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村始動

誤字脱字の指摘、大変助かっております。

 ランヴァルド王(オッサン)の所へ行くと、ウルフは居なかった。

「代官の件で呼んでたみたいだけど」

 ランヴァルド王(オッサン)に聞くと、

「ああ、この前言ってた『王宮の生活に疲れた』と言っていた内政官が『ノルデン侯爵配下の代官として村に赴任してもいい』と言っておる」

 と言った。

「こっちの準備も進んでそろそろ入植しようかと言う話も出ているんで助かるよ。それで建物は?」

「ああ、庁舎としては良いのがあった。少し前、イングリッドと寝具を買いに行った店があっただろう?」

「そういえばそんなことも……」

「結局、あの後風評が立ってな、自業自得だがそれで店の商品を買わなくなった。そのせいで商売が立ち行かなくなってやめてしまった。その店の土地が売れてな、建物を壊す予定になっている。これは広さもあるのでお勧めだ。取り壊し前の長屋や家、そして倉庫を見繕っておいた。これで当座は十分だと思うぞ」

 ランヴァルド王(オッサン)は俺にリストを渡してくれた。

 俺はリストに目を通す。

「これだけあれば、鉱夫と代官、官吏、孤児院の子供たちは確実に入る。長屋の規模にもよるけども、入植者の仮の家くらいにはなる」

 さすがランヴァルド王(オッサン)

「そのリストにある物は勝手に持って行っていいことになっている。解体作業が要らないと聞いて、喜んで『持って行ってくれ』と言っていたらしい。期限は書いてあるから、それまでにな」

 撤去期限が再び目を通すと期限が書いてある。早いものだと明日までに、なんて物件もあった。

「了解。ここに来たついでに回収して帰るよ」

「そうすればいい」

「じゃあ、村作ってくる。ありがとう」

「簡単に村を作ると言えるマサヨシが羨ましいな」

 そんなランヴァルド王(オッサン)の声を聞きながら、俺は王の部屋を出てオセーレを回り物件を回収しに行くのだった。


「ノーラ、行ってきた」

 バンと勢いよく扉を開けて執務室に入ると、

「もう、あなた、びっくりするじゃないですか!」

「あっ、悪い。でもな、村で使う建物も貰ってきたからノーラと村に行きたいんだ。あーでも村って言うのも変だな。ノーラ、名前付けてよ」

「えっ!」

 俺の急な振りにノーラが驚いていた。

「あなたが付けるのでは?」

「ん? 俺の領土じゃないよ? ノーラ・ノルデン侯爵が作った新しい村だろ? だったらノーラが名付けるのが筋じゃない?」

 すると納得したのかノーラは静かに考え始めた。

「デュロム……はどうでしょうか?」

「『デュロム』?」

「古い言葉で夢を表します」

「ん、いいんじゃない? 新しい村は『デュロム村』」

 こんな感じで村の名が決まった。


 俺とノーラが人っ子一人居ないデュロム村に立つ。

「庁舎用に貰ってきた建物はどこに置く?」

「そうですね、道、いやもう街道ですね……そこから少し入った場所で、この辺に」

 ノーラが指差すところに俺は元寝具店の建物を出す。丁度裏手に打ち抜き井戸がある感じだ。

「これで良いか?」

「はい!」

 クレイに頼んで、設置してもらう。

 ノーラと中に入ると、

「これはいいですね、既に受付け用のカウンターもある。奥には事務所も。あっ倉庫も。二階は代官の執務室と応接間にしましょうか」

 いろいろ考えているようだ。

「今後書類も増えるでしょうから、備え付けの棚が残っていたのは助かりますね」

「それと、宿舎代わりの建物は? 一戸建てと長屋があるが」

「一戸建てを並べましょう。私が選んだ者はすべて独身ですから一棟を寮代わりにします。代官は別に一戸建てに住まわせばいいのではないでしょうか? 聞いたところによると、今度来られる代官は、オーヴェという四十歳の元内政官だそうです。妻と子供が三人。すべて娘で、上から十八歳、十四歳、九歳になります。内政能力は高いです。内政長官よりも有能だと言われていましたが、そのせいで長官に疎まれたという事でした」

