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式の食事

諸事情……まあ、精神的に病んでいたのと、体調がすぐれなかったのがありまして、しばらく更新しておりませんでした。ご迷惑おかけしました。

ぼちぼちですが更新を再開します。

引き続き、拙い文章ではありますが読んでいただけると幸いです。



誤字脱字の指摘、大変助かっております。

 俺が外出しない時は皆での朝食が終わると一息つく時間になる。

 カリーネ、ラウラ、ノーラが出勤するのを見送ると、リビングのソファーで大の字になり寛いでいた。

 紅茶のいい匂いがするとカチャリと小さな音がする。

 音のするほうを見ると、

「旦那様、紅茶をお持ちしました」

 そこにはテーブルの上に紅茶を置き、胸にトレイを抱えて優しげに笑うマールが居た。

「ああ、ありがとう」

 一口啜る。

「これはロイヤルティーバードの茶葉か?」

「はい、旦那様が買ってきてくれた茶葉になります」

「マールが淹れるとうまい」

 俺がそう言うと、マールは嬉しそうだ。


 紅茶を飲み終わり、

「マール、サラの所へ行くんだが」

 と言うと、マールは

「旦那様、私もご一緒しても?」

 と聞いてきた。

 俺が何か新しい食べ物を作ると思っているのか、マールは期待の目で見ていた。


 サラは調理場に入る俺を見つけると、

「マサヨシ様、何か御用でしょうか?」

 と聞いてきた。

「ん? 結婚式のことなんだがいいか?」

「お決まりになったのですね?」

 両手を胸の前に置き、本当に嬉しそうなサラ。

「正直言うと何も決まっていない。それでも食事の相談をしておこうかと。エーリクにも聞かないといけないんだがね」

「そうですか、それで相談とは?」

「三段ぐらいの塔のようなケーキを作れないだろうか? 基礎は金属で作り、金属の台にケーキを置き、台はレースやリボンで飾り付ける。目立つだろ? 一番上のケーキは二段にして、計四段の塔だ」

