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ギルドへの報告

誤字脱字の指摘、大変助かっております。

 百人以上は居ようかという中を行く。

 視線は俺以外に集中? いや、女性の中になぜか混じっている俺にも視線が注がれていた。

「いらっしゃいませ、御用は?」

 そう言って、異様な雰囲気の中、職員が近づいてくると、

「どうかいたしましたか?」

 と、カリーネに声をかけてきた。

「私はゼファードの冒険者ギルド、ギルドマスターのカリーネ。呼び出しによりゼファードのダンジョン攻略者と共に来たのだけど……」

 そうカリーネが答えると、

「カリーネ様でしたか、お話はグランドギルドマスターから聞いています。応接室にご案内しますので、私の後から付いてきてください」

 と言って、職員は俺たちを連れていく。

 すでに話は通っていたか。

 職員は、

「思ったよりもお早いお着きですね。もう一ヶ月ほど先かと思いましたが……」

 と聞く。

「ああ、我々の馬車はこのパーティーが飼い慣らした神馬に引かせてるから早いのよ。」

「伝説の神馬ですか!」

「そう、『ゼファード付き』のこのパーティーは有能なの」

 カリーネは俺たちを誇るように「ゼファード付き」を強調して言った。


 二十人以上は座れそうな大きなソファーが並ぶ応接室。

 そこに俺込みで七人が座る。

 すると白いひげをたたえた爺さんが出てきた。

「グランドマスターのガルム様です」

 案内してくれた職員が紹介してくれた。


「オウルの冒険者ギルド、そしてこのオースプリング王国の全ギルドを統括するグランドマスターをやらせてもらっているガルムだ」

 上から目線で俺達に言う。まあ偉いさんというのはこういう喋り方をするもんだろうな。

「私はお久しぶりで良かったかしら?」

「ああ、カリーネの嬢ちゃんか。ゼファードの男寄らずの跳ねっかえりが来たんだな」

「あら、失礼ね。これでもいい人は居るのよ?」

 カリーネは当てつけのようにニコリと笑った。

「フン、物好きな奴も居るもんだな」

 と爺さんは言う。

 はい、私がその物好きです……。


「このパーティーのリーダーは?」

「えーっと」

 カリーネはチラリと俺を見るが、表立っては一番ランクの高いクリスである。

「クリスティーナ・オーベリソン。エルフの国の王女ですね」

 えっ……って言う顔をする爺さん。

「オーベリソン家の娘か。ほっほー、そこに居る六人であのダンジョンを攻略した訳だな」

 爺さん納得の様子。

 そう言えばクリスはこのギルドに来たことがあると言っていた。少々面識があるのかね。

「いいえ? 実際に攻略したのは、あのマサヨシです」

 俺を指差してクリスが言った。

 他のメンバーも頷く。

 えっ、俺? 

「あまりにもご主人様の評価が低いので、皆で話し合った結果、事実を公表することにしました」

 フィナが俺の耳元で囁く。

 余計なことを……。

「本当に、お前が一人でダンジョンを?」

 爺さんが疑った目で聞いてきた。

「まあ、ダンジョン自体は全員で攻略しましたが、ボス戦はほぼ一人だったかと……」

 いろいろ事情があって、一人で戦っただけだがね。

 俺の体を見ると、

「お前のような体であのダンジョンを攻略できるはずがない!」

 と、全否定されてしまった。

 メタボリックじゃダンジョンは攻略できんらしい……

「見れば、メンバーの肩には隷属の紋章がある者も居る。まさか、お前は後方に居て女どもに先導させたのじゃないのか?」

 そんなこと言われてもなぁ……。

「五人を奴隷にしているのは確かです。ただ彼女らに『俺のために動け』とか命令したことは無いんですがね。できるならば隷属の紋章なんて取り払ってしまいたい位なんですが……」

