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結婚式

誤字脱字の指摘、大変助かっております。

 家に帰るとマルティナさんとマリーさんしかいない?

「あっ、おはようございます」

 ああ、皆潰れているのね。

 酒が強いはずのリードラ、イングリッド、マール、クラーラでさえ潰れて横になっていた。

 ただ、キラキラで隠す物は無いようで安心した。

「あらあら、もう朝なのね」

 ニッコリと笑うマリーさん。

 この人、酔ってないよな。

「お前らもほどほどにしないとダメだろう」

 そう言いながら、婚約者たちのアルコールを抜くと、

「イングリッドやマールよりも強いとは思わなかったのじゃ」

 リードラが起き上がりながら言った。

 母、おそるべし……か。


 魔法で皆を回復させる俺。

「マサヨシさんはそんな事もできるんですね」

 それに感心するマリーさん。

「まあ、いろいろ考えていたらできた感じです」

「一応私たちにも魔法をかけてもらえないかしら」

「そうね、花嫁の母親がお酒臭いのも良くないわ」

 マルティナさんとマリーさんが言う。

「一応」なのね……。

 なくても大丈夫なんだろう。

 さすが、魔族は酒に強い。その中でも二人は上位なのだろうな。

 俺が魔法をかけると。

「んースッキリ。これいいわね」

「んー、気持ちいい。もう一晩飲めるわ」

 マルティナさんとマリーさんが伸びをした。

 そのあと、

「さあ、みんな準備よ! 人生最良の日にしないと」

 と言って、マルティナさんが声をかけると、婚約者たちがゾンビのようにもぞもぞと動き始める。

 そして、迎賓館へ向かうのだった。

 酒は抜けても、徹夜の疲れが残るか……。みんな頑張れ。



 迎賓館の祭壇にあるステンドグラスからの色とりどりの光が降り注ぐ。

 祭壇の下に全ての参加者が集まり、祭壇の前には白のスーツを着た俺一人。

 祭壇には、契約書と十一個のヒヒイロカネの指輪が置いてある。

 テロフがしずしずと、パイプオルガンに似た楽器の前に行き楽器を弾き始めた。

 その音色が響くと真っ白な生地の縁に青の帯が入った神官服に同じ柄の神官用の帽子を着たアイナを先頭に、ウェディングドレスに身を包んだ十人の花嫁たちが現れる。

 すると、白いウェディングドレスがステンドグラスからの光で染まるのだった。

 

 疲れは……大丈夫っぽいな。

 ん?でも、何で十人?

 ちゃっかりカリーネと手を繋ぎ、白いドレスを着たエリスが居る。

 ベールで見え辛いが皆が笑っていた。


 祭壇の前に立つ俺。

 今更だが結婚式を再び行うことになるなんて思わなかったな。

 基本は一回のはずなんだがね。

 ただ、冷たくなった妻の傍で泣いていた。

 その妻に呪われ、この世界へ連れて来られた俺。

 いろいろ気にしているうちにいろいろ増えた。

 良いのか悪いのかわからんが、色々あってこいつらと居ると楽しいや。

 今さらながら思うよ、妻よこの世界に連れてきてくれてありがとう。


 アイナが真剣な面持ちで祭壇の中央に立ち、俺と他の花嫁がアイナに向いて立つと、テロフの音楽が止まり式が始まる。

 聖女モードのアイナ。

「聖女たる私、アイナがこの者たちの結婚式を執り行う。まずは、この結婚式に異論のある者は名乗り出るように」

 と参加者に聞いた。

 しばらくの沈黙のあと、

「新郎であるマサヨシよここへ」

 俺はアイナに導かれアイナの隣に立つと、

「ここは契約の場所。そして向こうにはこの結婚を見届ける立会人。マサヨシに聞く。お前はこの女たちをどんな時にでも敬いなぐさめ助けて変わることなく愛するか?できるのであれば『肯定の言葉』を、できぬのであれば『否定の言葉』を!」

 と、俺に言葉を求めた。

 俺は大きく息を吸い込み、

「愛します!」

 と叫ぶ。


「うむ、マサヨシの言葉を『肯定』とみなす」

 アイナが大きく頷きながら言った。

「さて、そこの女たち、このマサヨシをどんな時にでも敬いなぐさめ助けて変わることなく愛するか?できるのであれば『肯定の言葉』を、できぬのであれば『否定の言葉』を!」

 皆はお互いに顔を見ると声を合わせ叫ぶ。

『愛します!』

「うむ、女たちの言葉を『肯定』とみなす」

 アイナが再び大きく頷いた。


「それでは、契約書へ記入を」

 アイナが祭壇の前に置いてあった契約書を持ち、羽ペンを持って一人一人の前へ行った。

 この世界では結婚も契約と言うことだった。

 契約書にはすでに俺の名前が書いてあるため、名前を記入すると契約書として成立する。

 神に提出する婚姻届けって感じだ。


 アイナが言うには、「この契約書は人生最大の契約」らしい。

「一度書いてしまうと正式な手続きをして離婚しない限り、死ぬまで離れられない」

 ということだった。


 クリス、フィナ、マール、リードラ、カリーネ、イングリッド、ラウラ、ノーラ、クラーラの順で名前を記入し、最後にアイナが自分の名前を書く。

 ん?

