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誤字脱字の指摘、大変助かっております。

 ベンヤミンが走ってきた。

「旦那、アウグストの館の補修が終わったぞ。あれなら旦那の自治領の迎賓館として十分活用できる。ちょっと来てくれ」

 ベンヤミンに任せっきりだったクリスの母ちゃんの館。出来上がったらしい。

 外壁に囲まれ、中の様子は見られなかったが、入口で先生モードのイングリッドが足を止め、中の様子をよく覗いていたのを覚えている。

 あいつもアウグスト好きだからな


 そのあと、俺はベンヤミンに引き摺られるように館まで連れて行かれた。

 入ると正面に噴水。そしてそれがロータリーになっており、馬車で玄関に横づけできるようになっている。

 そして綺麗に切りそろえられた庭木。

「いいだろう? この雰囲気。これがアウグストの作品だ。さあ、中に入ってみてくれ」

 ベンヤミンは玄関の扉を開けて中に入る、俺はそれに続いて中に入った。

 ガラス窓から日が差し込むホールが広がる。

「旦那、あそこに魔力を流して魔光燈を点けてくれるかね」

 柱にある板へ魔力を流し込むと、壁面にあるろうそく型の魔光燈やシャンデリア型の魔光燈が輝き始め、中がさらに明るくなった。

 長期の放置で煤けていたはずの装飾は綺麗に汚れが取り払われ、鮮やかな色に戻っている。

 しかし、その装飾も嫌味なほどではない。

「コレなら、旦那の結婚披露をするには十分だ。アウグストの館を持っている貴族なんて居ない。そこら辺の貴族なんて目じゃないぞ」

 興奮し鼻息荒くベンヤミンが言った。


「すごいな、これがこの館の元の姿。さすがベンヤミンってとこか」

「へへへ、これでも結構苦労したんだぞ。でもそのお陰でいろいろ勉強させてもらった。俺もだが弟子たちもだな。これで俺のたちの仕事も終わりなんだが……」

 ベンヤミンは言葉を濁す。

 そうか、元々孤児院関係の仕事で入って、この館を直したいっていうことで残ってもらっていた。館の補修が終わればベンヤミンたちは去る。


「もうしばらくここに居させてもらっても良いか?」

 申しわけなさそうにベンヤミンが言った。

「それは居てもらえれば俺は助かるけども、大丈夫なのか?」

「大丈夫も何も次の仕事が決まっていないからな。どうせ、旦那のところの大工の仕事は今後増えるんだろ? 旦那の土地に人が入ればその家を建てる必要が出てくる。中古の家を貰ってきてもボーのオヤジさんたちだけじゃ心もとない。もしかしたら旦那がアウグストの作品をまた見つけてくれるかもしれない。それに旦那の傍に居れば、上手い飯が三食、それも酒付きの生活がタダでできる。こんな場所はこの世界探したって無いんだよ」

 色々理由を言っているが、結局食い物か……。

 まあ、ベンヤミンが居てくれれば助かるのは間違いない。

「一応確認しておくけども、ここに移住するって事でいいんだな?」

「そう考えてもらっていい。孤児の指導もするぞ」

 ニヤリと笑いながら、ベンヤミンが言った。

「ただな、できればドワーフの女が居てくれるといいかなぁ。俺もだが弟子たちも身を固めたいが、周りには旦那の手付きか、孤児しかいない訳だ……。さすがに孤児院の子に手を出したらダメだろ?」

「うん、強姦なんかしたら普通に再起不能にする。何なら装備無しでダンジョンのボスと戦ってもらう」

 能面のような顔で軽く威圧しながら言うと、

「いやいや、旦那、俺も弟子もそんなことしないから……その威圧やめろ!」

 と冷汗をかきながらベンヤミンが言った。

 俺が威圧をやめると、

「旦那、アンタの威圧はシャレにならん」

 ベンヤミンはそう言った後溜息をつき、そして、

「えーっと続きだな。できたらリンミカへの扉を作って欲しい。そしたら、飲みに行ってドワーフの娘に会える機会が増える。あとは俺たちが頑張ればいい」

 と言った。

「あるよ、リンミカ行きの扉」

 俺がそう言うと、

 ベンヤミンは目を大きくして驚いた。

 そして俺の両肩を持ち、

「本当か?」

 と言って揺さぶる。

「落ち着け、ベンヤミン。知ってるだろ? カールってドワーフが居る店」

 俺はベンヤミンの手を外しながら言った。

「ああ、確か貴金属を扱っている店の? にしても旦那、ドワーフの手を簡単に外すなんて相変わらずの力だな。おー痛い……」

 ベンヤミンは手を振る。

「あの店からリンミカにあるブロルの店の本店に繋がってる。登録すれば使えるぞ。ただ、向こうに話す必要があるから今すぐってわけにはいかないけどな」

「おう、それでいいから、頼んでもらえるか?」

「ああ分かった」


 俺はそう言ったあと、ふと疑問が浮かんだ。

「ちなみにドワーフってドワーフ同士の結婚にこだわるのか?」

 クラーラのオヤジさんにも聞いてみたこと。

 ベンヤミンは腕を組んで考えると、

「種族にこだわるエルフとは違うさ。だからドワーフじゃないといけないとは思わない。ただ、俺らドワーフは酒を好む。だから俺たちと同じくらい酒が飲めないとダメだ。それも楽しく飲めないとな。その結果、体質的にドワーフ同士くっつくことが多くなる訳だ」

 と言った。

 確かにクラーラのオヤジさんの数代前にオーガを妻にしたって言ってたな。

 ドワーフとオーガの娘なら力的にも酒の強さ的にも豪快さ的にも似てそうだ。

 結局ドワーフの特性と性格により、ドワーフに近い同士がくっついて、純血に近い状態が維持される。

 もし、別種族とくっついても、酒が強い者同士だから「酒が強い」って要素は残るって事なんだろう。

「じゃあ、旦那、頼んだぜ。あと、これこの館の鍵な」

 そう言って、鍵の束を俺に渡すとベンヤミンが去っていった。


 さて、カールに言ってブロルに話をつけてもらわないとな。

 あー、俺たちの式の準備もある。

 一回ランヴァルド王(オッサン)にちゃんと聞いておくかなぁ。

 そう思いながら館の玄関を閉めるのだった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

ちょっと考えたら、何となくこんな感じになりました。

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