採掘開始!
誤字脱字の指摘、たいへん助かっております。
リンミカの商人、ブロルと契約書を交わしてから、リンミカ行きの転移の扉のデカイ版を作った。移動の権限をクラーラに与えておく。。
そのクラーラにはブロルとの連絡を取ってもらっていた。とりあえず念話ができる髪留めも渡してある。
そして半月が経ったころ、
「マサヨシ、長屋を移動して欲しいのだけど、今大丈夫?」
と、クラーラから念話で連絡が来た。
「ああ、大丈夫だ、ブロルの店に行けばいいのか?」
「ええ、店から長屋のある場所へ連れていってくれるらしいわ」
言われたように扉でブロルの店に移動すると、ブロルは目の前に急に現れた扉と開けて出てくる俺に驚いた。
「えっ、なぜ扉が?」
ブロルは不思議そうに俺に聞いた。
「ああ、俺専用の魔道具ね。一度訪れたことのある場所なら移動できるんだ。ここはこの前来たからね」
「クラーラ様がお使いになる扉とは違うので?」
「ああ、あれは俺んちとここ専用だ」
「私どもは使えるのでしょうか?」
「あれはクラーラ専用。だから店主は使えない」
「そうですか、残念です」
はっと思いついたように
「我々のために作っていただくことは?」
とブロルが聞いてきたが、
「結構魔力が居る。クラーラの扉もダンジョンコアの欠片を使っているからね。もしもどこかのダンジョンコアの欠片でも手に入るなら考えてもいいけど」
と返す。実際、クラーラに作った転移の扉は、蓄魔池としてエルフの王都ストルマンの近くで潰したダンジョンのコアを使っている。今後、貴金属を馬車を使って移動する事もあると考えたからだ。
「ダンジョンコアの欠片などなかなか手に入るものではありません。仕方ないですね諦めます」
そう言ってブロルは肩を落としていた。
「で、クラーラ、長屋の移動だが。その長屋はどこにあるんだ?」
「ブロル、よろしく」
クラーラがブロルに全振りした。
「えっ、ああ、それではこちらに来てください」
ブロルは俺たちを連れ外に出た。
街の中を歩くとソコソコ築年数の経った長屋。
「コレか?」
俺が聞くと、
「はい、これになります。一応雨漏り等は無いのを確認してありますが……」
リンミカは洞窟内部にあるため雨が降らないらしい。
ということで、外に出す前に水をかけて確認したそうだ。
ボロいから、ボーの弟子部隊の練習用にしてもいいかも……。
「どうやってこれを?」
「ああ、こうするんだ」俺はいつも通り収納カバンを長屋に押し付ける。
すると長屋が光始め、そして消えた。
「…………」
口を開けフリーズするブロル。
クラーラも、
「私も驚いたわよ。家が無くなるんですから」
と、ブロルを見て言った。
「まっ、こんな感じだな。クラーラ、どの辺に移動すればいいかね?」
「そうね、私の館の近くで良いんじゃない? 鉱山にも近いし」
鉱山とは言うが鉱山じゃないよな……。でも鉱山って事で……。
「えっ、すぐに移動されるのですか?」
おっブロル復活。
「俺の開拓地来る?」
「はい、できれば一度見てみたいかと……」
ドワーフのオッサンの上目遣いを見てもな……。
「じゃあ、どうやって移転するか見せておくか」
俺は扉を出しブロルと共に開拓地に行くのだった。
開拓地に着くと、早速クラーラの館の横に長屋を出す。
そして、クレイに頼んで埋めてもらった。
それを見たブロルが、
「えっ精霊様がおられるのですか?」
「ブロル、マサヨシは地の精霊を使役しています。ですからマサヨシにとってこのようなことは簡単」
「私も精霊様を使役する人を初めて見ました」
「まあ、こんな感じで移転完了だ」
「私も長い間商人をやって、いろいろ見てきたつもりでしたが。このような建物の移転は初めて見ました」
と、興奮気味にブロルが言った。
「ちなみに鉱石から金属を取り出すのも地の精霊にやってもらう」
俺はクレイに頼み、金鉱石から金とそれ以外を分離してもらった。
左手に砂のような金が溜まり、右手にあった鉱石は色をなくす。
「こんな感じだね」
と、俺が言うと唖然とするブロル。
ブロルに手を出してもらい、その手の上に取り出した金を置いた。
「これはまさしく金。金鉱石には銀の成分が混じることも多いのですが。それは?」
「んー、わからないなあ……。わかるやつを呼ぶんでちょっと待って」
