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夏がきた

誤字脱字の指摘、大変助かっております。

 色々やっているうちに夏になっていた。

 暑さを覚悟していたが、日本の茹だるような暑さに比べたら、楽なもんである。

 地面がアスファルトに覆われてないから? 

 室外機からでる温風がないから?

 アイナに聞いたら、こんなもんらしい。

 一応作った精霊エアコンもフル稼働にはならず、精霊も楽勝な感じで緩めの冷気を出している。

 まあ、孤児院の子供たちが熱中症にならなきゃいいか。

 あと蚊も居ない。

 快適である。


 俺は、暇なときにボーとその弟子たちに作って貰った縁台をキングの牧場の柵の横に出し、懐かしさの勢いで作ったアイスクリンを椀に入れ食べていた。

「何食ってんの?」って感じでキングが覗きに来る。


 昔はじいさんなんかに連れられて夜市や夏祭りに行ったら、必ずアイスクリンを売っていた。

 いろんな色のコーンがあって、青や緑をねだった記憶がある。

 懐かしい……。


 などと過去を振り返っていると、

「りょうしゅさまー、それおいしそう」

 俺に気付いた一人の女の子が指を咥えてやってきた。

「ん? 食うか」

 そう俺が言うと、

 コクりとうなずく。

 スプーンに一杯山盛りのアイスクリンを掬い、その女の子に食べさせた。

「つめたくて、おいしーい」

 女の子はすごく喜んでいた。

 俺は口に人差し指を当て、

「みんなの分がないから黙っててな」

 と言う。

 そんな俺の言葉を聞き、女の子は

「うん、わかったー」

 と言って去っていくのだった。


 その数分後、スプーンを持った子供たちが続々と現れる。

「何?」

 なぜかエリスも混じっている。エリスは

「お父さん、スプーン持ってきたら冷たいお菓子が食べられるって本当?」

「いや、そんなことは一言も言ってないが」

「『スプーンを持って領主様のところへいったら、冷たいお菓子を食べさせてくれる』って女の子が言ってたけど」

 ん? 

 あの女の子は「アイスクリン」ではなく「スプーン」の数がみんなに足りないから食べさせられないと思ったのかね。

 でも俺の「黙っててな」の効力がゼロだったのは悲しいぞ。


 続々と子供が集まってきた。

 先生モードのイングリッド登場。

 獣人のおばちゃんやベンヤミンまで集まる。

 あー、サラもマールもクリスも居るね。

 リードラはなぜモデル立ち? 

 アイナとフィナがスプーンを咥えている。ちょっと可愛い。

 何でヘルゲ院長が? 

 ああ、おもしろそうだからね。了解了解。

 あっ、アクセルとテオドラも居る。


 出勤していない俺んちがらみの者たちがほぼ集まった。

 みんな集まっても、量がない訳だが……。

 作らにゃいかんのだろうね。

「サラ、マールと一緒に大きめのボール三つ四つとってきてくれ」

 俺が追加でアイスクリンを作ろうとしていることに気付いたのだろう。

「「はい!」」

 と言って二人はいそいそと家に向かった。

 牛乳はある。砂糖もある。蜂蜜もある。塩少々は隠し味。材料は揃ってる。

 あとは冷やすもの……氷に塩ふって使うか。


「お待たせしました」

 サラとマールが大きなボールを二つずつ持って現れた。

 早速アイスクリンを作る。

 二つのボールに氷を入れ、ドバドバと塩を入れる。残りの二つに材料を入れ泡立て器で撹拌。

 そのボールを塩による凝固点降下で冷えているボールの上に置き凍らせていく。固まりきる前にスプーンで混ぜ、再び凍らせて出来上がり。

 あっリルに冷やしてもらってもよかった。


 結構時間がかかったが、皆待っていた。

「お前ら食いたいか!」

 って感じで声をかけると「おー」って感じで帰ってくる。

 ノリでやっただけだが、皆が乗ってくれて安心。

「順番に掬って食ってくれ」

 そう言うと、子供たちから順番に掬って食べ始めた。

「サラ、簡単なお菓子だろ? 店で出すもよし、任せる」

「わかりました。これも色々な味付けができそうです。いろいろやってみますね」


 皆の様子を見ていると、

「冷たくて旨い。いい菓子だな」

 そう言ってヘルゲ院長が現れた。

「急だったからこれが精一杯。申し訳ないね。本当は一人で食べるつもりだったから量を作ってなかったんだ」

「まあ、お前が見つかったから皆が美味しいものを食べることができた。その子に感謝だな。それに、なんか祭りっぽくていいぞ」

 そういえば俺んところって祭りがないよな。やった方がいいのかね。


 話が終わりボールを置いてある場所に行くと、

 子供たちが、

「りょうしゅさまー、もうないよ」

「もっと食べたいー」

「もっと、もっと、…………」

 と連呼を始めた。

「今日は無理かなあ」

 と、俺は言う。

「えー」

「もう少し食べたいよ」

 と不満の声が上がる。

「エーリクにレシピを教えて孤児院の食堂でも出してもらえるようにするから、それで我慢だな」

 子供たちも、

「食堂でも食べられるならいいね」

「うん」

「ご褒美とかでも出そうだし」

 と言って納得してくれたようだ。


 結局一口二口しかアイスクリンを食べられなかった。

 ってことで調理場でアイスクリンを製造中。

 俺とカリーネとラウラとノーラ、そしてクラーラの分……のつもりなんだが、振り向くとスプーンを持った我が家の住人たち。

「お前ら、食いたいか!」

 俺が聞くと、

「おー」

 と、ノリ良く皆の手が上がるのだった。


 仕方ない、アイスクリンを増量するかなあ。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

もうしばらく、こんな感じです。

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