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物件確認

「さて、勢いに負けて物件の地図と鍵をもらったがどうする?」

「行っちゃえばいいんじゃない?」

「行きましょう」

「行く」

 三人は答えた。

 気になるのは、物件までの距離だよな。

「クリス、馬車ってどれくらいの速度が出るの?」

「そうねぇ、人の駆け足ぐらい? 軍用の物ならもっと速いかもしれないけど、個人持ちでしょ? 馬もずっと走れるわけじゃないから、二時間に一回ぐらいは休憩と水、飼葉の補給をしないと走れない。だから、実際にはもっと遅いかもしれないわね」

 クリスが答えてくれた。

 ってことは、人の駆け足で時速八キロメートルとして八時間走ったとすると六十四キロメートル。三倍で百九十二キロメートル高速移動なら二時間程度?

「今日のお昼ご飯は、物件の庭で食べようと思いますが良いですか?」

「「「了解!」」」

「ピクニックね」

「ピクニックです」

「ピクニック?」

「アイナ、ピクニックって綺麗だったり気持ちいい場所に行って、ご飯を食べることだ」

「楽しいなら行く」

 俺たちはタツノコバージョンの高速移動で物件を確認に向かう。マップには物件の位置が表示されたが、その周囲には敵対するものや魔物は特に居なかった。


 俺たちの前には広大な牧場が広がる。まだ、売りに出されて間がないのか牧場に雑草は少なかった。そしてその牧場の先に屋敷と離れが見えていた。

 つか、どんだけ広いんだこの牧場。

 時計を見ると十三時前。

「さて、予定通り弁当を食べよう」

 木漏れ日亭の弁当は、三十センチぐらいのバゲットに似たパンを真ん中で切り、ベーコンと何かポテトサラダのようなものが挟まれ、紙に包まれていた。

 ポテトサラダなんてあるんだ、マヨネーズは入ってないか。などと思いながら頬張る。

 クリスは上品に、フィナはガツガツ、アイナはチビチビって感じだ。

「いい風、気持ちいいわね。何もないならボーっとしていたいぐらい」

「そうだなぁみんなでボーっとするのもいいかもな」

「だったら、私はマサヨシ様の横がいいです」

「だったら、私は反対側ね」

「私は腹の上。私はマサヨシの腹の上がフワフワして気持ちいいことを知っている」

「そうなの?」

「そうなのです?」

「そう」

 じーっという擬音語とともに、クリスとフィナに凝視されるが、

「弁当も終わったし、まずは母屋を確認するか?」

 そう言って、流した。


 遠目で見ても家がデカい。母屋だけで木漏れ日亭の大きさに近いんじゃないだろうか。俺は玄関の扉に近づきリムルさんに渡された鍵で扉を開けた。重そうな「ギー」という音で扉が開く。 

 人の気配もなく静かな母屋。俺たちはロビー兼リビングと思われる場所に入った。採光を考え南面にガラスを配しているようだ。中は意外と明るかった。

「広いわね、暖炉もついてる。あら? テーブルもソファーも残っているわ? 逃げるようにして出ていったのかしら。このテーブルもソファー結構高いと思うんだけど?」

 俺にはその辺の良し悪しがわからないが、座り心地はいい。姓が付いているクリスのことだ、ある程度知っているのだろう。

「ソファーがふわふわです」

「ふわふわ」

 二人はソファーで楽しんでいるようだ。


 俺は一人で適当に部屋を探す。次に目についたのはキッチンだった。

「懐かしいな、じいちゃんとこで、こんな竈見たっけなあ」

 前の世界を思い出す。懐かしい。

「でも、どうやって使う? 薪の準備をしないとなぁ。使うなら竈だけじゃなく煙突も掃除しないといけないだろうし。まあ、そのうち慣れるだろう」

 独り言を言いながら考える。何となく俺は住む気になっていたようだ。

「ここが包丁仕事をする場所か」

 包丁の跡が付いている一枚板のデカいまな板があった。大きめの水瓶、洗い場、結構な人数の食事を賄っていたのだから、これぐらいは必要か? 


 次に行ったのは風呂、木漏れ日亭の倍ぐらいはある浴室、そして四人でも足をのばし余裕をもって入れそうな浴槽。風呂桶や椅子までは無かったがこの風呂なら、皆で入っても大丈夫だろう。水は考えるか、木漏れ日亭のように魔石を買うのもいいかもしれない。ただ、風呂掃除が大変そうだ。

 遅れてきた三人が

「うわぁ、これ広いわね。これだったら十分皆で入れそう」

「木漏れ日亭よりもおっきいです。リムルさんは『ココの主人がいろいろやっていた』と言ってましたが何をやっていたのでしょう」

「言えないようないろいろ」

危険な臭いがする。ちょっと突っ込みが入れられない。


 一階にトイレは二つ、母屋の両端に一つずつ、洋式だ。和式はまだ見たことがなかった。田舎とかに行ったら、簡易なものは和式なのかもしれない。

 

 俺は階段を上がり二階に行く。六つの個室、東側の一番奥が主人の寝室だったのか一番広かった。一階にも四部屋個室があるということか? ベッドは残っている。家具まである。主人の部屋のベッドなら四人は十分に寝られそうだ。各個室にもシングルベッドはあった。ここも家具は備え付けだった。一人寝も可能だな。

 主人のベッドを見つけた三人はそれぞれがベッドへダイブする。

「広いわねぇ、最近こんな広いベッドで寝たことは無いわ」

 クリスは、このサイズのベッドで寝ていたのね。

「木漏れ日亭もですけど、ベッドで寝られるなんて幸せですぅ」

「昨日初めてベッドで寝た」

 平然と言ってるけど、凄いねアイナ。

「これなら、ベッドでも皆でいろいろできる」

「いろいろです」

「いろいろ」

 それぞれが妄想モードに入り、固まる。

 ここで俺が何か言えば、何か面倒そうなので、あえて言わないこととする。


「さて、二階のトイレはどんな感じかな?」

と覗きに行ったとき、レーダーに魔物を表す黄色い光点が見えだした。何かを先頭に集団でやってくる。これが、コカトリスの群れか……。数を表示させると十九羽いた。さて、どうしようかなぁ。

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