 つまり、ウエディングケーキ。

 ケーキのない世界にウエディングケーキ、目立つだろうな。

 俺は簡単な図を書いてサラに説明した。

「土台は?」

「ドランさんに頼んでみる。大体二メートル越えでいいんじゃないかな?」

「にっ、二メートルですか」

 サラは驚いていた。

「ありゃ、順番が逆だったな。ドランさんに頼んでくるよ。土台ができたら頼む」

「わかりました、私としても土台があったほうがイメージが湧きます」

「わかった」


 さて、ドランさん所に行くんだが、

「マールも来るのか?」

「お邪魔でしょうか?」

「別に。ただ、面白いもんはないと思うがね」

「面白いもの見たさで一緒に居るわけではありません、一緒に居たいから一緒に居るのです」

 ちょっと膨れるマール。

「そりゃ申しわけない」

 俺は頭を掻きながら謝った。


 結局マールもドランさんの鍛冶屋に来てしまった。

「女連れとは珍しいな」

「マールと申します、以後お見知りおきを」

「アンタはたまに見るから知ってるぞ」

 確かに、ドランさんがここに来てから結構経つからなあ。

「で、何の用だ?  わざわざ女の話をしに来た訳ではないだろう?」

「ああ、ケーキを載せる土台を作ってもらいたい。イメージは塔だ」

 地面に図を描く。

「ふむ、だったら綺麗な飾りもつけたほうがいいな。金と銀、ヒヒイロカネの赤、時間はあるのか?」

 髭を弄りながらドランさんが聞いてきた。

「そうだな、できたら今年中には式をしたい。つまりあと二ヶ月ほど。できれば早い方がいいな」

「最近は武器の需要が少なくて、ハサミや針なんかを作って暇だったんだ。まあこれも武器ではないが、ドワーフの技術って奴を見せてやろう」

 ドランさんはニヤリと笑う。

「じゃあ、よろしく」

 そう言うと、俺はドランさんの元を離れた。


 次はエーリクの元へ向かう。

「エーリク、頼みがあるんだが」

「はい?」

「俺の結婚式の料理を作って欲しい」

「えっ? 私がですか?」

「そうだ。どういう人が来るかは何となくわかるだろ?」

「ははは、錚々(そうそう)たる人達ですね。今から手が震えます」

 から笑いのエーリクだった。

 しかし、

「食材は結構あるぞ? サイクロプスの高位種……」

「えっサイクロプス? サイクロプスを料理できる?」

 目の色が変わるエーリク。

「そういえばダンジョンで襲ってきた巨大な魚も居たなぁ、見てみるか?」

「えっ、ええ」

 俺は収納カバンからドンと調理場の上に魚を置いた。

 はっきりと見たことは無かったが、十五メートルぐらいある。

「凄いですね、こんなの見たことが無い」

 ふと思い浮かんだ。

「これ、塩釜焼きにするか」

 何となく美味そうかなと思って作ったことのある料理だ。

 岩塩あるし、あー卵白が要るな。コカトリスの卵の在庫で足りるかね。

「エーリクさん、入ります」

 と言って調理場の扉を開けた女生徒の一人が、目の前にある肉食魚の大きな口に驚き気を失う。

「ありゃ、いかん」

 俺は魚を仕舞った。

 長椅子に女生徒を寝かせる。

「それで、塩釜というのは?」

 エーリクが聞いてきた。

「簡単な料理だよ、魚の周りに卵白と塩を混ぜたものを塗って包む。あとはオーブンで焼けば出来上がる。まあ、火に包んでもいい」

「あの魚だと大きすぎて入るオーブンがありませんね。野焼きにして、炭状になった木を回りに置けば火の通りがよくなると思います」

「作ってみるか? 何か魚あるか?」

「あ、余ったマスがありますが」

「うし、エーリク、この卵から白身を抜いて、粉末状の岩塩と混ぜて」

「はい」

 俺はフライパンの上にエーリクの作った塩を乗せ、上に四十センチぐらいのマスを置きそのマスに塩を塗りたくる。

 あの時は鯛だったが、マスで行けるのかね? 

 とりあえず出来上がったものに蓋をして蒸し焼きにした。

 三十分ぐらい置いて……と。


 蓋を外すと、ちょっと焦げ目。

 あとは割ってと……。

 塩を外して……。

 摘まんでみる……。

「うまっ、マールもエーリクも食ってみろ」

 マールもエーリクもフォークで少し取ると、

「あっ、美味しい」

「良い塩味だ」

 という声がでた。

「だろ?」

「コレなら結婚式で出せるかも。あの大きさなら三枚におろして、片身を使うほうがいいかもしれない、塩は皮のほうだけ、置く場所場所には香草も置いて匂いもつけてもいいですね。塩味に合わせたソースをかける」

「台も要るな。あとは皿も……。バカでかいやつ」

「そうですね、そういう無駄な物を持っているのは権力の証ですからいいのではないですか? 『結婚式のためにわざわざ』って感じがいいと思います」

「そうか?」

「私もやる気になってきました。魚料理はダンジョンの魚の塩釜で、肉料理はサイクロプスの腕のステーキでコースは考えます。デザートはサラさんなんでしょ?」

「ああ、ドデカいケーキを作ってもらう予定」

 あと、あっさり系も考えないとな。サラに丸投げするか……。


「着々と進むのは楽しいですね」

 マールが嬉しそうに言った。

「マールのドレスはどんな感じ?」

「それは内緒です」

 ニコニコしながらマールは言った。

「皆と相談しないとな。日付決めて、招待状送って、準備して……」

「旦那様のお召し物は?」

「一応、銀狼族に頼んではあるが。あとで確認しないと」


 一人対一人だけでも忙しかった結婚式の準備、どうなるのかね……。



ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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