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道づくり

誤字脱字の指摘、たいへん助かっております。

 権利も得たので、道を作ることにする。

 ここでクレイ先生の登場。

「先生、よろしくお願いします」

「先生」と呼ばれるのが嬉しいのか、胸を張るクレイ。

「先生、現在の魔力でどこまで道ができますか?」

「そうねえ、あなたのせいで魔力が上がったから最後まで作れるんじゃないかしら」

 余裕を見せるクレイ。

「えっ? 先生、隷属化してそこまで魔力が増えたのですか?」

 クレイを煽てておく。

「そう、向こう側の森を出るまで作れるわよ」

 胸を張るクレイ。

「おお、先生、本当ですか」

「ホントもホント、何なら全部石畳にしてもいいわよ?」

 自らハードルを上げるクレイ。


「じゃあやっていただけますか、先生」

 クレイ先生に俺が言うと、

「じゃあやるわ。確か馬車が三台余裕で通れる幅でよかったわね」

 馬車二台がすれ違い、さらに人が歩くのなら、馬車三台分必要だとクレイに話しておいた。

「ああ、よろしく」

 するとクレイが目を瞑りブツブツと独り言を言い始めた。

「地形の情報を確認して、起伏がないできるだけまっすぐな道を選んで……」

 んー特に何も起こらない。

「道のりの木を抜いて……」

 と言った瞬間、目の前から結構な高さの木が抜けてぶっ飛んでいく。そして、森の中にそこそこの道幅の一本の道ができた。

 ん? これ馬車四台分ぐらいあるんじゃないのか?

 馬車の基準をオークレーン侯爵の馬車にしたようだ。そう言えばうちには荷馬車とあの馬車があった。

 馬車って言ったから、オークレーン侯爵の馬車と勘違いしたのかもしれない。

 まあいっか、黙っておこう。

「道を平らにして……」

 すると、目の前にある凸凹した道が平らになる。

「土を固めて……」

 道が圧縮され、表面がつるつるになる

「石にしてっと」

 表面が灰色に……あっ、石化した。

「はい終わり! 川を越える部分には石の橋もつけてるわよ!」

 あっという間に道を作りやがった……。

「さっすが、クレイ先生」

 再び煽てておく。

「ふっ、ふん。こんなの余裕よ」

 と、クレイは言っているが息が荒い。

 立つのもやっとのようだ。

 ちょっと疲れ気味なクレイ。

 それでも胸を張るクレイの横に行くと、

「疲れたか、無理させてすまんね。お疲れさん」

 と言って頭を撫でる。

「もう余裕って言ったでしょ! 大丈夫、気にしないで」

 でも、ちょっと嬉しそうに、少し恥ずかしそうにしてクレイは俺の体に戻った。

 クレイに感謝だな。


 俺はリードラに乗り、できた道を確認する。

 高い丘は避け、直線か緩いカーブで道ができている。クレイが言った通り途中にある川を渡れるように橋もできていた。

 国家事業並みの事を数分でやるクレイ。

 これ、軍事に使えるぐらいの道だぞ。

 すげえな……。

「見事な道じゃのう……」

「そうだな、この道なら人も歩きやすいし、馬車も走りやすいだろう」

 クレイ先生いい仕事しています。

 あとは、野営ができそうな広場を数カ所作るかな。

 