「よく調べたな」

「これでも、貴族ですからね。あなたに全て頼るわけにはいきません」

「それじゃ、大きめのこの一戸建てを寮にするか?」

 古びているが、部屋は十二部屋ほどある屋敷を打ち抜き井戸を挟んで反対側に置いた。

「はい、これなら人が増えても問題ありませんね」

 了解を得て家を固定する。

「少し小さいこの一戸建てを代官の屋敷にするかな?」

 十部屋ほどある屋敷を出す。

「コレなら家族とメイドが来ても問題ありませんね。あっ、寮にもメイドが要りますね、追加で考えておきます。デュロム村の中心部はこれでいいんじゃないでしょうか?」

「そう言えば入植者の人数は?」

「九十三組の家族で三百五十二人ですね」

「食料は?」

「あなたが井戸を掘ってくれたあの場所で増産された穀物を使う予定です。作物ができるまでは配給にはなりますが何とかなるでしょう。商店は仮設で庁舎の中に作りましょう。あと、お願いがあるのですが……。知っての通り、我がノルデン侯爵領には治療の出来る司祭が少ないのです。ですから、何か怪我や病気が発生した時、あなたかアイナちゃんに助けてもらいたいのです」

 そういやフィリップの葬式の時にノーラが困ってたよな。

「ああ、そのくらいなら問題ない」

「助かります。とりあえず我々ができるのはそれぐらいですね」

 とりあえず終わりかな。


「そう言えば岩塩鉱山はどうするのですか? その周辺に長屋を作れば仕事が楽になると思いますが」

 ノーラが聞いてくる。

「ああ、今から作ろうか? ちょっと待ってろ」

 俺は扉を家に繋ぎ、

「アグラ、手伝ってくれ」

 と、念話で呼ぶ。

「マスター!!!」

 相変わらず俺の名を叫びながら高速で突っ込んできた。

 突っ込んでくるアグラを捕まえ、俺の肩の上に置いた。

「おう、アグラ、来てくれたか」

「当然です!」

 当たり前のように胸を張るアグラ。

「前に言っていた岩塩鉱山を作りたい」

「了解しました」

 アグラがビシッと敬礼をすると、

「何階にしましょう?」

「四十六階で頼むよ」

「出入り口は?」

「あとで繋いじゃダメか?」

「問題ありません。前回同様照明と換気は必要ですね」

「ああ、それで頼む」

 俺がそう言うと、何も変化がないまま、

「はい、できました」

 とアグラが言った。


「繋ぐ場所かぁ……。庁舎とちょっと離れたあそこら辺かなぁ……」

 俺が指差すと、再び

「了解!」

 とアグラが敬礼すると、地下へと向かうトンネルが出来上がる。

「ノーラこれで出来上がり」

「あなた、実感が無いです」

「だろうな。見に行くか?」

 俺はノーラとアグラを連れ、出来たばかりの入り口から四十六階へ向かった。

 明るい洞窟内に赤みがかった半透明の石が転がる。

 小さな塊を拾って、舐めてみる。

「あっ、しょっぱい」

「一応、石のような不純物は有りません。海水がそのまま水分だけ抜けて結晶化した感じです。塊のまま採掘しそのまま運ぶも良し、粉体にして袋に入れて売るも良しですね」

 アグラが言った。

「あなた、ここ全部岩塩なのですか?」

 呆れたような声でノーラが言う。

「そういうことなんだろうな」

 アグラを見ると頷いていた。


 数週間後、

 入植した家族、鉱夫たちの家族、そして運営にかかわる代官家族とその部下になる者、それから我が孤児院を独り立ちしてこの場所に就職した者、あとメイド。

 人口は一気に五百人以上程に膨れ上がった。

 畑を耕し、種を蒔き始める者。

 鉱山に入り岩塩を採掘し始める者。

 採掘した岩塩の量を確認する官吏とその助手。

 デュロム村が動き始める。

「オーヴェって代官、ランヴァルド王が言うだけあって凄い処理能力だから助かるわ。あなた、あの子たちも凄く使えるの。書類の書き方も知ってるし、簡単な計算なら暗算でできる」

 ノーラの念話での報告が楽しそうだ。

 順調なのだろう。

「嬉しいね。あいつらが頑張ったお陰だ」

「あなた、もう少しすれば岩塩の王都への第一便を納めることになっています。価格はどうするのですか?」

「ノーラが決めて。俺にはその辺の知識が無いからね。実際にかかった費用と、南領から塩を得た時の費用を比較して考えればいいだろう? 俺は分け前が少々いただければ十分です」

「もう、ずるい」

 丸投げに気付いたか……。

「あとは、入植者が増えるときぐらいしか俺の出番は無いからね」

「それはそうですが……」

「じゃあ、別の事で忙しくなりそうだから、あとは任せた」

 マジックワームの件が進んでいない。

 あー、甘味の店も少ししか時間がないや……。

 結婚式の件も考えないとな。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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