 信用できない爺さんは、

「お前たちは嫌々あのマサヨシに従っているんじゃないのか?」

 俺を指差し五人に聞いた。

「グランドマスター、何を勘違いしているの? 私はマサヨシの奴隷でいいの」

「私もご主人様のもとを離れません」

「ん、夫になる人」

「私はマサヨシ様に助けられました。離れませんよ」

(われ)も離れるはずがない」

 と、ちょっとズレている言葉もあるが即答してくれた。

 ありがとな……。

 爺さんは、苦虫を嚙み潰したような顔をすると、

「くっ、何でこんな奴に」

 とボソリと言う。

 爺さん「こんな奴に」って何だそれ。


「で、俺らはどうすればいい?」

 カリーネのためとはいえ何か面倒になってきた。

「とりあえずは、ダンジョン攻略の証拠となるものを見せてくれればいい」

 と爺さんが言ってくる。

 俺は収納カバンから金箱をドンと出すと、

「何だそのカバンは?」

 と聞いてきた。

「ああ、俺が作った収納カバンです。結構容量があって便利なんですよ」

 久々に言ったなあ、これ……。

「で、どうです?」

「ああ、確認できた。これでお前たちがダンジョンを攻略したことがわかった。攻略おめでとう。で、この金箱はギルドへ納めてもらえるのか?」

 当たり前のように爺さんが言う。

「いいや? 持って帰るけど。えっ納めなきゃいかんの? カリーネ、どういう事?」

「そんな話は聞いてないけど」

 キョトンとするカリーネ。

「カリーネ嬢ちゃん、そうは言うがオウルも箔は欲しいんだよ。王都周りで最近あまり目立ったこともなくてな。金箱があれば話題になるだろう?」

「何をふざけたこと言ってんの! マサヨシ、金箱を仕舞って。この爺さん、あなたが知らないことをいいことに、金箱を巻き上げようとしているの」

 カリーネが怒っている。

 俺はカリーネに言われるまま、収納カバンに金箱を仕舞った。

「オウルには金箱があったはず。今更増やす必要はないわ」

「カリーネ嬢ちゃん、そんなに怒るな。しかし、お前、ゼファードの冒険者ギルドには金箱を提供したと聞いたが? なんでココにはダメなんだ?」

 爺さんが俺に聞いてきた。

「ああ、それはカリーネのためにしただけです。ギルドは関係ありませんよ?」

「儂のため……」

「提供しません」

 食い気味に全否定する俺。

「なぜカリーネのために?」

「えっ、婚約者のために物を提供するのはいけませんか? 先ほど言っていた『カリーネのいい人』つまり『物好きな奴』というのは俺のことです」

 わざとにっこりと笑いながら爺さんに話しかけた。

 俺の言葉を聞いて、ばつが悪そうな顔をする爺さん。

 俺が機嫌を損ねているのに気付いたようだ。

「そうそう、言ってなかったわね。この人が私のいい人」

 追い打ちをかけるように俺の腕にしがみ付くカリーネ。

「えっ、ああ、そうだったのか。まっ、まあいい」

 爺さんは渋々引き下がったようだ。


「それで、今後はどうすればいいの?」

 カリーネも呆れたようで、早く終わらせようと巻きが入る。

「これから王宮に連絡を入れる。その後日程が決まれば、連絡を入れる。悪いが宿泊場所を教えておいてもらえないか?」

 爺さんが言った。

「私たちはミスラ・バストル伯爵の館に泊まることになっているわ。用事があればそちらへ」

「ミスラ・バストル伯爵か、わかった。王に謁見する日が決まればすぐに連絡する。あと、パーティー名を教えて欲しい」

「パーティー名? そういやそんなの決めてなかったな。どうするよ?」

 俺が皆に聞くと。

「マサヨシが勝手に決めていいわよ」

「ご主人様にお任せです」

「ん、任す」

「マサヨシ様、思うようにつけてください」

(ぬし)に任せたのじゃ」

 と、皆に言われた。

 俗に言う丸投げ? 

「パーティー名ねぇ……お前等の隷属の紋章はユニコーンだから、それにするか?」

 安易ではあるが、急に言われるとコレしか思い浮かばない。

「『ユニコーン』良いんじゃない? 私たちはこの紋章で繋がっているんだから……」

「はい、ご主人様と私の繋がりです」

「そう、繋がり」

「そうですね、私にとっても繋がりです」

「ああ、この紋章でこのパーティーは繋がっておるのじゃからな」

 というふうに、あっさりと同意してくれた。

 繋がりかあ……。

「ちょっとうらやましい。私も形になる繋がり欲しいわねぇ」

 カリーネがチラチラ俺を見ながら何か呟いている。

 軽く流して、

「まあ、そういう事で『ユニコーン』でお願いします」

 俺がそう言うと、

「『ユニコーン』だな、了解した。それでは今日は以上だ」

 爺さんがそう言って話が終わった。


 ギルドを出る時も再び注目される俺たち。

 そして、外に出ると、ポチとわんこ小隊が子供のジャングルジムと化していた。

「ラウラ、何だこりゃ」

「マサヨシ殿。ポチたちが珍しいから子供が寄ってきたんです。そして子供がポチによじ登ったり、小隊を撫でたりし始めたら、こんな結果に……」

 まっ、ポチたちのイメージアップはできたかな……。

「ポチ、大丈夫か?」

「大丈夫、孤児院の子に比べたら緩い緩い」 

 ということらしかった。

 中央の顔がニヤリと笑う。

「みんなごめんな、この犬たちはそろそろ出発するんだ。そろそろ降りてくれないか?」

 遊んでいる子供たちに俺が言うと、

「えー、フワフワして気持ちいいのに」

「可愛いし」

「もっと遊びたい!」

 などと子供たちから文句を言われた。

 まあ、ポチたちのモフモフが気持ちいいのはわかる。

 するとラウラが、

「この者たちは出発せねばならん。だから、解放してもらえないか?」

 騎士であるラウラが言ったことで、親たちが反応した。

 お陰で渋々ながら子供が離れていった。

 その後バストル家の館に行くまで再び目立ち、馬車の周りには人が絶えない。

 バストル家に到着すると俺たちはそのまま家に帰るのだった。



ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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