 さてどこに村を作ろうかとしばらく悩んでいたら、ノーラから念話が入ってきた。

「あなた、森の出口に道ができたって報告が来ているんですけど、何かしました?」

 焦ったような感じだ。

「何かしましたと言われてもなあ、予定通り道を作ったとしか言えないんだけど……」

 普通に返す。

 すると明らかに不機嫌な感じ。

「あのー、あなたは一か月後ぐらいって言ってましたよね?」

「言った」

「今日はあれから何日目ですか?」

「三日目?」 

「ひと月は?」

「三十日?」

「私に十分の一の時間で何をしろと?」

 ちょっと怒っているようだ。

「ごめんなさい」

 こういう時は先手で謝る。

 悪いことをしたら謝るのが一番。


「…………」

 しばらく沈黙が続き

「もう……仕方ないですね」

 諦めたようなノーラの溜息とともに声が聞こえる。

「それでこの後どうなさるのです?」

 と聞いてきた。

「そうだなあ、ランヴァルドのオッサンに村を作る許可を貰って岩塩鉱山の件の相談だろうな」

 報告しておかないとね。

「実際に行ってみるか? 仕事がなければ会ってくれると思うが」

「えっ……」

「迎えに行くから待ってろ」

 俺は扉でノーラの執務室に行った。


「迎えに来たぞ」

 俺は扉から顔を出す。

「えっ、ああ、はい。展開が早すぎます。何を着て行けばいいのか……お化粧は大丈夫でしょうか?」

 焦っているノーラ。

「それで十分綺麗だと思うぞ」

 ちょっと適当。

「適当です……」

 あっバレた。

「ちょっとお化粧だけ少し直しますね」

 そう言って奥のベッドルームに行く。

 そう言えば鏡台があったな。


 再びやってきたノーラだが、俺には微妙な変化がわからなかった。

「化粧を少し直したのですが、どうですか?」

「うんうん、綺麗」

「適当?」

 疑う目。

「いや、綺麗になってるよ」

 基本ノーラが綺麗なのでわからない……。

 そういう変化を気付ける男じゃなくてすまん。

「だったらいいんだけど」

 ふぅ、何とか誤魔化せたようだ。

 これ以上は誤魔化しきれないと思う。

 俺は急いで扉を出して、オセーレの王宮の王の部屋に行った。


 扉を繋いだ時、

「王よ、マサヨシの言うことは本当なのですか? 絶滅したというマジックワームから布を作ると言っているなど信用できるのですか?」

 ウルフの声が聞こえる。

 ありゃ? この前の話で揉めているか……。

「お前、あいつが嘘を言ったことがあるか? 嘘があったとしても、我々が不利になったことはあるか?」

 ランヴァルド王(オッサン)が聞いた。

「…………ありません」

 しばらくの沈黙のあと、絞り出すようなウルフの声が響く。

「あいつは我々が信用する限り、我々を信用するよ。だから儂はあいつを信用する。あいつが『できる』というんだ、だからできる。正直この国の戦力で儂はあの小さなマサヨシの家に勝つ自信はない。あの強大な力を持つホワイトドラゴンを統べるマサヨシはそれを上回る強さを持っている。」

「王よ、なぜそんなにマサヨシを疑わないのですか?」

「儂は疑うことで国が破滅するのであれば疑うことをやめる。正直に言おう。儂はイングリッドがマサヨシを選び、マサヨシがイングリッドを受け入れてくれたことでホッとしている」

「それではイングリッドは我が国のために?」

「いいや、イングリッドは好きでマサヨシの所へ行っている。でないと儂はマサヨシのところへ行かせていないぞ? イングリッドが国のために身を捧げるというなら儂は止めているだろう。儂はなイングリッドの好んで行った選択がこの国のためになっているからホッとしているんだよ」


「そろそろいいかな? お邪魔しますよ」

「ランヴァルド王、失礼いたします」

 俺とノーラは王の部屋に入った。

 俺を見てぎょっとするウルフ。

「オッサン、いろいろ揉めているみたいだな」

「聞いていたのか?」

「扉を開ける前に聞こえた分ぐらいはね」

「ウルフがお前を疑っている」

 ため息混じりでランヴァルド王(オッサン)が言う。

「みたいですね。でも信用してもらうしかないんですけど……。まあ、マジックワームの話はあとでするとして、とりあえず道の話です」

と、マジックワームの件を後にした。

「ああ、ノルデン侯爵領との道の話だな」

「そうそう、道ができました」

「何? もうできたのか?」

 ランヴァルド王(オッサン)は驚いていた。

 まあ、通常は何か月、何年使うような土木工事なんだろう。

 それを数日で行うのだ。驚いても仕方ないか。

 ノーラも早すぎて怒ってたしな……。

「ついては、許可を貰いたいのと相談したいことが」

 俺はランヴァルド王(オッサン)に話しかけた。

「許可とは?」

 ランヴァルド王(オッサン)が聞いてくる。

「俺んちとセリュックまでは少し距離があるので途中に村を作らせて欲しい」

「それは問題ない、お前とノルデン侯爵に任せる」

 村を作る許可は出た。

「そして、相談とは?」

「その村に岩塩鉱山を作りたい」

「鉱山? それはどういうことだ?」

 ランヴァルド王(オッサン)は身を乗り出して聞いてくる。

「イングリッドから聞いているかもしれないが、俺は岩塩鉱山を作り岩塩を採掘しようと思う。場所は出来上がった道の国境を挟んでノルデン侯爵領側、そこに村を作って岩塩を採掘し魔族の国へ塩を販売する。ついでに、俺んちとセリュックの中継地にしようかと思っている。」