 カリーネ、イングリッド、ラウラ、ノーラ、クラーラの五人がうっすらと輝いたような気がした。


「これで、結婚の契約は成立した。新郎よ成立を証明する指輪を皆の手に!」

 俺はアイナから指輪を受け取ると順に左手の薬指につけていく。

 アイナまで終わると、

「新婦は代表者が」

 静々とクリスが前に出ると俺の左手の薬指に指輪をつけ、元の位置に戻った。


 そう言えば、最後はキスだよな。


 そんなことを思いながら俺の横に立つアイナを見ていると、

「それでは、結婚が成立したことを皆に見せつけるためのキスを……」

 と言うアイナ。

 見せつけるって何?

 などと思って驚いていると、

「私が最初に!」

 と、言って急に俺の方を向いて抱き付きキスを始めた。


 唖然とする妻たち。

「あーーーーーー! 何やってんのよ、私が最初でしょ?私が最初にマサヨシに会ったんだから」

 クリスが駆け寄りアイナを引きはがそうとする。

「もう遅い、私が結婚して最初のキスを貰った」

 振り返ってニヤリと笑うアイナ。

 二人で言い争うが、

「そんなことで揉めておるのはクリスだけじゃ。アイナが終わったのじゃ、並び順で良いじゃろう?」

 大人なリードラが止めた。

「私だけが我儘みたいじゃない」

 クリスがぶつぶつ言いながら列に戻った。

「ぷっ、クリスだけが我儘」

 クスクスと笑うクラーラ。

「クラーラ、あとで……」

 俺はさっと近寄ると、

「クリス、『覚えてなさい!』と続くんだろうが、今日はめでたい日だろ?怒るのは無しだ」

 俺はそう言った後ベールを上げ、クリスを俺の方に向けると唇を奪った。

 その後は並び順でキスをする。

 エリスも「私も」と言って加わる。

 最後にエリスを抱き上げて頬にキスをすると、それを見届けたアイナが、

「これで結婚式を終える。参加者たちよ、この者たちに祝福を!」

 と声高らかに叫び、参加者の拍手の中、結婚式が終わるのだった。



 そしてしばらく時間を置き、昼前に披露宴が始まる。

 会場には俺と妻たちの机が並び、中央に俺。

 俺の右にクリス、アイナ、マール、カリーネ、ラウラ、ノーラが、左にフィナ、リードラ、イングリッド、クラーラと座っていた。

 出会った順らしい。決めたのはクリス。

 服装は俺が黒のスーツにホーリードラゴンのローブ。

 定位置ということで、アグラが俺の肩に乗っている。

 クリスが黄色、フィナが青、アイナは薄い緑、マールが黒、リードラがクリーム、カリーネが赤、ラウラがオレンジ、イングリッドが濃い紫でノーラが薄い紫、クラーラがチョコレートブラウンのドレスに着替えていた。


 座席はメイナード王、バルトール王、そしてランヴァルド王夫妻、マルティナさん、ヘルゲ院長を俺たちの正面中央のテーブルに、マールの両親はグレッグさん、リムルさん、ルーザさんとガントさんが少し離れたテーブルに。

 さすがに、王たちと一緒と言うのは胃に悪いそうだ。

 他の者も配置通り、席に着く。


 俺は「ゴホン」と咳払いをすると、

「えーっと、聞いた話では、この食事で新郎の力量を量ると聞いています。今私の出来うる料理と酒を準備したつもりです。楽しんで帰ってください」

 俺が始まりの挨拶をすると、予定通りのダンジョンで得た魚の塩釜焼きが現れた。

「おぉ」

 半身とはいえ巨大な魚、驚きの声が上がる。

 そして、焼きあがった匂いで会場が満たされた。

 すると、年長の子供たちが、甲斐甲斐しくテーブルをまわり、酒と料理を出しはじめる。


 しばらく歓談が続いていると、ヘルゲ院長にセバスチャンが近づき耳打ちをした。

 驚いた顔をするヘルゲ院長。

 すぐに俺を見ると手招きをした。

 それに従い、ヘルゲ院長の元へ行く。

「オウルで反乱だ」

 と焦った声で言った。

 それを聞いたメイナード王が

「マティアスのところで何かあったのであろう?」

 と、落ち着いた声で言う。

「知っておられたのですか?」

「ヘルゲ殿それなりには知っておるぞ。何度かの揉め事で、こいつの力が強すぎてマティアスの力が弱くなったと勘違いしたようだな」

 俺を指差すメイナード王。

「ん?俺?」

 スルーされた。

「そのせいか王弟であるバルテン公爵が『兄は弱い。私はあのような者に負けない』と吹聴していると聞いた。その話に乗った貴族たちがバルテン公爵と共に反乱を起こしたのであろうな」


