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病気

誤字脱字の指摘、たいへん助かっております。

「マサヨシさまあ! マール様が倒れました」

 メイドの見習いをしていた子供たちがリビングでボーっとしていた俺を呼びに来た。

「どこだ?」

「物干し場です」

 急いで物干し場に行くと、そこには倒れたマールが居た。

「うっ、うーん」

 苦しそうに身をよじるマール。

 おでこに手を当てると熱かった。熱がある。

 呼吸も荒い。

 疲れが溜まっていたのかもしれない。雑事についてはセバスチャンがしてくれるようになった。家事については見習いが増えたとはいえ、マールが俺んちの家事一切を仕切っていたからな。人も増えてその分負担が増えたのかもしれない。


「俺がベッドに連れて行くから、あとの事は任せていいか?」

「「「畏まりました」」」

 マールからは「どこに出しても大丈夫です」とは聞いていたので何とかしてくれるだろう。


 俺はマールを抱き上げマールの部屋へ入った。

 意外と殺風景な部屋。冒険時の装備が隅っこに置いてあるだけ。

 あっ、紅茶関係の物は少しある。

 それよりもベッドだな。

 俺はマールを寝かせた。


 キュアーのような治療魔法を唱えればいいのか? 怪我や毒と違い何が原因で熱が出ているのかがわからない。

 とりあえずマールの胸に手を添え病気治療の魔法を唱えてみる。

 効いたのか効いていないのかわからない。

 とりあえず、気分が楽になるような魔法を……。

 って感じで魔法を使うと、マールの呼吸が穏やかになった。

 あとで聞くと「リフレッシュ」と言う魔法だそうな。


 汗がひどいので、体を拭くことにした。

 マールの服のボタンを外すと汗で張りついた下着が出てくる。

 さらに下着を外し裸にした。

  ただ、ここまでして思う……。

  これ、俺じゃなくて良かったんじゃないか? と……。

 ここで放り出して他の女性陣に任せたとして、冷めた目で見られるような気がする。

 仕方ないので続けた。

 収納カバンからタオルと桶を出し、中に水を張る。そして固く絞ってマールの体を拭いた。

 元妻の看病で体を拭くのは慣れていた。

 体を動かし全身を拭く。

 汗で濡れたシーツも替えた。


 別のタオルを絞りおでこに置いたとき、マールが目を開る。

「マサヨシ様がなぜここへ?」

「熱出して倒れたマールを俺がここに連れてきたわけだ」

「ああ、私のせいだったのですね。ありがとうございます」

「別にいいけどな。それにしても大丈夫か? 熱があるのに心当たりは?」

「たぶん疲れだと思います。少々寝ていれば治るかと……。ところで、私が裸なのは?」

 布団の中を覗きながらマールが言った。

「汗がひどかったから一通り拭かせてもらったぞ。さあ、もう休め。早く治さないとな」

 俺がそう言うと、すがるような目でマールは見てきた。

「暫く居てはいただけませんか?」

「ああ、居るぞ。どうせお前のおでこのタオルを換えるつもりだったからな」


 マールのおでこのタオルが暖かくなると桶の水で冷やすを繰り返す。中に氷を入れ水を冷たくした。

「ああ、気持ちいい」

 少しは体温も下がってきたのか、マールがもぞもぞと動く。

「氷でも食べるか? かき氷になるけどな」

「いただけるのなら」

 マールはかき氷を求めた。

 俺は、皿に細かな氷を程々載せその上にゴッペ(イチゴ)のジャムをかける。

「体を起こすか?」

「はい」

 俺は、マールの体を支える。

 そして、マールの体をゆっくりと起こした。

「ほい」

 俺はマールの横に座る。

 そして、かき氷をスプーンに掬い、マールに差し出した。

 マールはスプーンを口に含み味わうようにして食べる。

「あー冷たい。そして甘い」

「よかったよ。気に入ってもらえて」

 体を起こしたせいで布団が下がり、上半身が見える形になった。

「下着を着たほうがいいかもしれないな。俺には目の毒だ」

 俺が言うと、

「私の全身を拭いたのに、今更それはないと思います」

 とマールに返されてしまった。

 そして、マールはわざと体を預けてくる。

