オセーレからの呼び出し
誤字脱字の指摘、大変助かっております。
イングリッドから念話が届く。
「マサヨシさん、お父様が呼んでいるのですが今から来れますか?」
特に用事がない俺は
「ああ、問題ない。王の部屋で良いか?」
「はい、来ていただければ問題ありません。できれば『プリン』と『ケーキ』を持ってきてもらいたいのです」
「わかった。今から行く」
俺は扉を出し、直接王の部屋に行った。
「オッサン、お久しぶり」
「おお、マサヨシか久しいな」
「ところで、呼び出した理由は?」
「ああ、イングリッドがのう、マサヨシの作った菓子を王宮から売り出したいと言って聞かんのだ。それで、その菓子というものを見てみたくてな。実際に見て食べてみんと判断はつかんだろ?」
「そうです、食べてみればわかります。マサヨシさんのお菓子は今までになく美味しいのです!」
気合入ってるなイングリッド。
「女性の意見も聞いてほしいのでお母様も呼びました」
「ん? お母さま?」
「はい、マルグレットお母さまを呼んであります」
少し緊張している国王。
何がある?
しばらく待っていると、王妃という割には質素なドレスを着た女性が現れた。
「マサヨシ様、こちらがマルグレットお母さまです」
俺は、
「初めまして、イングリッドの婚約者となったマサヨシと言います。今後ともよろしくお願いします」
と言って頭を下げた。
すると、
「あなたね、ランヴァルドの事を『オッサン』と呼んでいるのは。確かにもう『オッサン』って呼ばれても仕方ないわね。ああ、私も堅苦しくなくていいから……そうね、『マリー』って呼んでもらえればいいわ」
と、笑いながらイングリッドの母親は言った。
「ではマリーさんと呼ばせてもらいますね」
「わかったわ。それでお願い」
「イングリッドが言ってたんだけど、美味しいお菓子があるのですか?」
そこからですか……。
「そうですね、今から出します」
俺は王の部屋にある応接テーブルの上に皿に載せたプリンを三つとスプーンを置いた。プリンはホイップクリームで飾り、その上にはゴッペを載せてある。
「まずは、『プリン』というお菓子になります」
国王とマリーさん、イングリッドはソファーに座るとプリンを食べ始めた。
「おぉ、美味いな。この黒い液の苦みがいい。儂は白いクリームが無い方が好みかもしれんな」
国王がしみじみ言う。
「ああ、甘い。プルプルの食感。甘みのあとの苦み。そしてこの白いクリームのフワフワ感。何このお菓子!」
マリーさんが驚く。
「でしょう! でもまだまだ他にもあるんです」
チラリと俺を見るイングリッド。
「メイドには紅茶の準備をさせています」
準備万端って事ですか。
「それでは、これをどうぞ」
俺はテーブルの上にゴッペのホイップクリームケーキを出した。
八分の一に切ったものをすでに皿に載せてある。
今度はフォークにした。
「白に赤、目を引くわね」
マリーさんが呟いた。
「これがホイップクリームのケーキになります」
説明が終わると丁度メイドたちが紅茶を持ってくる。
「紅茶に合うと思いますよ。まあ食べてみてください」
国王とマリーさん、なぜか嬉々としてイングリッドがケーキを食べ始めた。
「あーん、美味しい!二度目ですが、やはりこれは美味しいです」
「イングリッド、これは私たちにはダメなお菓子よ。この味は太る味。でもやめられない味」
「マリーさん、良く知ってますね。あまり食べ過ぎると、ふ・と・り・ます」
「やはり……」
嘆き悲しむマリーさん。
「マサヨシよ美味いな。ただ儂には甘すぎる。紅茶よりももっと苦みがあるものがあればいいのだが……」
コーヒーかなぁ……マメって有るのかなぁ、タンポポ製かなぁ。
「で、これを王宮とノルデン侯爵領から販売したいのです。マサヨシ様の孤児院で製作しこの二カ所のみで売る。レシピは公開しません。ですから希少性は高くなると思います」
イングリッドが自信を持ってプレゼンしていた。
「これが我が王宮とノルデン侯爵領でないと買えないと言うのなら、世の美食家はこぞって買うでしょうね。金額も天井知らずになるでしょう」
マリーさんが言う。
「マリーは売り出すことに賛成か?」
「夫上位の家なんてどのくらいでしょう?」
チラチラと国王のほうを見るマリーさん。
「マサヨシよ、女の方が強いよなぁ」
「同感です」
通じ合う国王と俺。
「私は強くないですよ!」
イングリッドがそう言ったが、
「イングリッドよ母になると女性は強くなるんだ……な、マリー」
「知りません」
マリーさんはそっぽを向いた。
結局王宮とノルデン侯爵領での販売は決まった。
三か月後らしい。
正確には王宮御用達の店を出す感じだ。
販売価格は何とプリン一個が銀貨五枚……五万円。
そして、ケーキに至っては銀貨十枚……十万円か。
買う奴いるのか?
王都に一軒、ノルデン侯爵領に一軒ってところだ。
最初は、それぞれの店にプリン五十個と八分の一で三十二個のケーキを置くようにするらしい。一軒一日銀貨三百七十枚也、三百七十万円ってどうなの?
余れば王宮で買い取り賓客に出す。数は増やさない、希少性が重要ということだ。
冷蔵装置を作っておかないとな……。まあ、うちのお菓子は腐り辛いってのが利点だが、三か月後は暑い、痛むのを遅らせる必要はある。
店ができるまでは、プリン、ケーキを十個程度毎日王宮へ納めることになった。
「マサヨシ様、決まってよかったですね」
嬉しそうに俺を見上げるイングリッド。
「ありがとう、イングリッドのお陰だな」
俺はイングリッドの頭を撫でる。
「まだ、昼前です。マサヨシさんに時間があるのなら前に言ってたデート権使っていいですか?」
「おう、いいぞ。どこ行く?」
「そうですね、王宮を出てお買い物なんてどうでしょう」
「買い物かぁ……ちょっと気になるから、この前食器を買いに行った通りを通ってみるか? その後ブラブラしよう」
「はい!」
二人で異世界版合羽橋へ向かった。
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