ダンジョン街道を作ろう
誤字脱字の指摘、たいへん助かっております。
クラウス商会の塩関係の利益を全部こっちに取り込むことにした。
理由は「イラついたから」
人手はっと……。
エドガーたちが居るから大丈夫かな?
俺は家の部屋でひと眠りし、日が高くなったころ起きだす。
とりあえず、障害になっている街との距離を何とかしないとね。
というわけで俺は念話でアグラを呼ぶと、
「ごっしゅじんさまぁー」
いつもの勢いでアグラが突っ込んできた。
「おう、元気だったか」
俺が言うと、アグラは肩にとまり、
「最近出番が少ないのです。ヨヨヨ……」
と、泣きマネをしたあと、
「所詮、私はダンジョン絡みだけの都合のいい女」
と、割りきるような言い回し。
確かにダンジョン絡みでしか呼んでいない。
「んー、その言葉どこで覚えた?」
「内緒です。クックック」
アグラは羽根で嘴を抑えて笑っていた
「さて、かねてから考えていた、ダンジョンを利用した各街への街道作りをするぞ」
「はい!」
アグラはビシッと気を付けの姿勢をとる。
「繋ぐのは、俺んち、オウル、パルティーモ、ゼファード、オセーレ、セリュック、ついでにリンミカ、ストルマンってところかなぁ。今までに行ったことがある大きめの都市は網羅しておいたほうがいいだろう」
「出入口はどこに?」
アグラに聞かれたので、俺が以前の襲撃のために作った壁の出口脇に立つと、
「ここらをここの出入り口にするか」
と、指で場所を指定した。
けっこう適当である。
「了解しました!それでは……ここからダンジョンまでの道を作ります」
そう言うと、アグラは光り始める。
「ボコッ」と地面が凹み緩やかなスロープの入口ができた。
アグラとスロープを降りる。
このスロープなら馬車でも十分上がれるだろう。
「マスター、四十八階に繋ぎました。えーっと、それで……申し訳ないのですが出入り口はその設置場所に行かないと繋げません。ですから、それぞれの街へ連れて行ってもらえませんか?」
「おうわかった。まずはパルティーモでいいか?」
俺が扉を出すと、
「はい!」
とアグラは返事をした。
ん? 視線を感じる。
振り向くと、にっこりと笑うエリスが居た。
「お父さん、どっこ行っくの?」
エリスは楽しそうにぴょんぴょんと飛び跳ね、狐の大きな尻尾を振りながらスロープを降りてきた。
「ん? 俺は仕事だけど……」
「パルティーモに行くんでしょ?」
話を聞いていたようだ。
「ああ、行く」
と返事をすると、
「一緒に行きたいなぁ。まだデート権使ってないなぁ」
チラ見しながら聞いてきた。
「カリーネはいいって言ったのか?」
「もともとデート権の事も『お父さんがいいって言ったら、いいわよ』って言ってたから、大丈夫」
エリスは自信満々である。
狐の尻尾がファサファサと振れている。
とは言ってもなぁ……。
仕方ないので、念話で
「エリス連れてちょっと出てくる」
とカリーネに連絡をすると、
「わかったわ、あんまり遅くならないようにね。あなたが居るから大丈夫だろうけど、危険なことをしないように」
との返事があった。
そもそも、危険なことなどするつもりもない。
「カリーネの許可は出たぞ」
と言うと、
「ああ、念話かぁ……。私もあの髪留め欲しいなぁ」
エリスは俺をチラチラと見ながボソリと呟いた。
そんな状況になったことはないが、娘にスマホをねだられる気分ってこんな感じか?
複雑だな。
というか、俺としか話せない電話って要る?