念話でアグラを呼ぶと、
「マスター!」
と叫びながらアグラが登場した。
そして、右肩に止まる。
今回は突っ込んでこないのね。
「何でしょう、マスター」
「この人が言うには『金鉱石には銀の成分が混じることが多い」と言っているんだが、この鉱石に銀は含まれているのか?」
「いいえ、含まれていません。マスターの指示は『金』を含んだ石でしたから」
俺がブロルを見ると、ブロルは、
「しゃっ、しゃべるフクロウ」
と言って指差していた。
「ああ、これは俺の使い魔ね。誰にもやらないから」
くれとは言われていないが言っておく。
ダンジョンコアと言ってもわかるまい。
俺がそう言うと、勘違いしたアグラが、
「マスター嬉しいです」
と言って体を寄せてきた。
「ところでマスター銀が要るのであれば、鉱石の変更は可能ですがどうしましょうか?」
「そこら辺はこの人と話してからだな」
「わかりました。これで用事は終わりですか?」
「ああ、ありがとう」
「どういたしまして」
ペコリと頭を下げるとアグラは家へ向かって飛んでいった。
「まあ、そういうことで金鉱石は金しか取れないが、銀が欲しいなら、やりようはあるようだ」
あり得ない鉱山だよな……。
「はっ、はあ……。では、銀や銅でも問題ないということですね」
「あの言い方だとそうなんだろう。要は何でもありなようだ。欲しい金属を言ってもらえれば採掘できると考えてもらえればいい。大量にと言うのは難しいかもな。俺は鉱夫を十人以上にするつもりは無いから。増やしても孤児たちが『やりたい』と言った人数分ぐらいになると思う」
あまり貴金属が増えても、値崩れしては意味が無いだろうしな。
「わかりました。できれば砂金のような状態ではなく板金のようにしてもらえませんか?」
とブロルが言ってきた。
「そうだなあ、板金で納品しろと言われても炉が必要になるだろうな。炉の材料はこちらには無いぞ? 準備してもらえるのなら考えよう。それまでは砂の状態になる」
「炉ですか……。それでしたらドワーフの国最高の炉がありますので、それを購入して移設するようにしましょう。あなたなら簡単です」
ブロルは俺の能力を活用し儲ける事を考え始めたようだ。
まあ、商人なんだからそのほうが助かる。
「馬や馬車、鉱夫、そして道具についてはどうなった?」
俺が聞くと、
「手配はしています。すぐにでも採掘を始めたいですな。しかしここは金のなる木にできる。早く支店の建物を探さないと……」
と、ブロルは言って次の事を考えていた。
半月後、ドワーフの鉱夫も集まり、採掘がはじまる。
「照明を持たずに入れる鉱山なんて聞いたことが無い」
「一度掘った場所も何日かしたら元に戻っているんだ」
「馬車で鉱石を出せるんだ。それも戦馬なんて軍馬が引く馬車だ。楽だねぇ……」
まあこんな感じで鉱夫たちから喜ばれている。
「仕事が終わっても風呂が沸いてるんだ。疲れがとれるねぇ」
疲れを癒してもらうために共同風呂も作ってある。
半月の間にブロルは支店用の建物を探し出した。
俺はその建物を長屋の傍に置く。
支店長はカール。部下は無し。
島流しのようだが、まあ貴金属以外の取り扱いは月一回程度。
ブラックな仕事ではないと思うが頑張って欲しいものだ。
一応、カールにはリンミカ行きの転移の扉の使用権限を与えておいた。
後々雑貨などの取引もしたいからだ。
クラーラはというと、
冒険者登録してみるとINTがAと高めであった。
そこで、地の精霊の一体と契約した。アースと言う名だ。
「精霊様と契約できた」
と言って喜んでいた。
今のところ全部ではないが貴金属の取り出しをやってもらっている。
クレイ曰く、
「あの子、地と相性が良いから、そのうち慣れたら魔力が少なくてもこの位なら全部できそうね」
と言っていた。
まあ、俺が手伝わなくても鉱山が運営できるのが一番いい。
クラーラには頑張ってもらわないとな。
さて、この鉱山どのくらいの利益が出るのやら。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
第245部分 追い込みきれなかった(旧 丸め込まれてしまった)は大幅変更してあります。再読していただけると助かります。




