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大洞窟

誤字脱字の指摘、大変助かっております。

 どういうわけか洞窟の中というわりには、日の光と言わないまでも洞窟内部は明るかった。

 さて、何ででしょね? 

 俺はきょろきょろと周囲を見回す。

「不思議そうね」

 馬同士も俺と姫様とも体格差があるため、見上げるようにして言う姫様。

「ああ、洞窟内部なのに明るいからな」

「魔力を吸って発光する苔がついてるの。聞いた話では元々ここはダンジョンだったという名残りらしいわ」

 俺は姫様の背を追う形でついて行く。


「フンフフンー♪」

 セイリュウがご機嫌だ。念話で鼻歌が聞こえる。

 白馬の尻を追っかけているからか? 

 男が女の尻を見ながら鼻歌歌ってたらただのセクハラだろ? 

 ああ、馬の雄と雌だから関係ないのか……。

 白馬も嫌がっていないようだ。満更でもないのかね。


 姫様が白馬を俺の横につけると不意に

「あなたはなぜ私を助けたの?」

 と、聞いてきた。

「『魔物に襲われていたから』以外に何がある?」

 俺はそれしか理由がないから質問で返す。

「それは……私に取り入れば……」

「ほう、あんたに取り入るといいことがあるのか?」

「関で言っていたでしょ? 私は姫、取り入れば国の中枢に入り込めるかもしれない」

「当たり前でしょ? そんなことも考えなかったの?」という感じで姫様が俺に聞いてきた。

 手厳しい。

「あーあ、そういうことね。でも冗談でもやめてくれ。中枢に入り込んで何をする? 人の国引っ掻きまわせって?」

 オークレーンの件もあったので、本気で焦る俺を見て、

「驚いた。あなたは本当に権力には興味は無いのね」

 と逆に姫様は驚いていた。

 姫様には権力を求める者が近寄ってくるのかね? 

「権力に興味がないといかんの? そんなのより俺は自分の開拓した場所が発展するほうがいいんだ。一応もう一度言っておくけど、あんたが姫様だから助けたというわけではない。元々あんたが姫様だっていう事も知らんかったしね。あっでも、この国に入れてもらったのは感謝してる」

 俺を見て複雑な顔をしている姫様。

 姫様目当てのほうが良かったのか? 

「私の命を救ってもらったのです。入国ぐらいは問題ありません。他に何か手伝えることがあれば……」

「特に無いなぁ。まあ、何かあったら頼むよ」


「俺の方からも聞いていいか?」

「何でしょう?」

「何で襲われてた? あんたがわざわざ犬っころの興味を引くようなことはしないと思うんだが……」

「それは……恐れられているから……テイマーを使ってけしかけてきたのかもしれない」

 下を向く姫様。

「誰が誰を恐れているんだ」

「弟が私を……。あっ何で私はこんなこと言っているんだろ」

本人がわからんのに、俺がわかるはずもない。

「弟がねぇ……」

「ドワーフは三百歳ぐらいまで生きるの。ドワーフの王位継承は基本男系で行う。王と正室、側室の間には子供が私しかできなかった。だから、私を王位継承の一位に王は決めたの。三十年ほど経って新しく側室を得るとすぐに弟ができたわけ。すぐに正室の姫、側室の王子この二つの派閥ができた。私は国を分けたくなかったから王位の継承を放棄したのに、それを逆に弟は恐れたみたい。正確に言うと弟とその母親かしら。だから、色々とね……」

 ああ、毒殺されそうになったって話か……。

「面倒そうだなぁ。あんたの推薦受けたら狙われたりしない?」

「あなた強いんだから大丈夫でしょ? あの数のヘルハウンドの群れをあっという間に葬り去るんだから」

 クスッと笑う姫様。

 いや、迷惑だから。

 でもヘルハウンドって言う割には小さかったけどね。

 ん? って事はテイマーに見られてるかなぁ。

 俺、姫様の協力者って勘違いされないか? 

 こりゃ上手いこと使われそうだねぇ。

 ヤバくなったら逃げるか。

 と、勝手なことを考える俺。


 大洞窟と言うだけあって無闇に広い。

 広いうえに洞窟の天井を支えるように壁があり、まるでダンジョンのようになっていた。

 そういや姫様曰く元ダンジョンだったな。

 壁のお陰でリンミカへ直線で移動することはできなくなっている。

 迂回しながら近づかなければならず結構な距離になるのだ。

 俺にはマップがあるとはいえ、道を知る姫様の後ろを行くので楽だった。

 更に姫様の白馬はセイリュウにはかなわないとはいえ速いのだ。

 これなら夕方ぐらいには到着できそうかな? 