「お前、そんなバカげたことができるか! 岩塩鉱山を作るなど」

 ウルフが食ってかかってきたが、ランヴァルド王(オッサン)がウルフを制する。

「続けろ」

「聞けばこの国は塩を得るためにオースプリング王国を越えて仕入れているとか。しかし、ノルデン侯爵領に岩塩鉱山ができるなら、遠くから塩を買う必要もないし、塩が国内生産となって産出国での塩の売り渋りなどを気にすることもないと思うんだが……」

 そう言うとランヴァルド王(オッサン)が、

「儂としても、それは助かる。しかし可能なのか?」

 と言う。

「さっき、疑わないといっただろ? 可能だよ。ただ、人が足りない。俺が道を急に作ってしまったせいで、村を作る段取りが全然できていないんだ。村を作る土地に始まり、村を治める代官。その下で働く官吏、村人となる者、住むための建物、水源、食料の調達など色々だな。ただ、おっさんも知っての通り土地は俺が作るし、建物は使えるものを教えてもらえば俺が運べる。水源は俺が探す。ただ人材に関しては俺の周りに駒がない。だからノーラに任せるかオッサンを頼らざるを得ない」

「人員については儂だって急に言われても困るぞ」

 俺は無視して続ける。

「有能な代官が欲しいな。『中央でバリバリやってたけどいろいろ疲れて田舎に引っ越したい』って思っているような都合のいい奴は居ない? ただし、代官はノーラの下についてもらうことになるが……」

 すると、ランヴァルド王(オッサン)は少し考え始めた。

「そう言えば『王宮での生活に疲れた』と言っていた男が居たな。ただ、『ノルデン侯爵の下についてもいい』と言うかどうか……」

「まあ、話しておいてよ。官吏はノーラのところからも何人か出してもらえる。補助として俺の孤児院からも出すことが決まっている。それを統括する頭が欲しいんだ。使えるなら給料は高くてもいい」

「わかった、話すだけは話しておく」

 とりあえず頭候補はできた。

 最悪、イングリッドかクリス辺りを頭に据えてもいいかな? 


「使わなくなった建物なんかがあったら、売って欲しいんだ。安ければ安いほどいい」

 と、俺が言うと、

「取り壊しそうな建物があればいいという事か?」

 ランヴァルド王(オッサン)が聞いてきた。

「そう言うこと。建物は俺が移転する。ああ、庁舎になるような建物も一つあれば助かる。そんなに大きくなくてもいい。事務所として使えそうなちょっと大きな建物であればね」

「わかった、その辺の物も探しておこう。儂としてはこの国で塩が自給できるようになれば問題はない。それで、国に納める塩の価格だが……」

「それは、実際に採掘してからになる。実際にオセーレに納めるまでにかかる費用を確認してからかなあ。距離からいってそんなに高くはならないかと思うけどね……。岩塩は国に全量納めるという事で良かったっけ?」

「それで頼む」

「わかったよ。村ができて岩塩の採掘が開始された後再びここに来る」

「マサヨシには期待している。よろしく頼む」

 ランヴァルド王(オッサン)が言った。

 俺を立ててくれたのか、ランヴァルド王(オッサン)が「期待している」と言ってくれた。その分魔族側に利益があるようにしないと。

「さて、ウルフ。俺は村を作り、お前が『そんなバカげたことはできない』と言った岩塩鉱山を作る。出来上がったら、別に俺を信用しろとは言わないが、俺が嘘をついていない事だけはわかってくれると嬉しい」

 俺はウルフを見ながら言った。

 義理とは言え兄貴になる男だ。できれば仲良くしたい。

「お前が村を作り、この国に益となる事ができたのなら、納得してやろう」

 まあ、今はそれで十分かな。


 安い塩が出回れば美味しいご飯が食べられる。

 ただ、今まで仕入れていた南領を懇意にしていた商人の利益が下がって恨まれるかも……。

 妨害とかなければいいけど……。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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