

 俺も糸以外の物を切らないように真剣にオッサンの体にハサミを入れた。

「終わったぞ、立て」

 ん、上手くいった……と思ったのだが、ズボンが縦に切れていた。当然ズボンを支えるベルトも外れる。

 あっ、下半身が下着だけになった。

「悪い、ズボンが切れたようだな。まあ、変なものが切れなかったんで良しということで……」

 苦笑いの俺とヘルゲ院長。

 ズボンのウエスト部を引っ張り真っ赤になったベルマン辺境伯が、

「こっこの屈辱を……晴らさねば……」

 と呟いていた。


 その様子を見て、

「何を勘違いなさっているのですか?」

 と威圧的にヘルゲ院長が言う。

「バストル伯爵なぜここに」

 ベルマン辺境伯が聞いた。

「私はもう元伯爵。息子に家督を譲りましたからな。私の娘がこの男に嫁に行きましてな。まあ、それはよしとしましょう」

「私が勘違いをしていると?」

「わからないのですかな? 戦いを仕掛けてあなたは負けたのです。 それも完膚なきまでに……。あなたの生殺与奪権はこのマサヨシが持っていることに気付きませんかな?」

 頭だけが出た石ダルマや白い繭がそこら中に転がる。

 騎兵も居たようだが、馬は神馬の下に集まりフンフンと何かを話していた。


「儂も見ておったのう。完全に負けじゃな。それも、各国の王が居る場所に攻めてきたのだ。それなりの覚悟があっての事じゃろ?」

 そう言いながらバルトール王が出てくると、

「えっ……。なぜバルトール王が」

 髭モジャのオッサンに驚くベルマン辺境伯。

「おっ、儂の顔を知っておるか」

「何年か前、オウルにいらっしゃったときに、ご尊顔を拝したことが」

「そうであったか、この度儂の娘がこのマサヨシと結婚してな。今日はその式の日なのだ。お前らはそのめでたい式の日に攻めてきた訳だ」

「えっ、そのようなことは……バルテン公爵には聞いていない」

「聞いていないでは済まんのう。儂の娘もマサヨシの妻なんでな」

 そう言ってメイナード王も現れる。

「えっ、メッメイナード王」

「そうですね。バルテン公爵に聞いていないとはいえ、それでもこの場所へ攻め込むべきではなかった。ちなみにうちの娘もこのマサヨシの妻だからな」

「ランヴァルト王まで」

「知っておるか?………………なのじゃ」

 バルトール王がベルマン辺境伯に耳打ちする。

「えっ、このマサヨシ様が……」

 ベルマン辺境伯がめっちゃ驚いて俺を見た。

 あー、色々余計なことを吹き込んでるなぁ……。

「様」付けになったよ。

「えーっと、大丈夫?」

 ベルマン辺境伯に声をかけると、

「はっ、この度は申し訳ありませんでしたー!」

 ジャンピング土下座をするベルマン辺境伯。

 おお、この世界ってジャンピング土下座があったんだ。

「マサヨシ様がオウルでしたことは聞いていまして……マティアス王がその事に口を出さなかったのも知っています。おかしいとは思っていましたが、バルトール王から聞いたことで納得できました」


 何に納得したのやら。


 俺の方を向いてニヤニヤしているバルトール王。

「俺が王たちの義理の息子になるとは知らなかった訳ですね」

 ベルマン辺境伯が頷く。

「まあ、バルテン公爵も知らなかったのかもしれませんが……」

 俺は「ふぅ」と一つため息をつくと、

「本来は今回の事を知らないでは済まないんですが、こちらに被害が出ませんでしたからね。まあ許してあげます」

「ありがとうございます。」

 土下座継続のベルマン辺境伯。

「緩いのう。首を切ってもだれも文句は言わんだろうに」

「緩いな。皆殺しでもいいはずなんだが」

「緩いですね。このまま攻め込んでもいいはずなのに」

 三人の王が物騒なことを言う。

 するとベルマン辺境伯は震え始めた。

「俺もこれで何か被害が起こっていれば殺していましたけど、妻たちと魔物たちのおかげで被害も出ませんでしたし……命をとるまではしなくていいのではないかと……。ただし次は有りませんけどね」

「そうか? マサヨシがそれでいいなら、こちらも何も言わないが」

 バルトール王の言葉に頷くメイナード王とランヴァルド王(オッサン)

「今後の流れは王都より連絡があるでしょうが、マティアス王はバルテン公爵に王位を譲ります。その際の条件として、ベルマン辺境伯の土地を私が譲ってもらうことになりました」

「えっ、領地替え。そんなことを勝手に……」

「殺されなかっただけましだと思って欲しいのですが」

「そっ、そうですね。申し訳ありません」

「詳細は王都より連絡が来ると思います。領地を召し取られるのか別の領地に動くのかはわかりません。領地替えと、領地の召し取りじゃあ、天地の差でしょうが。オークレーン侯爵の後釜ってのもあるかもしれませんね。まあ、その辺はマティアス王が決めるでしょう

「畏まりました」

 ベルマン辺境伯は恐怖に震えながら頭を下げるのだった。


 ベルマン辺境伯も振り回されてるな。


 その後、俺の後ろにポチを護衛につけて、ベルマン辺境伯とともにオリハルコンのハサミで兵士たちを助けていく。

 石化したやつらはアイナが解除していく。

 何人かは落馬などで骨折をしていたが、そこは治療魔法を使い回復をした。

 結構な時間がかかったが、

「我々は負けた。その我々をこのマサヨシ殿が解放してくれた。まずはおとなしくドロアーテに帰ろう」

 と言うベルマン辺境伯の号令に、兵たちは力なく頷くと、ドロアーテの道をとぼとぼと帰り始めるのだった。


「あっ、馬忘れてる」

 と言うと、

「いいの、戦利品だから」

と、当たり前のようにクリスが言った。

「えっ、戦利品?」

「そうよ、負けた相手の命があるって言うのがそもそも珍しいの。本来このあと敗戦者から賠償金とか色々貰わなきゃいけないの。話に聞いた内容だと、ベルマン辺境伯領って人口少ない割に無駄に広いから。マサヨシが治めるなら面白い場所になりそうね」


 ベルマン辺境伯を見送り、

「まず一つ終わったな」

 と言って「ふう」とため息をついていると、カールが走って現れた。

「バルトール様! クルト様が城に入り『王位を奪う』と言っております」

「フン、儂がおらんのを知っていて行動を起こしたな。母親にでもそそのかされたか? でもあいつは執務室に一人で入れん。とはいえ、数人のドワーフが居ればなんとかなる……こりゃ時間が無いな」

 チラチラと俺を見るバルトール王。

「連れて行けって?」

「お前なら簡単だろう?」

「まあ、部屋の中に直接行けばいいですからね」

「じゃあ、頼む。クラーラも連れて行こう」

 そう言うと、バルトール王は俺の家に向かって歩き始めるのだった。



ここまで読んでいただきありがとうございました。



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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。 無料で読ませていただいているので、続きが読めないのは残念ですが、作者さんの体が第一なので、気持ちよく小説が書けるようになったら、また、ボチボチ続きを書いていただけたら、嬉し…
[一言] 個人的に、主人公が人や魔物殺したり、転移直後に死体見ても何もリアクションがないのは不気味だと思う
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