 しかし、魔物を表す黄色い光点が近づく。

「ふむ、魔物が出てきたね」

 セイリュウの速度なら離すことはできそうだが、白馬じゃ難しそうだ。

「えっ? 何でわかるの?」

「いろいろ事情があってね」

 レーダーのレンジを広げ居るであろうテイマーを探す。

 結構離れたところに赤い光点が見えた。

 俺も恨まれたかな? 

「さて、みんな悪いんだが魔物を倒すのを手伝ってもらえるかな? フウ、奥に居る奴を無力化してくれる?」

 スッと精霊が抜け魔物へ向かうと、そこには痩せた俺が現れた。

 ありゃ、全部行っちゃったよ……。

「誰?」

 怯えた目で俺を見る姫様。

「誰も何も目の前で見ただろ? 俺だよ。あっ名前言ってなかったな『マサヨシ』だ。問題なければ俺に名前を教えてくれないか?」

「クラーラ」

「なら、俺はクラーラって呼ぶから、クラーラはマサヨシって呼んでくれ。呼び捨てが嫌なら敬語を使うが?」

 そんなことを話している間にも、魔物の光点は消えていった。

「とりあえず、何者が俺らに魔物をけしかけたのか聞いてみようか」

「えっ?」

 固まる姫様。

「さっさと行くべな」

 俺がテイマーのほうへ進むと姫様は付いてきた。


 テイマーの下へ向かう間に、切られたり潰されたりしたヘルハウンドが転げている。

 やっぱりヘルハウンドっていう割にはうちのより小さいなぁ。

栄養が少ないのか? 

 魔物の光点が無くなると随時精霊が戻ってくる。そのせいで俺の体形が戻ると再び驚く姫様。

「精霊様……」

「ああ、そういやドワーフって地の精霊が見えるんだったな。こいつら精霊は俺の体に纏わりついて魔力を吸っている訳だ」

 しばらくすると、黒のローブを着たドワーフのオッサンが横たわっていた。

 テイマーって黒ローブ限定? 

「これが私たちを襲った者」

 クラーラが聞く。

「みたいだねぇ」


「おい、起きろ」

 俺はドワーフの頬を張る。

「うっ、うーん。えっ?」

 ドワーフのオッサンは目の前に俺が居るのに驚いていた。

「聞きたいのは一つだけなんだが、誰に依頼された?」

「言えるか! お前に俺の魔物を殺されたんだ」

「ふ~ん」

 そう言うと俺は治癒魔法をかけながらドワーフのオッサンを殴る。

「イタッ……えっ、傷ついてない」

「これで、無限に殴れるな。力を少しづつ強くしていくからな、覚悟しておけよ」

 ニッコリと笑う俺

 五回目ぐらいまではオッサンは我慢していた。

 六回目には涙目になるドワーフのオッサン。

 心が折れた? 

「まだ、我慢する?」

 と俺が聞くと、

「言います……言わせてください」

 土下座する勢いでドワーフのオッサンが頭を下げる。

 そしてその口から出てきた言葉は「ベリト公」。

「ベリト公?」

「やはり弟ですか……」

 残念そうに言うクラーラだった。


 とりあえず、ドワーフのオッサンを縛り、セイリュウの背に乗せ再びリンミカへ向かう。

 途中何度か関を通ることがあったが、姫様のお陰ですんなりと通ることができた。その時にドワーフのオッサンは関の番人に渡した。

「この者は私たちを襲ってきた者です、牢屋にでも繋いでおきなさい」

 クラーラがそう言うと、番人たちはドワーフのオッサンを引きずって行った。

 まあ、番人たちは縛られたドワーフのオッサンを見て不思議そうにしていたが……。


 巨大な門ににたどり着くと、そこには多くのドワーフと一部の他種族が列をなし順番を待っていた。

 おぉ、大渋滞。

「さて、リンミカへ着いたわよ」

 クラーラが振り向いて俺に言った。

「馬を降りて」

 俺はセイリュウから降り、クラーラの後ろをついていく。

 ずらりと並んだドワーフに恨めしそうな目で見られた。

 待ち時間長いんだろうなぁ。

 その横を優越感を持ってクラーラと一緒に向かうと、そこには別の入り口があった。

 クラーラが何かを見せると、その入り口が開く。

「王族と貴族用の入り口かなにかかな?」

「そう、特別な入り口、この印章を見せて入るの」

 クラーラは手に持った印章を見せながら街に入る。

 並んでいる者たちの刺さるような視線を尻目に俺はクラーラに続き続き町の中に入るのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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