「まあ、そりゃそうなんだが……。下心『あり』と『なし』では違うだろ?」

「今は下心『あり』ということですか?」

「マールが病気じゃなかったら襲ってるかもしれないな。実際ちょっと抑えてる」

「襲っていただいていいのに」

 残念そうなマール。

「病人を襲う趣味は無いよ。しかし襲っていいのかね?」

「はい、いつでもお待ちしております」

 ニコリとマールは笑った。


 かき氷を食べ終えると、

「そこの一番上の引き出しに下着があるので適当に取ってもらえませんか?」

 小さなタンスを指差すマール。

「一番上ね……」

 言われた通り引き出しの中を探す。

「こんなものでいい?」

 黒の上下を出して渡した。

 まあ、普通の下着だ。

「もう少し恥ずかしがってもいいのに」

 残念そうなマール。

「ん? 恥ずかしがれって? まさかイタズラだったのか?」

「そのつもりでしたが……」

「パンツ見て興奮して欲しいか?」

 少し考えると、

「それはちょっと……嫌ですね」

 とマールは言った。


 渡した下着を着るマール。

 俺は一応目線は別のところにしておく

「やっぱり駄目です」

 そう言うと、マールは抱きついてきた。

 やはり、少し体温が高いマール。吐息も熱い。

「何がダメなんだ?」

「だって、今は私がマサヨシ様を独り占めです。邪魔する人も居ません。だから私が我慢できません」

 熱でまともな考えができないのか? 

「でも、病人は寝ないとな」

 俺がそう言うと、

「嫌です、抱いてください」

 と言ってマールに全否定された。

「熱が下がったら考える」

「ダメです、今がいいです」

 我儘モード? 

 どうしてもって感じかな? 

「ふむ、ちょっと待て」

 俺は扉を出しダンジョンマスターの部屋に繋いだ。

 マールを毛布で包み抱き上げる。


 あーあ、この部屋、それ用の部屋になりつつあるなぁ……。

 俺は、マールを抱き上げベッドに連れて部屋に入った。

「ラウラさんが言っていたけど、本当にこんな部屋があったなんて……」

 ダンジョンマスターの部屋を見回すマール。

 この部屋は噂になっていたようだ。

「俺用の隠し部屋ってやつかな」

 そう言うとベッドへマールを置いた。

「いろいろ悪さを考えるのですか?」

「悪さねぇ……。んー、悪さを考えるよりは、周りを気にしなくていい場所?」


「病人を襲う……」なんて言ったくせに……と反省する俺。

「嬉しいです」

と喜ぶマール。

「すまんね、待たせてしまった」

「いいんです」

「そういえば『私にはこれしかないから』と言って度々俺の部屋に来てたよな」

 俺がそう言うと、マールは真っ赤になった。

「まあ、でも、マールにはメイドの技術もある。戦闘の技術もある。優しいし綺麗だし……まあ要はマールが居てくれて助かってる。ありがとう」

 面と向かって言うのは恥ずかしい言葉。でも言わないといけない時もあると思う。

「私こそです。何もできない体だった私を治療してくれた。メイドとして雇ってくれた。いろいろな経験もさせてくれた。美味しいものを食べさせてくれたし、ダンジョンなんて普通のメイドじゃ行きませんからね。そして優しくしてくれる。私はあなたが好きです。だからずっとそばに仕えさせてください」

 ニコリと笑うマール。

 あーあ、それプロポーズだろ?

「そう言うのは男のほうが言う物だと思うんだが……」

 俺は頭を掻きながら言った。

「まあ、よろしく頼むよ」

「はい、旦那様」

「旦那様?」

「はい、旦那様です。フィナさんが『ご主人様』ですから、対抗して『旦那様』です」

「そこは張り合わなくても……」

「私だけの呼び方が欲しいのです。だから『旦那様』です」

 変にこだわるんだな。

「了解、マールは『旦那様』な」

「はい!でも、今はメイドはしません。誰も居ないのですから」

 そう言って、再び俺に抱きついてくるマールだった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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