「あー……それを言うなら私のところもですね。ウルフの奴は、マサヨシにやられた商人が居る貴族たちにいろいろ言われていた。大好きなイングリッドをとられ、論戦に負け、マサヨシを恨んでいる。俺がマサヨシを贔屓しているように見えたのかもしれません」

 ランヴァルド王(オッサン)が面倒臭そうに言う。

 シスコン極まれり?

「何かあったら要はお前のせいだ。後始末はお前に任せるよ」


「儂のところも多分。クラーラの弟、クルトが何か考えているようだ。儂が居なくなった機会を見計らって、何か行動を起こすかな?『誰かさんの子供を跡取りにするかも』って言っちまったせいで、クルトもクルトの母親も焦ってたからなぁ」

 ポリポリと大きな鼻を掻くバルトール王。


「そういう揉め事は終わらせてから来て欲しい。あっオッサンもオヤジさんも俺に何とかさせようと狙ってるだろ?だから、わざと単独でここに来たのか……。王が居なくなれば、不満分子は動きやすいからな。どうせ、何か行動があればすぐに連絡が来るようにしてあるんじゃないのか?」

 二人の王は目を合わさない。

「まさか、人の結婚式に事が起こったりはしないだろうな……」

 再び目を逸らす二人。

「起こるんだな……」

 念を押して聞く。

 すると、諦めろとでも言うように、

「お前の自治領が表に出る機会だろうに。儂らの揉め事を解決させて華を持たせてやろうかとな」

 バルトール王が笑った。

「圧倒的上位から血が流れない戦いがお前ならできるだろ?」

 便乗でランヴァルド王が言う。

「面倒事を押し付けないで欲しいんだけど……」

口笛を吹いたり目線を逸らしたりする二人。

「まあ、あんたらが動いていないってことは、ドワーフんとこも魔族のとこも今のところはイベントが発生していないってことか」

「今のところはな」

 バルトール王が言うと、ランヴァルド王(オッサン)も頷いていた。


 そんな事よりは、ヘルゲ院長が気になるのはマティアス王とミスラの事。

「まともに王を守るのは騎士団の一部だろう。主にミスラの部隊だけであろう。行って貰えんか?」

 ヘルゲ院長が「急げ」という目で俺を見て言った。

「義理とはいえ兄貴ですからね。俺としては助けない理由はない。それにマティアス王は非公式とはいえ、義理のオヤジだしな」

 俺は振り返る。

「アイナ、行くぞ。マティアス王が危険らしい」

 というと、嫌な顔をするかと思ったが、

「わかった。この格好で行く。今持ってるのでヘブンワームの服が一番強い」

 そう言って、「ビッ」っと音をさせドレスのスカートの部分がひざ下ぐらいで外れた。

「外れるようにしていたの。このほうが動きやすいでしょ?」

 アイナがニコリと笑う。

 皆こんな感じの細工はしてあるようだ。確かにヘル&ヘブンワームの服は下手な鎧より強い。

「クリス、残ったみんなを頼む。披露宴を続けてくれ。敵対勢力が来た場合、状況によっては、ポチやリルのワンコ部隊。ワームズのような糸繰り部隊。シュガーアントやハニービーのような甘味部隊を使っても良し」

「わかったわ」

 クリスは頷いた。

「じゃ、任せた」


 会場を出る前に、

「アクセル。俺は今からオウルへ向かう。反乱らしい。マティアス王については俺に任せておけ。お前は今からアビゲイル様を連れてこい。今のお前とテオドラなら問題ない」

 と声をかけた。

「しかし……」

 尻込みをするアクセル。

「反乱を治めたら何とかしてやるから行ってこい! 変にアビゲイル様が使われるほうが面倒なんだよ。これはお前用に作っておいたカーヴ行きの転移の扉だ」

 俺は扉を出して、壁際に置いた。

 アクセルの手を取り、登録を終わらせる。

「俺が帰るまでに助けておけ。手を握って拐ってきたらいいからな。扉は閉めろよ」

 俺はアクセルにそう言うとすぐ、オウルの王の部屋にアイナと向かうのだった。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

私の手違いで死んでいたルーマン公爵を出してしまいました。

ヘルマン公爵に変更しております。

申し訳ありませんでした。

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