犬族の主人
誤字脱字の指摘、たいへん助かっております
俺はポチのところに行く。
ポチは俺を見つけると大きな尻尾を振って嬉しそうにした。
「ポチにお願いがあるんだが」
「何でしょうご主人様」
「お前に、この周辺の森の犬系の魔物を統べてもらいたい」
俺がそう言うと、ポチの尻尾が止まった。
「なぜ?」
「俺には人手が足りない、おれ自身や取り巻きは強いかもしれないが数が居ない。今後、ここからセリュックまでの道も作るから、護衛や戦闘で犬系の魔物に出張ってもらいたいんだ」
「軍隊としての犬ですか」
「そう、お前が頭となり、オルトロスのような上位の魔物を部隊長にして戦う。そういう事ができないかと思っている」
少し考えるポチ。すると
「いいですよ。ご主人様の役に立てるなら頑張りましょう」
と言う了解の返事が来た。そのあと、
「正直言いますと、今のままだとじり貧なんです。我々はオスしかいないので子孫を残せません。ですからご主人様の申し出は助かります」
嬉しそうな声が聞こえた。
メス探しをするようだ。
それからしばらく経って家の前に行くと、ポチよりも一回り小さいぐらいの銀色の犬? 狼? が居た。
ポチの体には噛み跡が多くついていた。しかし誇らしげに立つポチ。
「ご主人様、妻を紹介します。種族はフェンリル」
軽く頭を下げるフェンリル。
「お前、傷が凄いな?」
「ああ、これはこいつを従えるために戦いまして……こいつを傷つけないように戦う間についた傷です」
確かにフェンリルには傷一つ無い。
俺は治癒魔法をかけ傷を消した。
それを見て目を見開きフェンリルは伏せる。
「ご主人様に感服したそうです。『魔物に治癒魔法を使う人を初めて見た』ということです。そしてこれで、ご主人様はこの辺の犬族の主人になりました」
「へ?」
「この辺の犬族の長がこのフェンリルでしたから、そのフェンリルを従えたご主人様はこの辺の犬族の主人となります。ああ、フェンリルは私と繋がりましたし、知能が高いですから念話も使えるかと……」
やっちゃったんだ……。
「えー、フェンリルさん?」
「我が主よ、私に名前を付けてもらえないでしょうか?」
けっこう固い感じの性格?
「名前?」
「はい、フェンリルでは無く名で呼んで欲しいのです。あの人はケルベロスなのにポチの名が付いています」
「ああ、羨ましいのね」
「えっ、まあ、その、羨ましくはないのですが、あの人にあるのに私は無いので……統一したほうがいいかと……」
目をそらしながらブツブツと言うフェンリル。
羨ましいんだね……。
「じゃあ『リル』でどうだ? 短くしただけだが可愛い感じに聞こえる」
「私が可愛い? そんな事ポチにしか言われたことが……」
ブツブツと再び消え入るような声で言うリル。
「ポチに言われたんだ」
「戦っている間中どんなに噛みついても『可愛い』『綺麗』と言い続けられて、押し倒されて……そして……」
その報告要らんから……。
恥ずかしいのかポチが目をそらしている。
「ゴホン」
その後の流れを説明し続けるリルを止めるために咳払いすると、
「ということで、お前は『リル』な。俺はこの辺を開拓する。発展すれば良からぬ事を考える者も増えてくるだろう。そういう者から人を守って欲しい。ところで、エサは?」
「最近この周辺は魔力に満ちています。それを吸収すれば問題ありません」
リルが言った。
魔物を育てるダダ漏れ魔力。
「数は?」
「私を筆頭に、下位の銀狼が十頭、その下位の狼が二百頭前後でしょうか。連絡手段として遠吠えを使います」
総勢約二百頭。遠吠えは警報代わりにもなるだろう。
「リルに部隊編成は任せるよ。道ができたら満遍なく散らばって脅威を排除してもらえると助かる。どうしても強すぎる者が居れば、ポチに援護を頼んでもいいし俺が出てもいい」
「わかりました。私はポチの傍に居ますが、部下たちは森の偵察をするようにしておきます」
これで約二百頭の仲間が増えた。機動性が高い犬族だ、いろいろ頑張ってくれるだろう。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