「さて、それじゃあ、パルティーモへ向かうか」
聞こえなかったふりをしながら、俺は扉を開けた。
「あれ、何でこんなところに?」
エリスが不思議そうに言った。
そう思うのも無理はない、扉から出た場所はパルティーモの街道沿いだったのだから。
「エリス、俺はダンジョンを使った近道を作ろうとしてる。それも秘密の街道。出入口が町中だと目立っちゃうから、街の近くの街道沿いの目立たないところへ作るんだ、ちなみにこんなところ」
街道沿いの森との境目を指差す。
「えー、街に入れないの?」
残念そうなエリス。
大きな尻尾に元気がなくなる。
「入らないんじゃなくて、入る必要がないからな」
その答えを聞いたエリスがシュンとした。
フム……。
「そうだな、ここの出入口をつくったらどこかの王都へ行こうか。次に行くのは、ここから一番遠いストルマンなんてどうだ?」
「ストルマン?」
「エルフの王都、クリスの故郷。あいつ、あれでも王女様だぞ」
「しってるよ。クリスねえちゃんが言ってた。ストルマンに行ってみたいな」
おっと尻尾に元気が戻ってきた。
「おう、わかった。とりあえず、ここに出入口を作ってからでいいか?」
「わかった、待ってる」
そうエリスは言うと、鼻歌を口ずさみながら俺とアグラを見る。
エリスに「急げ!」とプレッシャーをかけられているようだった。
「マスターは娘に弱いんですね」
呆れ顔のアグラ。
「そうだな、俺は全般的に女性に弱い」
今更だ……。
早速、出入口を作りにかかる。
と言ってもアグラに頼むだけだが……。
「じゃあ、アグラ頼むよ」
「かっしこまりましたあ!」
アグラが輝くと、そこにスロープが現れる。
そのスロープを降りると遠くに俺んちの出入口から漏れる光が見えた。
これで、パルティーモと俺んちは繋がったわけか。
「マスター、出入口は許可された者にしか入れないようにしておきます。迷い込んでもいけませんから」
「そうしておいてくれ。通行許可証のようなものでも作らないといけないな」
通行権を分与できるシステムの構築が必要か……。
そんな事を考えていると、
「ねえ、できた?」
エリスがニコニコしながら俺に近づいてきた。
「おう、できたぞ」
「じゃあ、ストルマンだね」
尻尾の振りが早くなる。
俺は扉を出し、ストルマン郊外に繋いだ。
平原が広がり、そこからはストルマンの高い外壁が遠くに見えた。
「あれがストルマン?」
俺を見上げエリスが聞いてきた。
「そう、あれがストルマン。街に入るのは出入口を作ってからになるぞ」
「うん、それでいいよ」
エリスが頷く。
早速アグラに街道沿いの森の出口へ出入口を作ってもらった。
「マスター、これでよろしいでしょうか?」
敬礼をしながらアグラが聞いてくる。
俺は出入口を見渡すと、
「問題なし!」
俺は言った。
すると、その言葉を待っていたかのように、
「ねーねー、終わった? ストルマン行ける?」
期待に胸を膨らませているのか、エリスは尻尾をブンブンと振って俺に近づいてきた。
「ああ、終わった。そうだな、ストルマン行ってみるか?」
俺は扉を出しストルマンの中へ入った。
不機嫌そうな感じをして、
「マスター、それで残りの街はどうするのですか?」
とアグラが聞いてきた。
「ストルマンでどのくらい居るかで決まるんじゃないか?」
とはいえ、もう夕方とまではいわないまでも、日は傾き始めていた。
アグラは空を見ると、
「明日ですかね」
と、あきらめたように聞いてくる。
アグラはなんだかんだ言って仕事が好きだ。
「ああ、残りは明日になるだろうな。エリスも楽しみにしている」
娘バカなんだろうなぁ……。
「ですけど……」
「アグラも一緒にストルマンの街をウロウロすればいいじゃないか。菓子があれば買うから。エルフの街には珍しい菓子があるかもしれないぞ?」
そうアグラに言うと。
「お菓子ですか? エルフの街の菓子を買ってくれるんですか? それなら文句はありません。早速行きましょう」
喜ぶアグラ。
仕事よりも菓子のほうが上なのだ。
意外とチョロいアグラだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
もうしばらく更新ペースは上がらないと思います。申しわけありません。




